第9夜 奇妙な館
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視界が明るくなる。
神田はすぐに飛び出した。
「マリ!」
おなまーえは縛られているマリに向かって矢を射った。
彼を縛っていたアクマは避けるために拘束を解いてしまう。
もう一度拘束しようと試みたが、神田が斬りかかってきたため撤退した。
「あわわわっ!」
3匹は別方向に散っていく。
また閉じ込められたり隠れられたりしては敵わない。
神田は容赦なく屋敷のカラクリを斬り開いていった。
棚はシャキンシャキンと小気味よく壊されていく。
致し方ないこととはいえ、これを見ていたクラウスは悲鳴をあげた。
「やめて…やめてください!建物を壊さないでください!ここは、ヤーンの屋敷は、僕の夢の出発点なんです!!」
「命が惜しかったら、そこでじっとしてろ!」
残っている棚は数えるほど。
神田はイノセンスを発動させる。
「界蟲『一幻』!」
「やめてぇえええ!!」
クラウスが叫ぶ。
砂埃が大きく舞い、仕掛けは全て神田の手によって破壊された。
広間は瓦礫で埋め尽くされている。
「これで隠れるところはない」
確かにそうだが、これではヤーンの屋敷の復興は絶望的だろう。
隠れるところのなくなったアクマたちが姿を現した。
「やれやれ」
「派手にやってくれたね」
「しかし壊し過ぎたようだ」
――ズゥン
仕掛けが動くのとは異なる地鳴りが響く。
次の瞬間、一同の足もとが崩れ落ちた。
「うぉっ!」
「おおっ!」
「キャアっ!?」
「ありゃ〜」
マリは咄嗟に屋敷の枠組みの木と、クラウスのサスペンダーを同時に掴んだ。
壁際にいたティエドールは自力でぶら下がったが、おなまーえは部屋の中心部近くにいたため掴まる場所がなかった。
(しまっ…!?)
床の下には屋敷の動力が設置されていたようで、無数の歯車が激しく動いている。
こんなところに落ちたら、たとえエクソシストと言えどもひとたまりもない。
空を掴む手。
回り続ける歯車。
落ちていく瓦礫。
おなまーえには全てがスローモーションに見えた。
「掴まれ!」
次の瞬間、おなまーえの上から黒い影が降ってくる。
おなまーえはなりふり構わずもう一度手を伸ばす。
瓦礫の間を飛んできた神田はおなまーえを掴むと壁に六幻を差し込み、ぶら下がった。
おなまーえは神田の首の後ろに腕を回し、抱きついているような状況だ。
「無事か?」
「あ、ありがと…」
バクバクとなる心臓は、決して死に直面したからだけではない。
腰を支えてくれている彼の左腕が妙に熱く感じる。
「あぁっ!!」
クラウスの悲鳴でおなまーえは我に帰る。
どうやら彼のカバンからヤーンの屋敷の絵本が落ち、歯車に巻き込まれてしまったようである。
当然取りに行くこともできず、クラウスはショックを隠せない。
「……全く」
一連の戦いを静観していたティエドールは、ポリポリと頭をかいた。
「床が抜けるような壊し方をするなんて、まだまだだねぇ」
「…………」
神田はティエドールに視線を向ける。
「クラウス、命をかけて見に来たヤーンの屋敷だ。目に焼き付けておきなさい。」
「え、えぇ…」
彼は十字架と彫刻刀がつながったようなイノセンスを取り出した。
「
左手の彫刻刀が光り出した。
あまりの眩しさにおなまーえは神田の胸に顔を埋める。
「何をする気だ?」
「…アート!」
ティエドールはその質問には答えず、彫刻刀を力強く壁に打ち付ける。
すると突き刺したところから、まるで植物のような白いものが生え、それが寄り集まり、巨大な人の腕を形成した。
光る腕はグルリと動力室の壁を殴り壊す。
「っ!」
「うそでしょ!?」
「………」
「くずれる~!!」
ティエドールの大胆な行動に、一同は半ばあきらめた顔をした。
神田はおなまーえを抱えて瓦礫の中を飛んで登っていった。
地鳴りが収まった頃には、辺り一面瓦礫の山と化していた。
屋敷の面影は最早存在しない。
おなまーえは降ろされ、思わず腰が抜ける。
唖然とした様子で2人は辺りを見つめていた。
ガラッと瓦礫が持ち上がり、下からティエドールが出てくる。
「言ったはずだよ。ものは柔軟に考えなさいと。隠れる場所をなくすなら、これぐらいやらないとね。」
「…はぁ」
「ほら、上だよ、上」
顔を上げると、3匹のアクマが行く当てもなくただ浮遊していた。
「さっさと片付けて」
注目されたことにたじろいだアクマを、マリがすかさず糸でからめとる。
「じゃ、私が」
おなまーえは容赦なく矢を3本放った。
マリが抑えていてくれたため、難なく弱点である顔を射抜くことができ、無事退治することができた。