第12夜 箱舟
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(…………)
彼はここに残るつもりだ。
ならば"今"言わなければならない。
これを逃すと機はなくなる。
おなまーえは大きく深呼吸した。
「……先輩、好きです」
皆の動きが止まった。
「……え?」
「なっ」
「は?」
「お?」
おなまーえの突然の告白に一同はぽかんと口を開ける。
神田でさえも鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしている。
彼女はぎゅっと拳を握って、構わず続けた。
「あのときはフラれちゃいましたけど。やっぱり私、先輩のこと好きです」
「「「は???」」」
情報量の多さに周りはついていけない。
「ちょ、ちょちょちょーっと待つさ!!」
やっとのことでラビが抗議した。
「あのときってことは、おなまーえ前もユウに告ったさ!?」
「てかフラれたって!?」
「聞いてないわよ神田!!」
もはや今日一番の衝撃と言っても過言ではない。
おなまーえと神田の仲の良さは前々から教団で話題になっていた。
とはいえ、先ほどまで2人はいつも通りに会話していたのだ。
それがまさか、おなまーえが告白して玉砕した後だとは誰も思わなかった。
リナリー以外の全員の心は一つ。
(((よりによって何故神田なんだ!!)))
当の本人たちはピクリとも動かなかった。
おなまーえは顔を俯かせ、神田はそんな彼女をじっと見つめている。
「…オレは――」
「待って!」
神田が重い口を開こうとすると、おなまーえがそれを制止した。
「今は、答えないでください」
「は?」
勝手に告白しておいて、あまつさえ今は返事をするなという彼女の発言に、一同は再びぽかんと口を開ける。
彼女は顔を上げてふっと笑った。
「後でかならず追いついて、その時にお返事聞かせてください。それまでは言わないで、先輩。」
「………」
「約束」
「……わかったから、さっさと行け」
「…はい!」
おなまーえは赤いリボンをヒラリと翻して、走り出した。
その後ろ姿を見届けると、彼は六幻を再び抜いて構える。
随分と色々なことがあったため、ノアは退屈そうにこちらを見ていた。
「甘ぇ…」
「待たせたな」
「長かったな。やはり己の相手はお前か。」
「オレでは不服か?」
「いいや。1人になるのを待ってたのさ。あいつからがごちゃごちゃうるさくて、あのまま終わらなかったらどうしようかと思ったぜ。」
ノアはニィと口角を上げた。
「なんでおなまーえあそこで告白しようと思ったさ!?」
「だって、今言わなきゃもうチャンスないかなって」
「あれはチャンスじゃなくて、死亡フラグって言うんさ!!」
「え、私ミスった?」
「こら、ラビ!滅多なこと言わないの!」
神田を置いていった一行は、広い砂地を進んでいた。
レロ曰く、鍵を差し込めば、扉ならなんでも次の空間に繋げられるらしい。
しかも一度繋がった扉はそのまま保持される。
つまり神田が後から追いかけてくることも可能である。
出口に向かうために、扉を見つけて鍵を指していくことが当面の目標となった。
「エクソシスト様ー!あそこに建物があります!」
付近を捜索してくれていたサポーターのチャオジーが、奥に向かって指をさした。
建物があると言うこと扉もおそらくあるだろう。
おなまーえはアレンから鍵を受け取り扉に差し込む。
扉の奥から眩い光が漏れた。
この奥に、次の部屋がある。
――ゴォン
後方で大きな音が鳴った。
振り向くとちょうど神田のいるところに雷が落ちている。
「あの光は…」
「始まったさ」
「………」
おなまーえにはただ神田を信じて先に進むことしかできない。
歯がゆい思いを抱きながらも、彼女は何も言わなかった。
「行くである」
愛する者に対しての複雑な感情はクロウリーが一番よくわかっている。
これ以上彼女が後ろ髪を引かれないように、彼はおなまーえをそっと扉の奥へと押しやった。
アレンは最後まで戦闘の光を見つめていた。
「神田、必ず来てください。おなまーえ泣かせたらぶっ飛ばしますよ。」
全員が扉をくぐると扉は重い音を立てて閉じられた。