第11夜 江戸狂乱
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「そろそろ着くぜー、フロワ・ティエドール」
アクマの言葉に、しばし休息を取っていたおなまーえと神田は顔を上げた。
「うわ、綺麗…」
11日ぶりに見る陸地には、ピンク色の木が無数に生えていた。
あれは確か桜と言っただろうか。
あまりにも綺麗なもので、おなまーえは見惚れてしまった。
一行は陸地に降り立つ。
相変わらず多くのアクマが日本に向かって飛来しているが、そのどれもがこちらには目もくれずに去っていくため、皮肉なことになんの障害もなく歩けている。
「本当にこんなところに適合者がいるのか?」
「師匠の考えていることはわからない。クロス部隊がいると聞いたから、おそらく"彼ら"についているのだろう。」
「死んでないといいですけど」
伯爵が世界各地のアクマをかき集めているということは、ここで決戦を行うということ。
今全世界にエクソシストは元帥4人と、クロス部隊とティエドール部隊の、たったの計12人しかいない。
この戦力で伯爵と戦わなければならないのだ。
突然、桜の木がなくなり視界がひらけた。
風が強く吹き、一行の身につけているマントを翻す。
「うわ…」
「…ゴツイのがいるぜ」
一行の目に映るのは巨大なアクマのような生物が2体。
先ほどここに向かったアクマ達は、あの巨大なアクマの糧になったのだろう。
「マリ、君の耳で何が聞こえる?あそこから」
彼はじっと耳を澄ませた。
「……アクマの膨大なノイズに混ざって、微かにリナリー、ラビ、クロス部隊の声が聞こえます」
リナリー。
ローマ以来彼女とは顔を合わせていない。
この戦争の中、無事に生きててくれて本当に良かった。
「うん、行ってあげなさい」
ティエドールの言葉で、3人は一斉に地面を蹴った。
「2人とも、受け取って」
おなまーえは白い矢を生成すると神田とマリに向かって勢いよく射つ。
矢が2人の体に吸収された瞬間、一行は各々散らばった。
おなまーえは真っ先に見覚えのある光を放つ蔵に向かって走った。
あの光は、間違いなく
つまりミランダがあそこにいるということである。
戦えない彼女の側には、おそらくサポーターもいるのだろう。
あと少しで蔵に着くというところで、その光は徐々に消えていった。
あの技はまだ習得したばかりで、長時間の発動はできないのだ。
足を早めたおなまーえの隣に、ラビの元へ向かったはずの神田が並んだ。
「あれ、先輩こっちなんですか?」
「バカウサギがしくじりやがった」
ラビは確かノアと交戦していた。
しくじったということは、そのノアがこちらに向かったのだろう。
蔵の屋根に、見慣れない褐色の男が立っているのが見えた。
額には聖跡もある。
「あいつね…」
「中に入るぞ」
2人は息を潜めて蔵の中に入り、屋根越しにノアへの攻撃を試みる。
「行くぞ」
「はい」
神田が六幻で屋根を突き破った。
それに続きおなまーえも飛び出す。
神田の攻撃は見事、ノアとサポーターを引き剥がすことができたようだ。
だがそのノアの手にはリナリーが捕らえられている。
(どうしたんだろう。リナリーがイノセンスを発動していない…?)
髪が短くなり、随分と変わり果てた見た目をしているリナリー。
彼女に限って、この戦いで前線に出ていないことを不審に思った。
ノアはねっとりとした声で神田に問いかけた。
「ほんっと、今夜は客が多い。もしかしてお前も、イカサマ少年アレンの仲間?」
「…そんなモヤシ、知らん」
聞きたくもない名前を聞いて、どうやら神田はご立腹のようである。
彼がノアに斬りかかって蔵から距離をとってくれた。
おなまーえはすかさずミランダに駆け寄る。
ぐったりとしていて、ここまで不眠不休で来たことがわかる。
「ミランダ、ミランダ…しっかりして」
「エ、エクソシスト様…」
先ほど神田が助けたサポーターの男が、こちらに駆け寄ってきた。
「あなた達は?」
「中国でサポーターをしていた者です」
「そう。ここまでよく生き残ってくれました。私たちでできる限り守るから、なるべく固まってて。」
「はい!」
ただのサポーターがこの江戸まで辿り着けるとは、彼らの強運に感服した。
「……う…」
「ミランダ!」
「…あ、れ?おなまーえちゃん?」
おなまーえが膝枕していたミランダが目を覚ました。
彼女は虚ろな目でおなまーえを見上げる。
「久しぶり。よく頑張ってたね。ちゃんと見てたよ。」
「あ、あ…私…」
彼女の顔が少しずつ明るくなってきた。
初めての戦場がこんな修羅場だなんて、ミランダはとことんついていないようだ。
「起きれる?」
「ええ…」
「まだ何があるかわからないから、この人たちのこと、お願いね。あなただけが頼りなんだから。」
「わ、わかったわ」
おなまーえは立ち上がり、ノアのいるであろう方向に足を向けた。
神田が行ってくれてるとはいえ、ノアに連れられていったリナリーが心配だ。
イノセンスが発動できないのなら、それは一般人と変わらないということ。
(…先輩も私にこんな気持ち抱いていたのかな)
今更ながら、おなまーえのイノセンスが不調になった時、神田があれほどきつく前に出るなと言った意味が少しだけわかった。