第11夜 江戸狂乱
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「……改造アクマ、プラント、ノアの箱舟ねぇ」
ティエドールも合流し、一行はまだ形の残っていた橋の下に身を寄せた。
おなまーえはまずミランダを全力で褒めちぎった。
この戦いの中で、おなまーえだけではサポーターの人たちまでは守れなかった。
ブックマンたちが動けるようになったのも彼女のおかげである。
慣れない評価をされ、ミランダは顔を真っ赤にしていた。
続いて、初めて会う人の紹介してもらった。
吸血鬼のような能力のエクソシストはクロウリーというらしい。
オンとオフだと人相違うから面白いさー、というのはラビの言葉である。
リナリーの結晶はしばらくすると消えてしまった。
彼女はまだ目覚めない。
その間にクロス部隊とティエドール部隊のこれまでの時間を共有し、今後について話し合っている。
ティエドールの長い話にも付き合ってられないので、おなまーえは坐禅をしている神田の元へ向かった。
「せーんぱい」
「…あっちで話聞かなくていいのか」
「あれはクロス部隊向けの説明ですもん」
彼女は神田の隣に腰をかけた。
「…ねぇ先輩」
「なんだ」
「もし、探している人がノアだったりしたら、先輩はどうしますか?」
「…あのデブに何か言われたのか?」
「姉がノアなんだって。証拠とか出されたわけじゃないから、確証はないんですけど。」
千年伯爵に言われたことがずっと引っかかっている。
単なる人違いなら良いのだが、あの口ぶりだと確信があっておなまーえの姉のことを語っている。
彼の言葉が真実ならば、おなまーえはやっと巡り合えた姉と敵対しなければならないことになる。
神田は少し考えると、変わらず仏頂面で答えた。
「何も変わらねェ。ノアなら倒す、ただそれだけだ。」
「うわーお、潔いー」
六幻の切れ味並みにスパッと割り切った彼に思わず拍手を送る。
「大体、お前姉貴にあってどうするつもりだったんだ」
「別に、どうもしないけど……それを言うなら先輩だって、蓮の"あの人"にあったらどうするつもりだったんですかー?」
おなまーえが姉を探しているように、神田もまた人を探している。
生きているかどうかもわからない亡霊を、2人して追いかけているのだ。
「……お前には関係ない」
「あ、ずるいその逃げ方!」
そして神田は十中八九その女性に好意を寄せている。
会えないほど想いは募り、思い出は美化されていく。
だからおなまーえは"あの人"には決して敵わない。
(でも構わない)
この心安らぐ時が、どうか永遠に続きますようにと、おなまーえはこっそりと祈った。
「おなまーえー!リナリーの目ぇ覚めたさ!」
「え、ほんと!今いく!」
ラビがリナリーの起床を報告してくれた。
おなまーえは神田の肩を掴み立ちあがる。
「よいっしょ」
「おい…」
「えへへ」
くるりと背を向けて橋の下に戻った。
「リナリー!」
「おなまーえ!」
ガバァッと勢いよく抱きつく。
「生きててくれてありがとう!」
「もう、それはこっちも同じよ」
おなまーえとリナリーが最後に会話したのはローマである。
あの時のおなまーえは気落ちしていて、元気のないおなまーえばかりリナリーの中に残っていたが、この様子を見るにいつも通りの彼女なようだ。
「おなまーえ、あんましリナリーに負荷かけるなさ!」
「何よラビ!その言い方だと私が重いみたいじゃないか!」
「いや、そういうわけじゃなくて!」
「あれ?モヤシ君泣いてるの?」
「モヤっ!?」
「ちょっと、それ絶対神田の影響ですよね!?ダメですよおなまーえ!あんな奴に毒されちゃ!」
「おなまーえがどんどんユウに似ていくさー」
おなまーえのモヤシ発言により、シリアスだった空気は完全に壊された。
あまりのおかしさに、ついリナリーは吹き出してしまう。
「あははははっ!」
まるで花が咲くような笑顔。
彼女の最大の武器である。
「……リナリーが笑ったさ」
「リナリーはどんなに変わっても笑ってるのが一番似合うんだから、そんなに顔を下に向けないで」
「うん……ありがと、みん――」
次の瞬間、リナリーの体が沈んだ。
「っ!?」
抱きついていたおなまーえも一緒に地面に吸い込まれていく。
「え、まってま――」
声を上げる間も無く、おなまーえはズブズブと頭まで沈んでいってしまった。
ペンタクル型の穴は黒い膜のようなもので覆われていて先が見えない。
「リナリー!おなまーえ!!」
アレンは咄嗟に左手をその穴に触れさせた。
「っ、これ、は…!」
ドプンと手が沈みズルズルと引き込まれていく。
「アレン!!」
近くにいたラビとチャオジーも走ってその穴の中に入っていった。
「狙いはリーだ!!とめろー!!」
ティエドールが叫ぶとの同時に、神田とクロウリーが風の速さで穴に飛び込んだ。
他の人たちが駆け寄る頃には穴は閉じてしまっていた。
残されたマリ、ミランダ、ブックマン、ティエドールは呆然と辺りを見回す。
「何だあれは!!」
橋の下から出ていたサポーターが声をあげた。
全員慌てて外に出る。
「あれは…!」
空がジクソーパズルのように崩れていき、そこから浮かぶ白い箱が現れる。
「神よ、こんなことが…」
おそらくあれはノアの箱舟。
未知の現象に、ティエドールですらも目を見開いた。
《第11夜 終》
2018/11/25 少女S