第11夜 江戸狂乱
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巨大なアクマはティエドールが抑え込んでいてくれているようだ。
(とすると今リナリーのことは誰も守っていない…!)
おなまーえは慌てて彼女の元まで走った。
案の定、リナリーの元に伯爵が舞い降りる。
心の中でラビを憎んだ。
伯爵とノアだったら、どう考えても伯爵の強さの方が計り知れない。
ハズレくじを引かされた気持ちで彼女は弓を絞った。
「伯爵ーっ!」
効かないとはわかっているが、おなまーえは伯爵に向かって攻撃する。
伯爵はヒラリと交わすと彼女をじっと見つめた。
「オヤ、貴女は……なんだか見たことのある顔ですねぇ。どこかでお会いしたことありますか?」
「その手のナンパは結構。初対面ですよ。」
「ムムムム…」
千年伯爵は顎に手を当てて、さらに舐め回すように見つめる。
幸い意識がこちらに向いてくれているため、リナリーの方にまだ手を出してはいない。
とはいえ、少しの居心地の悪さを覚えた。
「……あぁ!思い出しました。"彼女"の妹ですね♡」
「っ!?」
妹という単語でおなまーえは伯爵に食いついた。
血相を変えて彼に詰め寄る。
「あなた、ルル姉を知っているの!?」
「ええ、よーく知ってますよ♡」
奴は表情一つ変えずに笑顔のまま答える。
「同じ血からノアとエクソシストという、相反するものが生まれたんですカラ」
「ノア…?」
彼がなにを言っているのかわからなかった。
エクソシストというのはもちろんおなまーえのことだろう。
だがノアというのはどういう意味だろうか。
その言い方だと、まるで姉はノアであるかのような口ぶりである。
「いずれまたお姉さんと再会させてあげますから、今は下がっていてくださいネ♡」
「…下がれと言われて素直に引き下がると思って?」
「彼女が大切にしている妹君ですから、あまり危害は加えたくないのですガ。ほいっと♡」
伯爵は軽く持っていた傘を振るった。
まるで弾丸のような速さの風がおなまーえを襲う。
「っあぁ…!」
呆気なくおなまーえは弾き飛ばされる。
ザザッと体が地面に打ち付けられた。
幸い
「だ、大丈夫さ!?おなまーえ!」
「行かなきゃ、リナリーが…!」
心配してくれたラビには目もくれず、なんとか立ち上がって彼女の元へ向かおうとするが、かなりの距離を飛ばされてしまったため間に合わない。
「っ、ダメーー!!」
伯爵の手がリナリーの結晶に触れた。
まるで吸い込まれるかのように、伯爵は消えていく。
それと同時にあたりに響き渡る声。
『いや……いや、嫌…っ!』
「リナリー!!」
彼女の苦しそうな声がこだまする。
「リナリー!リナリー!」
彼女を出すため、拳で結晶を破ろうと何度も殴りつけるが、イノセンスでできたそれはビクともしない。
(お願い、神さま…!リナリーを、助けて…!)
――ドォン
次の瞬間、おなまーえの祈りが届いたかのようなタイミングでリナリーの結晶から小規模な爆発が起きた。
「なに!?」
ヒラリと彼女の眼の前に現れたのは、道化のような仮面。
(アクマ!?)
新手が来たのかと、おなまーえは咄嗟に身構えた。
だがそれも杞憂に終わる。
シュタッと軽快な音を立てて着地した白髪の少年を、おなまーえはよく知っている。
「な!」
「おまっ!」
「おなまーえ!ラビ!」
「アレン!」
すっかり成長したアレンは、見たことのない形状のイノセンスを扱っていた。
きっこここに来るまで様々な道のりがあったのだろう。
彼はこちらを見ると安心した表情をし、すぐに険しい顔つきに戻した。
「伯爵がこっちに来ませんでし――」
「まちやがれコラァ!!」
アレンが言葉を言い切る前に、まだ晴れぬ煙の向こうから神田の声が聞こえてきた。
随分と高ぶっているようである、
「死ねェ!!」
「うわっ!?」
――ガキン
襲いかかってきた六幻をアレンは左手の爪で防いだ。
「神田!?」
「!!?」
神田は状況を読み込めていないようで疑問符を浮かべている。
「どういうことだ…?」
「僕が聞きたいんですけど」
「俺は天パのノアを追ってきたんだ。おいおなまーえ、ラビ、知らねェか!」
2人はふるふると首を振った。
「あれ?そういやオレの相手してたマッチョのおっさんも…」
「伯爵もだよ…」
煙が晴れ、視界がクリアになってきた。
だがノアと伯爵の姿が見えない。
「どうなってんだ…ノアがどこにもいねぇ」
まるで最初からいなかったかのように忽然と姿を消していた。
ひとまず脅威は去ったようだ。
「チッ」
神田がアレンを見て大きく舌打ちをした。
「ちょっとなんで僕に舌打ちするんですか?」
まさに邪魔しやがって的な視線でアレンを睨みつけている。
「逃げられたのは神田がノロマだからでしょう」
――プチッ
「おい今何つった。つかテメェ、後からノコノコ現れて何やってたんだよノロモヤシ。」
――プチッ
「アレンですって何回言えばいいんですか?ああそうか、神田は頭もノロマなんですね。」
――ブチッ
「いい度胸だ。どちらがノロマか教えてやるよ。抜け。その白髪、根こそぎ刈り取ってジジイ共に売ってやる。」
――ブチッ
「黒髪の方が高く売れるんじゃないですか?」
会話をするたびにブチブチと何かが切れる音がする。
はて、この2人ここまで不仲だったかとおなまーえは以前を思い出す。
よくよく考えてみれば、あの頃はアレンはまだ新人で、周りに遠慮していたのだろう。
おそらく今こうして神田と言い争っているアレンが素の彼なのだ。
「脳天一本だけ残してやるよ」
「カッパみたいにしてやりますよ」
喧嘩するほど仲が良いとは言うが、ここはひとつ仲裁に入るべきだろう。
おなまーえは目の前の男の肩をポンと叩いた。
「ラビ、任せた」
「え、俺!?」
ラビは渋々2人の間に割って入った、
「お、落ち着くさ2人ともここ一応感動の再会――」
「「うるせェ、刈るぞ」」
綺麗にハモったアレンと神田はイノセンスをラビに向ける。
どうやらとる行動まで被るほど気が合うようである。
「わー、仲良いー(棒)」
「ええー…」
2人の背後にはゴォォオと黒いオーラが見えた。