第12夜 箱舟
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目が覚め、状況確認を終えたラビはまずアレンを誘い出すことにした。
すぅっと息を吸う。
「ごはんですよーーッッ!!」
彼の容赦ない大声が響く。
「ラ、ラビさん……そんな犬じゃねーんスから…」
「いーからみてろよチャオジー。餓えたアレンなら100%スッ飛んでくるから!ごはんだぞーー!アレン!!ごーはーんんーーー!!」
反応なし。
だがラビはまだ続ける。
「肉じゃがステーキサバ味噌キムチ!カレーにハヤシにレバニラ炒め!!みたらしみたらしみたらしみたらし!アレーーン!」
相変わらず返答はない。
「あ!」
「どうかされましたか?」
ここでようやく、ラビは何か思いついたように声をあげた。
「待てよ。俺らが助かってんならもしかして、ユウとおなまーえとクロちゃんも……」
どんな原理で箱舟が元に戻ったかはわからないが、少なくとも自分たちがこうして地に足をつけていられるのだから、これまで置いてきた面々もおそらく復活しているはず。
ラビはもう一度大きく息を吸った。
「おなまーえの貧乳ー!!ユウのパッツン!!」
「「上等じゃねェか、馬鹿ウサギ」」
バタンとドアが開き、額に怒りマークをつけたおなまーえと神田が入ってきた。
神田の肩にはクロウリーも担がれている。
長い階段を登ってきたおなまーえと神田は、少し息切れしていた。
「おお!おなまーえ!ユウ!」
「チッ」
「近寄らないで、歩く下半身!」
「おなまーえ、それじゃあ普通さ〜」
ハイネックのタンクトップにショートパンツのおなまーえは、右手で目をまくって、べっと舌を出して威嚇した。
――ズキッ
(あれ…?)
その時に感じる違和感。
おなまーえは思わず右手を凝視した。
握ったり開いたりして感覚を確かめる。
問題なく動かせはするが、どうしても力が入らなかった。
そんなおなまーえの様子を、神田は横目で見ていた。
「……それよりこれはどうなっている」
「オレにもサッパリさ〜」
ラビもどうやらこの状況を把握しきれていないようだ。
となると、やはりここにいないアレンとリナリーの行方が気になる。
「コラー!!出て来いっつの、モヤシー!!」
『誰がモヤシですか!バカラビーーッ!』
すると突如、どこからともなくアレンの叫び声が聞こえた。
一同はギョッとして辺りを見回す。
「うおっ、アレン!?」
「どこ…!?」
「チッ、モヤシの声が空から…」
『アレンです!バ神田!!』
神田の言う通り、本当に空からアレンの声が聞こえる。
どんな原理になっているのか全くわからないが、彼が無事でなによりだ。
「アレン、リナリーは?」
『無事です!今安心して泣いちゃってますよ。みんなが無事でよかったって……』
「…そっか」
リナリーらしいと笑った。
誰よりも仲間を大事にしてる彼女に、たくさん心配をかけさせてしまった。
「……エリ…ア…デ……」
「あ、クロちゃんしゃべった!!」
誰1人欠けることなく、この箱舟を乗り切れた。
まだ分からないことがたくさんあるが、今は全員の無事をただただ祝った。
****
「おなまーえ寒くないさ?」
「大丈夫。私タンクトップだし、リナリーの方が寒そうだったし。」
今ラビの上着はリナリーが羽織っている。
おなまーえと神田とアレンの上着は各々大破してしまった。
「あれ、おなまーえリボンは?」
いつも頭についていた赤いリボンがないことに、ラビはすぐ気づいた。
「ああ、燃えちゃった」
「燃えたって…よく無傷でこれたさ」
「ね。悪運強いのかな、私。」
アレン、ラビ、神田、おなまーえ、チャオジーの5人は箱舟内を探索していた。
ここはあくまでノアの過ごしていた領域。
まだどこかに敵が隠れているかもしれないのだ。
「しっかし静かだなぁ。あのピンチは何だったんさ。」
とはいえ、危険など全く感じないほどの穏やかな風。
のどかな天気。
見回りとは名ばかりの散歩をしていた。
「箱舟って広いね。本当にアレンが箱舟元に戻したの?」
「ええまぁ。釈然としないところはありますが。」
アレンがこの箱舟を操作したというのが、にわかには信じがたかった。
なぜアレンが箱舟を操作できたのか。
それにクロス元帥はなぜピアノの在処を知っていたのか。
疑問は尽きない。
「大体見て回ったぜ。ノア共はどこにも残っていないようだな。」
神田の言葉におなまーえも我に帰った。
「神田」
アレンが神田の名を呼んだ。
アレンの視線は彼の左胸に注目されている。
「ずっと気になってたんですけど、その胸の模様どうしたんです?そんな大きいタトゥー入れてましたっけ?」
「………」
おなまーえは顔を俯かせた。
これはセカンドエクソシスト特有のもの。
大きくなった模様は命をたくさん使った証。
神田はノアとの戦いで何度も死んだのだ。
「あの…」
話題を変えようとおなまーえが声を出した瞬間、神田はそっけない顔でボソッと呟いた。
「……別に」
「会話になってませんね、神田。はいっ、言葉のキャッチボール!」
「ウゼェ」
バチバチと2人の間に火の粉が上がる。
神田が隠し通すなら、余計なことは言わなくていいだろう。
おなまーえの嘘をラビは見抜いたが、特に詮索することもしなかった。
「それより、外に出られねェのかよ、モヤシ!」
「アレンですってばこのヤロウ」
「喧嘩すんなって、もー」
刺青の話題はそれっきりだった。
おなまーえはほっと胸をなでおろす。