第16夜 嵐の引っ越し
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――ふっ
突如電気が消えた。
深夜ということもあり、外の光も頼りにならない。
おなまーえは手探りで神田を探す。
「先輩?これですか?」
「お、役得さ〜」
「おい!それはバカウサギだ!!」
「あ、じゃあこっちですか」
「ニャー」
「それはじじいさー」
「お前わざとやってるだろ」
「な訳ないじゃないですか」
やっとチビ神田を見つけて、おなまーえは小さい頭をそっと撫でる。
「大丈夫、お姉さんがついてますからねー」
「……あとで覚えとけよ」
小さい神田に凄まれても、おなまーえはこれっぽっちも怖くなかった。
電気の復旧が始まらない。
一体なにかあったのだろうか。
『ヒヒヒヒヒ………』
不気味な笑い声が教団中に響き渡った。
「なんだ!?」
「声…?」
「お、おおおおばけ!?」
「まさか」
「コムイの悪ふざけだろ」
「待て!おかしいぞこの声どこからしているのかわからない。」
マリがただ1人、事態を重く捉えた。
「絶対室長だ!」
「室長ー!オレら忙しいんですけど!」
「仕事しろー!巻き毛ー!」
「しっ。声とは別に何か音がする!」
「え?」
「近づいてくるぞ」
一同はマリの言葉を聞き、視線を入口へと向ける。
――ガチャ
――ギィッ
重々しくドアが開いた。
「……婦長?」
「あ、ホントだ」
「アレンこの暗さでよく見えるね」
修行時代の賜物だとアレンが左手で頭を抑えた。
婦長はゆらゆらと覚束ない足取りでアレンに近づく。
――ガブッ
「はい?」
そして彼女はアレンの左腕に思い切り噛み付いた。
それはもう獣よろしく、牙を立てて。
「どうしたんですか婦長!?」
「え?怒ってんの?婦長怒ってんの?」
「モヤシ、テメェまだ退院してなかったのか」
「バッチリ退院しましたよ」
「ええ…」
――ガブッ
――ガブッ
婦長は自身を押さえつける科学班にも噛み付いていく。
最初にミランダが噛み付かれた。
「っ!」
「大丈夫?ミランダ」
「え、ええ…」
彼女は口元を押さえて何かを堪えるような仕草をする。
気分が悪いのだろうか。
暗がりでもあまり顔色が良くないことがわかる。
「ミランダ、ちょっと顔見せて」
おなまーえが彼女の顔をこちらに向けさせようとした瞬間。
――ガブリ
「えっ」
今度は彼女が噛み付かれた。
「なっ!?」
「オイ!!」
第三者視点だと、ミランダの唇がおなまーえの首に押し当てられている。
「んっ、ミランダっ…?」
「百合!?これ百合なのさ!?」
「チッ!」
神田は思わずおなまーえの肩をぐいっと引っ張った。
ミランダは簡単に離れた。
「お前大丈夫か?」
「っ、はっ…」
頭がグラグラする。
首元から広がる倦怠感と熱に、おなまーえは侵される。
「せん、ぱっ…」
「っ!」
今、おなまーえは科学班の薬で豊満な体つきになっている。
その彼女が息を荒げて自分に縋り付いてくる様を見て、どうして理性を保てようか。
「何をしてるんですか!バ神田!」
「はっ」
不本意ながら、アレンの言葉で神田は我に帰る。
おなまーえはゆらりと立ち上がり、神田を持ち上げた。
辺りを見渡せば、おなまーえ含めてその場にいた人の殆どが覚束ない足取りでこちらに向かってきた。
「なんか変じゃないスか?」
「な、なんだよオイ!」
「どうしたんだよお前ら!!」
婦長の入ってきたドアからも血走った目をした仲間がぞろぞろと入ってくる。
「せん…ぱ…」
「っ!こいつら正気じゃねぇぞ!」
神田はおなまーえの手を振りほどいた。
よろめいた彼女にほんの少しの罪悪感を抱く。
「チッ」
「「「ガァァアアア!!」」」
彼らはまるで映画に出てくるゾンビのように唸り声をあげて襲いかかる。
理性のない目で、牙をむき出しにするおなまーえに、神田は眉をひそめた。