第15夜 戦火の爪痕
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だがそれも次の瞬間、おどろおどろしい彼女の言葉で打ち消された。
「そこの
――ギクリ
チャオジー以外、各々思い当たる節がありギクリと背をビクつかせる。
ふりむくと、さもすればエクソシストより強いのではないかと思われる教団のサポーター、医務室の婦長が鬼のような形相でこちらを見ていた。
まだ正式に退院できていない一同は凍りつく。
婦長はツカツカと神田に歩み寄り、彼の耳を引っ張った。
「ッタッ!!何をする!?」
「……おなまーえが目を覚ましたわよ」
その言葉を聞いた途端、神田の顔つきが変わった。
「なに!?」
待ちに待った知らせに思わず声が上ずる。
「それは本当か!」
マリも婦長に歩み寄った。
「ええ。もう検査も済んで、今は室長室にいるわよ。」
「チッ」
神田は舌打ちをすると、婦長の手を振りほどいて風の如く走り出した。
「ちょっと待ちなさい!」
「許してやってくれさ、婦長さん。ユウのやつずっとおなまーえのこと気にしてたから。」
もうすでに背中の見えなくなった廊下を見て、ラビは腕を組んで呟いた。
****
ティエドールから話を聞いたあと、おなまーえは簡単な検査を行い、無事退院することができた。
まず向かうのはコムイの元。
より詳しく、より記述的に整理された話を聞くためだった。
執務室にはクロスを除く元帥が集められていた。
「以上が今回の襲撃の概要だ」
「……うちの姉がご迷惑を」
ルル=ベルが引き起こした今回の事件、その被害は未曾有のもので、教団移転も考えられるとのことだった。
コムイは眉間のシワを一層濃くする。
「やはりあのノアは君の姉なんだね?」
「はい。もうずっと生き別れてましたけど。」
「そうか…。実はね、その件について、後ほどルベリエ長官からおなまーえちゃんに呼び出しがかかっている」
中央庁からの呼び出し。
とても重々しい響きだ。
(ルベリエ……)
教団の長い歴史のなかでルベリエ家は一定の地位を築いてきた。
彼らは目的のためなら、どんな非道な命令も行う。
「君は――」
「一体なんの話でしょうね!」
おなまーえはコムイの言葉を遮って、明るい声で答えた。
突然声を張ったおなまーえに、興味なさげに聞いていたクラウドとソカロも顔を上げる。
「辛党vs甘党の討論会ですかね!」
「おなまーえちゃん」
「……大丈夫です」
詳しく話を聞くまでもなく、嫌な予感がした。
ただ、コムイの口からそんな説明をさせたくなかった。
「何を言われても、私は事実を述べるまでです」
心配をかけさせないようににっこりと笑う。
「…わかった。面会の詳細は後ほど連絡する。」
コムイもそれ以上のことは口にしなかった。
「もうすぐ神田くんたちもここに来る。みんなにまとめて話したいこともあるから、このまま待っていてくれ。」
先の説明で、リナリーのイノセンスについては後ほど細かく話すと言っていた。
調査がある程度済み、おなまーえが目覚めたことでいよいよ情報公開ということなのだろう。
彼女は頷いてドアに一番近い椅子に腰をかけた。
程なくしてドカドカと廊下から慌ただしい足音が聞こえてきた。
聞き慣れた音だが、どこか焦っているようだ。
早く安心させてあげなければとおなまーえはひとつ息を吐いた。
――バタン
勢いよく開いた扉に全員が注目する。
扉の目の前に座っていたおなまーえは顔を少しあげて嬉しそうに笑った。
「せーんぱい」
「……バカヤロウ」
神田はほんの一瞬だけ顔を歪めて悪態をついた。
2人の会話はそれだけで十分だった。
神田は何事もなかったかのように、おなまーえの座っているソファの腕置きに腰掛けた。
しっとりと汗をかいていて、つい先程まで鍛錬をしていたであろう様子が見て取れる。
その鍛錬を途中で投げ出してきたことも、先ほど勢いよく開いたドアから察することができた。