第12夜 箱舟
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「…終わった?」
「うん、ありがとう。おまたせルル姉。」
ずっと待っていてくれた姉に感謝の言葉を述べる。
久しぶりの姉妹水入らずの時間だ。
「"あの日"のこと、ずっとずっと聞きたかった。あの火事は全部ルル姉の仕業ってことでいいのかな。」
「……ええ」
これで全ての辻褄が合った。
彼女がおなまーえを街に捨てていった日、彼女はそれと同時にノアとして生きることを決めたのだ。
だから父と母を殺し、自分の生まれ育った街を燃やした。
「復讐でもする?」
「…そこまで私も落ちぶれちゃいない。けどルル姉がノアだっていうなら、エクソシストとして私は……ルル=ベル!あなたを制裁する!」
「…そう」
おなまーえは
ルル=ベルも肌の色を変える。
前髪に隠れてはいるが、聖痕がはっきり確認できた。
「珍妙にお縄につきなさい!ルル=ベル!」
「…それを言うなら神妙ね」
キュオンと矢を放った。
意外や意外にも、矢はルル=ベルの胸に命中した。
「あれ?」
「………」
てっきり避けられるかと思っていたため、思わず拍子抜けする。
風穴が空き、反対側の景色が見える。
だが彼女の胸はふるりと揺れると、すぐさまその穴を修復した。
人の体ではあり得ない現象だ。
「物理攻撃は通じない感じ?」
「さぁ?」
負った傷を修復しているのとは様子が違った。
手応えもなく、まるで水に矢を通したような虚無感。
続いて2、3発かましてみたが、同様に避けられてしまった。
「ルル姉、戦う気ある?」
矢を透過させるだけで一切動かないルル=ベルに問いかけた。
「…おなまーえと敵対するつもりはない」
青色のリボンが揺れた。
「でもそのイノセンスは別。主にとって障害となるから破壊する。」
「できるものならね!」
ルル=ベルの手が鎌のように鋭くなった。
かと思えば、彼女はぽちゃんとは池に飛び込む。
この部屋は池を中心に小川が流れている。
おなまーえの脇にもちょろちょろと綺麗な水が流れていた。
「…………」
ルル=ベルの気配を探る。
次の瞬間、バサァッと右側の川から、スライムのような身体の彼女が襲いかかってきた。
ルル=ベルはおなまーえの右腕のイノセンスを狙った。
手首ごと切断しようという魂胆なのだろう。
回避ができないと判断した彼女は、咄嗟に身体をひねって手首を庇った。
「っ――」
鎌が右肩に刺さった。
「ぐあっ!」
痛みに顔を歪めるも、軸足で踏ん張り回し蹴りをする。
パシャンと水音がし、足は空振りした。
ルル=ベルは再び川の中に飛び込んでいく。
(右肩をやられたのは判断ミスだ……)
あたりを警戒しつつ軽く止血をする。
右手の指先にあまり力が入らない。
弓を引っ張ろうとするとズキっとした痛みが走る。
だが休んだはいられない。
川から出てくると分かればまだ対応できる。
次の攻撃からは難なく躱すことができた。
ルル=ベルの攻撃を紙一重で避ける。
これも神田と日々鍛錬してきた成果である。
(でもいつまでも避けてはいられないよね)
よりによって小川の多いこのステージは、ルル=ベルにとって非常に有利に働いていた。
おなまーえはただ翻弄されている。
「……船の崩壊まで時間がない。早くそのイノセンスを渡しなさい。」
「嫌だ。これは父さんと母さんの形見だ。」
特別な日にしか触らせてもらえなかったハープ。
今更ながらノアの血を引いていた姉が、あのハープを好きでないと言っていた理由がよくわかる。
(そろそろ仕掛けなきゃ)
仮にルル=ベルの体が流体のようなものだとしたら、あの鎌は氷のようなものなのだろうか。
しかし刺された肩は冷たさを感じてはいない。
焼けるような痛みだけだ。
まだ疑念は尽きないが、おなまーえは少し考えた末、ルル=ベルの正体を水と結論づけた。
変幻自在で、何事にもはまらない自由な水。
水であれば熱せば蒸発する。
だがあたりを見渡しても火の元になりそうなものは何一つなかった。
せいぜいが石を打って枯葉に火をつける程度。
だが彼女がそんな時間を与えてくれるわけがない。
「うわっ!」
「何考えてるのか知らないけど、無駄よ」
「どうだろうね…」
考え事をしていたため、攻撃が脇腹をかすった。
ちょっとやそっとでは傷つかない教団服にスッパリと切れ目が入る。
(鋭っ…!)
斬れ味だけなら六幻と同格だろう。
だが触れたことで確信を得た。
あの鎌のような手は金属でできている。