ジャーファルと使用人のお話
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無人の孤島に足を降ろされた。船の残骸はもう遠くて見えない。自分だけが助かったことに、少なからず罪悪感を抱いていた。
「………なんで、私を助けてくれたんですか?」
開口一番におなまーえが言ったのは自分を助けた理由だった。よく考えてみるとこの男はどこか異国じみた格好をしている。それに赤い目の奥が不気味で、怖かった。
「あ?さっきも言っただろ。用があるんだって。なんども言わせんな。」
「…………」
とても乱暴な口調。シンドリアでこれほど剥き出しの敵意と悪意を向けられたことがなかったため、おなまーえは萎縮してしまった。
「お前、シンドバットのとこのもんだろ?」
「……えぇ」
「よかったよかった。それならヒトダスケした甲斐がある。」
彼はゆらっとこちらに歩き、尻餅をついているおなまーえの顔にずいっと近づいた。赤い目が金色の目の奥を見据える。
「面倒だけどよ、実験ってやつだ。シンドバットを殺せれば御の字、そうでなくとも国を盛大に盛り上げるだけでもいい。」
「はっ…?私に王様を殺せと?」
「おおっとおっかねぇ顔すんなって。やるのはお前じゃないからよ。」
「んむっ……!?」
次の瞬間、肩を押されて草地に押し倒された。唇に感じるのは氷のような温度。舌を弄られ、唾液とともに小さな薬のようなものが送り込まれる。
「んっ……ぃゃっ……っ…」
吐き出したくても口が塞がれたままで。とうとうおなまーえはその小粒を飲み込んでしまった。冷たい唇が離れる。
「っ、けほっ、けほっ……」
おなまーえは咽せた喉を叩いた。
「何を…飲ませたの……」
「さぁな。詳しくは親父どもに聞けって。」
黒い髪の男は、満足げにペロリと自身の唇を舐めた。
「貴方……」
「そうそう。オレの名前はジュダルだ。覚えておけ、よっと」
言い切らないうちに彼はおなまーえの鳩尾に膝を入れた。
「カハッ……!」
おなまーえは前のめりに倒れる。
「シンドリアまでは届けてやるからよ。あとはせいぜい上手くやれよ。」
意識がおちる中、彼の瞳が鮮明に頭に焼き付いていた。
****
【side ジュダル】
「ったく、親父どももこんな面倒なこと自分でやれっての」
彼女に飲ませた薬は迷宮生物の卵。洗脳薬、又は精神汚染薬とでも言えばいいのだろうか、そんな効果がみられたものだ。適当なシンドリア国民を捕まえて、卵を飲ませて、本国に返す。あとは本人がどのようにしてシンドリアをかき回してくれるか。
「せいぜい楽しませてくれよ」
ジュダルはニヤッと笑った。
****
目が醒めるとおなまーえは空を飛んでいた。
「え!?えぇ!?!?」
「よぉ、やっと目ぇ覚ましたか」
「だ、誰!?」
混乱する彼女に男が話しかけてきた。彼は自分を俵担ぎしている。
「そうか、それも忘れちまうのか。」
「え?」
「いーや、なんでも。オレはジュダル。お前船の上で気絶してたんだぞ。運良くオレが通らなかったら死んでたな。」
さも愉快そうに男、ジュダルは笑った。どうやら船が難破して、おなまーえが海上で気絶して漂っていたところを彼が助けてくれたようだ。
「あ、ありがとうございます!」
未だ彼の顔も見えず、なんで空を飛べるのかすらもわからないが、この人はきっと悪い人ではないのだろう。おなまーえは風に掻き消されないように大声でお礼の言葉を叫んだ。
「バッ!耳元で叫ぶんじゃねぇ!」
「ひゃっ!ご、ごめんなさい!!」
危うく落とされそうになった。