第12夜 箱舟
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――ドンッ!!
この辺りもヒビが入ってはいたが、とうとう崩壊が始まったようだ。
激しい揺れが起こる。
「やばい、走れ!崩壊の少ないところに!」
おなまーえと神田が先頭に立って、まだ崩壊の進んでいない中心部へと走った。
ところが運悪くリナリーは足を挫いてしまう。
「キャアァアア!!」
「「リナリー!!」」
瓦礫とともにリナリーが落ちていく。
次の瞬間、後方を走っていたアレンが飛び降りて、リナリーを抱えた。
瓦礫を足場にこちらまで登ってくる。
一同はほっと胸をなでおろした。
まだひび割れも起きていない比較的安全な区画で、一同は息を整える。
こんな命がけの短距離走なんて、もう二度とやらないだろう。
「どうするよ。逃げ続けられんのも時間の問題だぜ。伯爵の言う通り、3時間でここが消滅するならさ。」
『あーと2時間レロ〜』
「うるさいパンプキン野郎。あとで絞ってポタージュにしてあげる。」
「レ、レロは食べても美味しくないレロよ!!」
楽しそうに言うレロにイラっときて、おなまーえは辛辣な態度をとった。
「どのみち助からないである」
「………」
ここから出られない今、一同の話の焦点は必然的に鍵にあたった。
「空間移動っていうロードの能力は、僕らも覚えがあります。彼女は間違いなく、空間移動能力を使っていました。」
アレンとリナリーが頷いた。
彼らは巻き戻しの街で一度ロードと対面している。
直接見たわけではないが、おなまーえも報告書でそれは確認していた。
「つまりさっきのロードの扉ってやつは罠かもしれねえが…」
「ひょっとしたら本当に出口かもしれない…?」
「しゃーねーってか」
「ちっ」
全員が神田の手に載せられている鍵を見つめた。
この得体の知れない鍵を一体誰が使うか。
「……男気?」
「普通に負けたやつでいいさ」
「そうであるな」
皆が腕を出す。
あの神田ですら少し袖をまくって右手を出した。
「「「じゃーんけんぽん!」」」
「こ、このドアでいいですか」
負けたアレンは鍵を手に、すぐそばにあった扉の前に立った。
生贄を免れたメンツは少し離れたところからそれを見守る。
「どれでもいいんじゃね」
「とっととやれ」
「しっかしアレン、じゃんけん弱ぇな」
扉に鍵を差し込むと扉の模様が一気に変わった。
茶色一色だったそれは、ポップなカラーリングになり、蝶の絵が施されている。
突然のことにアレンは驚きの声をあげたが、すぐに真剣な表情に戻した。
ここからはノアの作った領域に踏み込むことになる。
どんな罠が待ち構えているかわからない。
彼はくるっとこちらを向いて、右手を出してきた。
「絶対脱出、です」
生きて必ずここから帰る。
アレンは全員の目標を再確認した。
「ほいさ」
「である」
「うん」
「ういっす」
だがそれに参加しない者が一名。
その参加しない者の腕を引っ張っている者が一名。
「神田」
「せーんぱい!ここは少年漫画的に参加しないとまずいですって!」
「知るか」
神田は円陣を冷ややかな目で見つめた。
もちろんアレンも、この男が参加してくれるとは思っていない。
「…ですよね」
「行くぞ」
アレンは扉に手をかけて押し開けた。
両開きの扉がキィッとなった。