第9夜 奇妙な館
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やがて一行は大きな円形の広間に出た。
おそらくここが屋敷の中心部である。
「ようこそ、エクソシスト」
部屋を支える横長い柱に2体立ち、残り1体はコウモリのようにぶら下がっていた。
ティエドールはアクマに話しかける。
「ようやくご対面だね」
「余裕じゃないか、ティエドール元帥」
「私を知ってるのかい?」
「もちろん。あんたの持っているイノセンスを頂きに来たんだからな。」
「誠に申し訳ないが、そういうわけにはいかないんだ」
「そうか、では力づくでもらうことにするよ」
「その前にちょっと舞台を整えようか」
地鳴りが響く。
何かしらの仕掛けが作動したようだ。
壁は層のように5つに分かれていて、それぞれ左右に回転し始める。
天井がゆっくりと開かれた。
するとその隙間からクラウスがぽとりと落ちてきた。
マリが慌ててそれをキャッチする。
「お前!」
「舞台を整えるって、彼のこと?」
「違う!そいつは勝手に入ってきただけだ」
「見ててごらん。戦いの舞台が今できる。」
未だ壁は回転し続ける。
クラウスは腰を抑えながら体を起こした。
「いてて。すみません、どうしても気になって。そしたら急に廊下に穴があいて……」
「まあ来ちゃったものはしかたないな」
「私たちから離れないようにしててください」
ぐらりと地面が揺れた。
「なんだ?」
平らだった地面に高さの異なる棚のようなものが生えてくる。
棚とはいえ、一段が人の背丈ほどある大きさである。
「これだ!これこそが戦いの舞台…」
「そして君達の墓場となるのだ!」
辺りを見渡したクラウスが何かに気づいたように声をあげた。
「ここは形を変える部屋。この屋敷で最も大掛かりな仕掛けのある部屋です!」
「本当におもしろい屋敷だねぇ」
「あんたもそう思うかい?気が合いそうだね」
マリの足場が上がり、おなまーえもティエドールから離れてしまう。
神田は素早く棚の間を飛ぶ。
おなまーえもそれに倣おうとするが、部屋全体が動いていて予測ができないため、むやみに動けない。
「やめてくれ!アクマと気が合っても嬉しくない!」
「そうかい。そりゃ残念、だっ!」
次の瞬間、アクマのうちの一匹が鋭い爪を光らせてティエドールに襲いかかった。
だがそれを神田が間一髪で食い止める。
「元帥、さがってください」
「言われなくてもわかってるよ」
ティエドールとクラウスはアクマたちから離れた。
「イノセンス発動!」
神田は六幻を発動してアクマに斬りかかる。
呆気なく斬れたアクマは、しかし余裕という表情を浮かべる。
「はははは!どうだい?いいだろう、この体。」
どうやら体は本体ではないようで、斬りつけても再生していく。
神田は訝しげに眉を顰めた。
「避けて!」
背後から別のアクマが彼に襲いかかろうとした。
おなまーえはすかさず矢を番えた。
ぐいっと力強く弦をひくと5本の矢が現れる。
それを放つとアクマたちは神田から離れた。
マリがアクマを捉えようと弦を伸ばすが、奴らの体はまるで霧のように千切れて網を潜り抜けてしまう。
「はははーっ!」
アクマたちは霧散したかと思えば、細長い胴を利用してマリに巻きついた。
「マリ!」
神田が彼に駆けよろうとするが、突如生えてきた棚に邪魔されてしまう。
「チッ」
「うわっ!」
神田のいる棚と、おなまーえのいる別の棚が組み合わさり、2人は完全に閉じ込められてしまった。
互いの気配はすぐに感じ取れるので、2人は背中を合わせて暗闇を見渡す。
(……これが背中を合わせるってことなのかな)
いつもは後方支援のため、神田の背中ばかりを見ていた。
状況が状況とはいえ、背中を預けられるという経験は初めてであった。
まだ暗闇に慣れていない目で、神田はアクマの手がこちらに襲いかかってくる様子を捉えた。
すかさず斬りかかるが、相変わらず手応えはない。
「先輩後ろ!」
「なにっ!」
前に飛び出して背中がガラ空きになった神田に、もう一体のアクマが手を伸ばした。
おなまーえは身を呈してそれを庇う。
「っ!」
どうやらうまくいったようで、神田に怪我はないようだ。
おなまーえも幸い怪我はないが、この状況は芳しくない。
どこから現れるかわからないアクマたち。
視覚に頼ってこちらから襲いかかると相手の思うツボ。
(試す価値はあるか……)
おなまーえには一つ策があった。
先ほどはティエドールやクラウスもいたためできなかったが、この立方体の密室ならば難易度こそ上がるが周囲に危険は及ばない。
「……神田さん、私から離れないでください」
「…わかった」
神経を研ぎ澄まし、彼女は弦を小さく引く。
現れたのは黒い矢。
「コントロールできるかわからないけど…」
ふわんと四方向に魔法陣が浮かぶ。
「
パァンと上に向かって矢を放つとソレは分散し、魔法陣からマシンガンのように飛び出した。
アクマの体を傷つけることはできないが、炙り出し程度ならできると期待したのだ。
「ヒ、ヒエ〜!」
「そこだ!」
予感は的中した。
一ヶ所、あからさまに様子のおかしいところを発見し、神田が六幻を投げるつける。
擬態していたアクマは仮面を傷つけられ、へなへなと倒れ込んだ。
「顔が弱点か」
アクマは怯えたように密室から飛び出していく。
ようやく敵の弱点がわかり、彼はスパンと棚を縦に切った。