第12夜 箱舟
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アレンやラビはまだ状況を把握できていなかった。
「え、本当に姉妹なんさ?」
「うん」
「確かに顔立ちは少し似ているであるが……」
「…何よ」
クロウリーとラビからの視線を感じ、おなまーえは2人を見つめ返した。
「いや、その、"似てねぇな"って…」
「はい?」
顔は似ていると言ったのに、"似ていない"とはどういうことだろうか。
歯切れの悪いラビに、彼女はじっと姉を観察して自身との違いを確認した。
「あ」
姉と自分の決定的に異なる点は一つ。
彼女は顔を赤くした。
「っ〜〜!!どこ見てんのよバカーっ!!」
あちらは豊満で、こちらは標準以下。
なんの話かは言わなくてもわかるだろう。
ポヨンと揺れるたわわなそれが似ていないと、ラビは言ったのだ。
「ラビ!!」
「失礼ですよ!!」
「うぇ!」
「……見損なった。私から離れてください、ラビさん。」
「ご、ごめんさ〜!てかなんでオレばっかり!!」
そういえば昔から姉はグラマラスな体型だった。
自分もいつか姉のような体型になれると信じていた。
だがあの頃の姉と同じくらいの歳にはなったが、おなまーえの体は相変わらずスレンダーである。
「はぁー、もう知らない!みんなは先に行ってて。」
「おなまーえも1人で残るって言うの!?」
リナリーが抗議した。
神田と同じように、彼女もここに1人残ると言い出したからである。
「ラビのせいですよ!」
「オレぇ!?」
「ほら謝って」
「わ、悪かったって…機嫌損ねんなよ、な?」
「…別に機嫌損ねたから残るわけじゃない」
「じゃあみんなで倒してから行きましょう!」
「そうね、それがいいわ!」
「……チッ」
「「「……ち?」」」
神田よろしく、おなまーえは大きく舌打ちをした。
普段からは想像つかない変わりように、一同おののく。
「いいからさっさと行って。兄弟喧嘩に首突っ込む気?それとも
イノセンスを構えながら言えば、全員ザザッと松の木の後ろに逃げ込んだ。
心なしか彼女の背後に神田と同じオーラが見える。
「おなまーえが神田化したさぁ!!」
「こんなに怖い人だったであるか?」
「に、逃げろ〜!」
ポロンッと弦を弾く。
いつでも矢は装填できる状態だ。
「でも、おなまーえ1人置いてはいけません!」
「そうよ!神田だっていつ来るかわからないんだし」
「…だから残るの」
「は?」
彼女は物憂げな顔で入ってきたドアを見つめた。
「私がここに残れば、あそこを潜ってきた先輩が最初に見るのは私の顔になる。……好きな人には早く会いたいじゃない?」
「あ…」
さっきの告白だって、受け入れられるとは到底思っていない。
神田の心にいるのはいつだって"あの人"。
でも、苦し紛れの約束で彼が生きてくれるなら、いくらだって待とう。
「…わかったである」
シンとした空気の中、唯一クロウリーだけが頷いてくれた。
「えぇ!?クロちゃんおなまーえのことを置いてくさ!?」
「他人の痴情に口を挟むものではない。私たちは先を行こう。」
「ありがとう」
おなまーえは彼に視線を送って鍵を投げた。
パシッと小気味良い音でクロウリーはそれを受け取る。
「そんな……おなまーえはどっちかっていうとサポートタイプなのに」
「大丈夫だよ、リナリー」
彼女はにっこりと答えた。
「私、エクソシスト歴なら、そこの発情ウサギやヘタレモヤシよりずっと長いから」
「だぁれがヘタレモヤシですか!!」
「発情ウサギって、酷いさぁ!!」
おなまーえのエクソシスト歴は4年。
ラビは2年で、アレンに関しては数ヶ月程度である。
その分修羅場も多く経験しているし、場数はこなしている。
「それにほら、これは教団の任務じゃなくて、何度も言うけど兄弟喧嘩だから。他人の家庭の事情に踏み込んじゃダメだよ。」
アレンとリナリーは押し黙った。
確かにこれ以上ここで無駄に時間を過ごすわけにはいかない。
この先にもノアは待ち受けているかもしれない。
ならば先に行って道を作っておいた方がおなまーえのためになる。
「…わかりました」
「アレンくん!」
「その代わり、必ず神田とてっぺんまで来てください」
「うん」
「ちょ、ちょっと!」
未だ納得いっていないリナリーだけが引きずられ、一行は茶室の扉から次の空間へ移動した。
彼らの姿が見えなくなるまでおなまーえはずっと手を振っていた。