第12夜 箱舟
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第12夜 箱舟
真っ暗な空間に引きずり込まれたかと思うと、次の瞬間全身が浮遊感に包まれた。
「どわああぁああぁ!!!」
「うおぉぉおおおぉ!!!」
「ひゃあぁあぁああ!!!」
各々叫びながら落下していく。
おなまーえは胸に抱えているリナリーをギュッと握った。
――ドシンッ
――ドサッ
――ドササッ
「お、重い〜!!」
物凄い音を立てて、一行はタワーのように積まれる形で落下した。
上からクロウリー、神田、チャオジー、ラビ、アレン、おなまーえ、リナリーの順で積み重なっている。
「ビ、ビックリしたである〜」
「ちっ」
「ゔぉえええ」
「…ぅ」
「潰れるぅ〜!!」
上に乗っている人たちも目を回しているが、下敷きになっているアレンとおなまーえはもっと辛い。
リナリーを潰さないように腕立て伏せの形をとったアレンの手首が、おなまーえの横胸に触れた。
「ひゃっ!ちょ、アレンどこ触って、っ…」
「す、すみません!」
「あぁ!?」
上から殺気が降りてくる。
この声は神田の声だ。
アレンに悪気があるわけでは無いのだが、いかんせんくすぐったい。
「「早く降りてー!!」」
おなまーえとアレンの必死な叫びが響いた。
――間。
「何だこの街は」
全員が退き、ようやく立ち上がれたおなまーえは短パンの裾を払う。
アレンは起き上がると、あっと声をあげた。
「ここ箱舟の中ですよ!」
「ええっ!?」
白い壁、レンガの石畳。
まるで地中海の綺麗な街のような外装である。
だが人の住んでいる気配は全くしない。
ただ綺麗なだけの街である。
「なんでンなところにいんだよ」
「知りませんよ」
「喧嘩は良くないである」
「ほっといていいですよ、クロウリー」
いちいち神田がアレンに突っかかり、彼もまたそれに応えるのでいくら宥めても2人の喧嘩は収まらない。
「お、おい!リナリーの下に変なカボチャがいるさ!」
ラビの声におなまーえの視線はリナリーの方へ向いた。
足を痛めている彼女はラビの手を借りてゆっくり起き上がる。
するとその下から、ペッタンコに潰れた傘が現れた。
傘の先のところはラビの言う通りカボチャの形をしている。
「は!どけレロ!クソエクソシスト!ぺっ!!」
カボチャ頭は意識を取り戻すとこちらに悪態をついてきた。
喧嘩していたアレンと神田の殺気がこちらに向く。
「「お前か」」
「きゃーーッ!!」
アレンの爪と神田の六幻に挟まれて、カボチャはオレンジ色の顔を蒼白させる。
「スパンと逝きたくなかったらここから出せ、オラ」
「出口はどこですか」
萎縮しながらもそれははっきりと告げた。
「で、出口は無いレロ」
すると突然カボチャがピカッと光り出した。
『舟は先程長年の役目を終えて停止しました♡ご苦労様です、レロ♡出航です、エクソシスト諸君♡』
「これは……」
カボチャ頭、通称レロはゴーレムではあるが、アレン達をここに連れてくるゲートの役割をしたようだ。
レロの口から伯爵を象った風船のようなものが飛び出してきた。
『お前たちはこれよりこの舟とともに黄泉へと渡航いたしマァース♡』
――ドンッ
鈍い音が響いたかと思うと、あたりがまるで砂嵐の入ったテレビのように空が乱れ始めた。
――ピシッ
地面に亀裂が入る。
次の瞬間足元が崩れ始めた。
「!?」
「うお!?」
「地震!?」
美しかった建物がどんどん崩壊していく。
一行はなにが起きているのかわからなかった。
『
「は!?」
「どういうつもりだ」
『この舟とは間もなく次元の狭間に吸収されて消滅しまス♡お前たちの科学レベルで分かりやすく言うト……あと3時間。それがお前達がこの世界に存在してられる時間でス♡』
つまり、千年伯爵は使い捨てた箱舟ごと、エクソシストを次元の狭間に送り込んで仕舞おうという魂胆なのである。
『可愛いお嬢さん、良い仲間を持ちましたネェ♡』
ただ1人、リナリーという不穏分子を処分するために。
彼女の顔色から血の気が引いた。
『こんなにいっぱい来てくれテ。みんながキミと一緒に逝ってくれるカラ、寂しくありませんネ♡』
「伯爵…!」
千年伯爵の姿をした風船は遥か上空へと登っていく。
『大丈夫。誰も悲しい思いをしないよう、キミの居なくなった世界の者達の涙も止めてあげますカラ♡』
それきり伯爵の声はもう聞こえなくなった。
地上に残してきた人たちにも、きっと刺客が向けられているのだ。
おなまーえは非戦闘員のミランダを気にかけた。
江戸に来る前からずっと寝ていないと言っていた彼女。
無理して体を壊さないと良いが。
とはいえ、どちらかというとタイムリミットのあるこちらの方が窮地なのだろう。
ここにいるエクソシストたちの第一目標として、脱出することが定められた。