第12夜 箱舟
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扉の中は別世界であった。
砂漠が広がり、ところどころに大きな岩が転がっている。
天井には紺色の空と、白い月が無数に描かれていた。
まるで絵に描いたような虹までかかっている。
「なんだ、此処?」
「方舟の外…じゃねえな」
「風がないから室内だよ」
誰もいないのだろうか。
「……」
神田がある一点をじっと見つめた。
おなまーえもそちらの方向の気配を探る。
すると次の瞬間、岩が激しく弾け飛んだ。
全員がそちらに注目する。
現れたのは江戸の時、おなまーえとラビに襲いかかった屈強な大男。
甘いものは好きかと問いかけてきたノアだ。
「お前ら、先行ってろ」
「え?」
「ユウ…?」
神田の言葉に一同は困惑する。
おなまーえもぽかんと口を開けた。
「アレはうちの元帥を狙っていて、何度か会ってる」
「え、うそ…?」
「神田一人置いてなんか行けないよ!」
もちろんおなまーえはディエドール部隊に合流して以降、片時も元帥から離れたことがない。
だが彼女はこのノアの気配には身に覚えがなかった。
「勘違いするな。別にお前らのためじゃない。うちの元帥を狙ってる奴と言っただろう。」
神田は六幻を抜いて発動させた。
「仕事で斬るだけだ」
ノアは動かずにブツブツと何かを呟いている。
「……許すな…許すな……エクソシストを許すな!!」
理性で会話のできるような相手ではない。
このノアは明らかに狂っている。
「待って先輩!じゃあ私も――」
「お前はこいつらと行け」
「でも!」
「お前じゃあいつの怪力には敵わない」
「なら援護だけでも!」
「…同じこと二度も言わせるな」
「っ…」
足手纏い。
その四文字がおなまーえの頭にリフレインした。
ローマの時に言われた言葉。
なんとか反論しようとしておなまーえが口を開いた瞬間。
――ゴゴゴゴゴッ
地面が大きく揺れた。
「っ、地震!?」
「いや、ただの地震じゃない、やっぱりここは箱舟の中なんさ!」
『そうレロ。ここはまだ新しい方舟に引っ越すためのダウンロードが完了していないだけレロ〜!つまりダウンロードされ次第消滅するレロ!』
つまりそれは、いつこの部屋がいつ消えるかわからないということ。
早々に戦いを終わらせなければならない。
「はい!僕も残ります神田!」
「アレン!」
「アレンくん!?」
「…………」
「みんなは隙を見て、次の扉を探して進んでください。僕らも戦いが終わったらすぐあとから追いかけますから。」
たしかにアレンの方がおなまーえよりは遥かに強いだろう。
だが――おなまーえは神田の顔色を伺った。
「……お前と2人なんて冗談じゃねぇ」
アレンはむかっとして神田に食ってかかろうとした。
「神…」
――ジャキッ
神田は六幻をアレンに突きつけて殺気を放った。
「オレがやるっつってんだよ」
一同は震え上がる。
六幻の切っ先がアレンの白髪を撫でた。
「とっとと失せろ。それともお前らから斬ってやろうか?」
「ほ、本気?」
「え、ちょ、鬼が出てるんですけど」
「か、神田さん…」
『こいつ、仲間を脅してるレロ!』
神田の背後にもはや般若の面が見える。
彼の隣にいたおなまーえも思わず震えた。
「六幻、抜刀」
イノセンスの発動に、ノアが構える。
「界蟲一幻!!」
「どわーーーっ!!」
だが彼の攻撃はノアではなく、アレンたちに向かっていった。
彼の界蟲が容赦なく味方を襲う。
「先輩…(汗)」
「ちょっ?やめっ」
「神田!!」
「痛ーっ!」
「死ぬ、死ぬよ!?」
「ぎゃああぁあぁっ!!」
突然の茶番に、理性がないはずのこのノアも呆然としている。
アレンたちは蟲に追われたが、なんとか無事のようである。
「神田のバカー!!」
「ユウのバカー!!」
アレンとラビの叫びはごもっとも。
「殺す気かアホー!」
「人でなしっス!」
「鬼畜め!!」
「み、みんな、神田は…」
「もーしらねっ!ユウなんて置いてってやるさー!!」
リナリーのフォロー虚しく、各々好き勝手抗議する。
おなまーえもオロオロとしている。
「…はぁ」
「なにため息ついてるんですか!!」
「オレらがつきてーっつーの!」
神田のあまりの傍若無人さに、男性陣はプンスカと怒って背を向けてしまった。
「ったく、やってらんねーさ!」
「怖いっスあの人」
「なんて自分勝手なんだ!」
「心配して損したのは初めてである!」
彼らの背と神田の横顔を、おなまーえは交互に見た。
どうあっても神田は1人でここに残るようだ。