第11夜 江戸狂乱
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――ヒュォォォ
乾いた風が吹き抜ける。
「うわ〜、惚れるね千年公。怖え〜。江戸がスッカラカンだよ。」
ほんの一瞬で江戸城以外の建物が吹き飛び、更地になってしまった。
これが千年伯爵の力だというのか。
――ガッ
おなまーえを抱えていた人物が刀を地面に突き刺した。
砂煙が辺りを舞う。
「先輩!」
「ハァッ、ハァ…」
神田は抱えていた手を放し、息を整える。
彼女の声には答えずに、歯を食いしばって上空を睨みつけた。
「ハァッ…ヤロォ…」
「先輩…」
「倒れっかよ、ボケ!」
ザザッとマリから無線が入った。
彼も随分と息切れしているようだ。
「マリ、大丈夫!?」
「私は無事だ。おなまーえの護りがなかったらやられていただろう。我らよりクロス部隊の心音が弱い。かろうじて生きている状態だ!」
遠くを見渡すと、横に倒れたブックマンと吸血鬼のエクソシストの姿があった。
サポーターはミランダが力を振り絞って、なんとか守りきったようだ。
誰も欠けていないことが奇跡である。
『ラビ』
不意に辺りに響き渡るような呼び声が聞こえた。
おなまーえはバッと勢いよく振り返る。
「なに、これ…」
彼女は目を見開いた。
人の丈よりも大きな結晶。
冷気もないのに、どこかひんやりするようなイノセンスの気配。
声は確かにこの結晶の中から聞こえてきた。
「また…!?」
「おい、なんだアレは?」
「っ…」
「どうした」
ラビはどうやらこれに見覚えがあるようだ。
神田の問いに答えるより早く、また結晶から声が聞こえた。
『神田……ラビ……おなまーえ……』
その声は確かに聞き覚えがあった。
「リナリー…?」
「まさか…」
『リナリー・リーの声なのか?こんな音は聴いたことがない!』
無線越しのマリにもこの声は届いていることから、彼女の声はこの江戸一帯に響きわたっているようだ。
『みん…な……皆…皆…っ!』
結晶の中のリナリーが必死に壁を叩いた。
「ラビ、どういうこと」
おなまーえがもう一度尋ねた。
「リナリーのイノセンスさ。イノセンスが自らの意思でリナリーの命を守ったんだ。」
「装備型のイノセンスが…?」
「あり得ん」
「あり得るさ…それが特別なイノセンスなら」
「それってもしかして…」
全員の頭をよぎったのは、108個あるイノセンスのハートの可能性。
イノセンスが持ち主を守るなどという異常な現象に理由をつけるとしたら、それくらいしか思いつかなかった。
ザザッと無線が入る。
『来るぞ!神田!おなまーえ!』
ハッとしておなまーえは江戸城を見上げた。
先ほど神田がぶった切った巨大なアクマと同じタイプのアクマがビームの構えをとった。
まるでビームをチャージするような仕草。そして紫色のに輝く光が無数の雨のようにこちらに襲いかかってきた。
――ドドドドッ
「
せめてリナリーのイノセンスに当たらないように、おなまーえは弓を回転させてこの辺りに襲いかかるビームを反射する。
「おなまーえ!」
「すみません先輩、これで手一杯です!」
アクマの攻撃に紛れて、黒い影がこちらに飛んできた。
――ドンッ
どうやら先程の青年のノアが結晶に向かって襲いかかったようだが、神田がそれを防いだ。
ノアの持つ鉾のような武器と神田の六幻がガチガチと音を鳴らす。
「貰うよ、彼女」
「チッ!」
「ユウ!」
「先輩!」
おなまーえとラビが助太刀に入ろうと立ち上がった次の瞬間。
「甘いのは好きか?」
背後から聞こえた声に、彼女の背すじがゾクッと凍った。
同時に嫌な気配を感じ、すかさずしゃがみこむ。
――グォン
「あっ…ぶなー」
先ほどのノアより随分とガタイのいい男の拳が振り切れていた。
あと少し避けるのが遅かったらおなまーえは遠くに殴り飛ばされていただろう。
「甘いのは、好きか?」
ガタイのいいノアは同じ質問をしてい、ニヤリと笑った。
「…どっちかっていうと辛党です」
おなまーえの額から冷や汗が落ちた。
ノアが拳を振りかぶった瞬間、大槌が空から降ってきた。
「こいつは俺がやるから、おなまーえはリナリーを守れ!」
「…わかった!」
そもそも彼女の戦闘力はそこまで高いわけではない。
自身の力を過信してはならないと、彼女は素直に引き下がった。