第15夜 戦火の爪痕
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第15夜 戦火の爪痕
目が覚めたら全てが終わってたなんてご都合主義。
元帥が助太刀に来たことも、卵が破壊されたことも、レベル4が出現したことも、リナリーがイノセンスと再びシンクロしたことも、おなまーえは知らないまま深い眠りについていた。
ぼんやりと浮上する意識の中で柔らかい声が聞こえる。
「起きたかい」
「…元帥」
清潔な匂い、適度な湿気、しずかな室内。
暖かい布団に、ついもう一度眠ってしまいそうになる。
瞼を開けないまま、毛布を手繰り寄せて微睡む。
「アクマの能力に当てられたんだね」
「………」
仕方ないと頭を数回撫でられた。
大きくて、まるでお父さんのような手。
うまく演奏できると、よく父がこうして撫でてくれたっけと思い出す。
そこでようやく彼女の意識がはっきりとしてきた。
重い体をゆっくりと起こす。
ゆったりとした動作で途中何度か寝てしまいそうになる。
寝違えたのだろうか、首から右肩にかけてがとても痛い。
「やぁ、おはよう。おなまーえ。」
「元帥…」
ぼーっとする頭で頭を見回して情報を処理する。
「……今どのくらい経ちましたか」
三日三晩眠っていたおなまーえは目をこすりながら、まずティエドールに状況説明を求めた。
****
ルル=ベルによる本部襲撃の後すぐ、中央庁と教団の幹部が召集され、今後の体制について連日評議が行われた。
進化したアクマ、姿を変えられるノアの存在、そして破壊された本部の復旧についてなど、いくら話しても議題が尽きることはなかった。
科学班は約半数の研究員を失い、その他の班も含め被害は大きく、本部はしばらく機能を停止したように静かだった。
――ガキーン
教団の隅にある、修練場を除いて。
「お、いたいた」
ジョニーは修練場の中心にいる人物をじっと見つめた。
白髪の少年に竹刀を突きつける男。
少年は息切れをし、男の額にも汗が滲み出ていた。
「はぁ、も…はっ、動けない」
「口程にもないな、モヤシ」
世にも珍しいことに、神田とアレンが手合わせをしているのだ。
「流石です神田。やっぱり剣だと敵いませんね。」
「当たり前だ。ムダな動きが多すぎんだよテメーは。さぁ丸刈りになってもらおうか。」
「…やだなぁ。まだ参ったとは言ってないで、しょっ!」
アレンは折れた竹刀を捨てて、神田に回し蹴りを食らわせた。
「ッテメ!」
「うりゃあッ!」
勝利したと慢心していた神田は反応に遅れる。
「ああっ!神田先輩!」
外野のチャオジーは思わず声を上げた。
ジョニーは車椅子を押してギャラリーのところへと向かう。
音に気付いたラビが手を挙げて挨拶をした。
「おー、ジョニーもう動いて大丈夫なのか?」
「うん。珍しいね、あの2人が組んでるなんて。」
「いやー、初めはただの剣術稽古だったんだけどさ、あの2人ミョーにイライラしてて」
アレンに飛ばされた神田は起き上がるや否や、彼に掴みかかる。
「テメェ!へばったフリしてやがったな!」
「騙し討ちも立派な戦法です」
「もう死ね!この似非紳士野郎」
「師匠が似非者なもので」
チャオジーはドキドキしながら2人の様子を見ているが、マリとラビとブックマンは正直飽きてきた頃だ。
「気づいたらもうかれこれ1時間こんな感じ。負けたら丸刈りらしいさ。」
「もうただの殴り合いになってるよ」
神田も竹刀を捨ててアレンに殴りかかる。
これでは最早鍛錬とは言えない。
ただの喧嘩である。
2人の気持ちはギャラリーにも痛いほどにわかっていた。
アレンは誰よりも他人思いなため、この襲撃がよほど堪えたのだろう。
神田は未だに目覚めないおなまーえを気にかけていた。
彼が現場に駆けつけて横たわるおなまーえを見たときの顔と言ったら、マリでも見たことのない顔をしていた。
すぐさま彼女をティエドールに引き渡し、たとえ目が覚めてもおなまーえは出撃させるなと元帥にキツく言っていた。
結果的に彼女は目を覚まさず、レベル4とも対峙していないが、襲撃が落ち着いて3日経った今も起床の報告は来ていないので、それが神田をイラつかせている原因なのだろう。
ラビはくるりと振り向いてジョニーに話しかけた。
「んで、ジョニーは何しに来たんさ?」
「ん?団服の採寸しに来たの。ラビと神田とアレンの。」
「仕事してんのかよ!?」
「10代はすぐサイズ変わるからさー」
「仕事中毒だねぇ」
「おーい!アレーン!神田ー!」
容赦なく殴り合っているアレンと神田に、いい加減マリが注意をした。
頭と頬を腫らした2人はジョニーの元へよろよろと歩み寄る。
「
「あはははっ!」
「チッ、面倒くせェな」
「お疲れ様っス、神田先輩」
「やり過ぎだ、お前ら」
まともに喋れないほどボロボロになったアレンに、ラビは爆笑する。
チャオジーは神田にタオルを差し出していた。
本来ならばおなまーえの役目である。
もし彼女がこの場にいたらそれはそれは酷く怒るのだろう。
アレンは本来悩み事を表に出さないタイプだ。
その彼がここまでして荒れているというのは、相当堪えているのだろう。
「…………」
ジョニーは様々な思いを込めて、アレンの頭をよしよしと撫でた。
ほんわりとした空気が2人の間に流れる。