第16夜 嵐の引っ越し
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――紆余曲折あり。
今回の騒動は、やはりコムイによるものだった。
コムイがかつて作ったコムビタン。
これにより、教団の人間の99%がゾンビと化してしまった。
残り1%はアレン、神田、ラビ、コムイのみ。
――ドォォン
だがそれも長くは保たない。
不幸にも今この教団には元帥も滞在している。
そう。
エクソシストよりもずっとずっとパワーのある、彼らが敵に回っているのだ。
「くくくくっ」
そして最も危険な人物であるソカロ元帥もまた、コムビタンによるゾンビ化に感染していた。
小さい神田に擦り寄るのはおなまーえ。
それに後ろからヤジを飛ばすのはティエドールである。
「さぁユーくん」
「先輩。私と一つになりましょう?」
「くっそおおおお!!」
そんなセリフ、ベットの中でも聞かなかった。
逃げ切れなかった悔しさと彼女に襲われる屈辱感を叫びながら、神田はおなまーえの牙の餌食になった。
「シャャアアアァアァ!」
「ヤダ!くんなっ!やめろパンダ!!」
ラビも。
――ガブッ
アレンも。
頼れるエクソシストは全て感染してしまった。
この後、残されたコムイと、後日応援に来てくれたバクのおかげで、自体は収束した。
****
「先輩!持ち上げすぎ!」
「オレ1人で運べるっつってんだろ」
「科学班の機械なんだから慎重に2人で運ぶべきですって!」
無事引越しも再開し、科学班の薬の切れた一同も荷造りの作業を開始する。
今2人が運んでいるのは一台数千万円する貴重な機械。
神田1人でも運べるが、できるなら2人でそっと運ぶ方が好ましいと科学班に頼まれたのである。
「お!おなまーえも元に戻ったさ?」
「ラビ…」
荷物を運び終えたラビとすれ違った。
神田同様、あんなに可愛かったラビは元の大きさに戻ってしまっていた。
「せーっかく大きくなってたのに残念さね!」
「ラービィ?」
今は手が塞がっているため、ラビに手出しができない。
それをわかっていて彼も軽口を叩いてくる。
「これで少しはお姉さんに近づいたさ?」
「余計なお世話!」
「あーあ、勿体ねぇな、ほんと」
「茶々入れに来ただけならさっさと去れ!」
ラビは彼女の言葉に従ってスタコラと退散していく。
「貧乳でも気にすることないさー!そこの朴念仁はどんなおなまーえでもゾッコンだろうからなー!」
「………」
「コラ、ラビ!!」
言っておくがここは教団の廊下。
おなまーえと神田以外にも多くのギャラリーがいる。
そんな公衆の面前でセクハラ紛いの発言をされて、おなまーえとて恥ずかしくないわけがなかった。
ギャラリーは気にしないそぶりをしていたが、妙に静かになり、耳だけはきっちりとこちらに傾けられていた。
神田も黙りこくってしまっている。
「せ、先輩、ほら行きましょ」
おなまーえは神田を急かす。
「……オレは」
「え?」
持っていた機械を神田がぐっと引っ張った。
おなまーえの手から荷物が離れる。
「わわっ」
バランスを崩したおなまーえは神田に寄りかかった。
そして耳元でやっと聞こえるくらいの小声で、ぼそりと呟いた。
「オレはこのくらいの大きさの方が収まりがいいと思ってる」
「っ!?なっ!!」
ヒョイっと機械を奪われる。
顔を真っ赤にしてフリーズしたおなまーえを放置して、神田はスタスタと歩き出した。
「……ハッ!」
おなまーえも慌ててそれを追いかける。
「先輩待ってくださーい!!」
《第16夜 終》
2019/04/12