第9夜 奇妙な館
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一行は致し方なく付近の村まで徒歩で来た。
もともと歩くつもりだったので文句はないが、山道だったため、馬車があればどれほど楽だったかと思わずにはいられなかった。
村は静まり返っていた。
洗濯物が干され、飲食店には食べかけの食事がそのまま放置されている。
スープに手を当てるとまだ生暖かかった。
「どうして?たった今まで誰かいたみたいなのに…」
クラウスの一般人らしい感想が出てくる。
「アクマの仕業だね」
「アクマ?あ、さっきのあの化け物ですか!?」
「うん」
神田が椅子に乗っかっていたコートを持ち上げると、砂がサラサラと溢れ落ちた。
アクマのウイルスにかかり、体が崩れた証である。
「全員やられたな」
「そ、そんな…」
得体の知れない恐怖にクラウスはすくみ上った。
「ん?」
不意におなまーえの向かいで捜索をしていたマリが反応する。
彼の耳がアクマのノイズを聞き取ったのだろう。
「東だ!」
彼の掛け声とともに一同は外に飛び出した。
白昼堂々と姿を現したアクマたちを追いかける。
神田とマリが積極的に前に出て、おなまーえがティエドールとクラウスに襲いかかった砲撃を打ち返していく。
だがどこか様子がおかしい。
こちらを襲っているというのに、アクマたちは後退しながら砲撃を放っている。
そのせいで狙いはガバガバで、たまに一行に当たるものもおなまーえが難なく打ち返せた。
「何かおかしいです!」
「ああ、こいつらまるで誘導してるような……」
その読みはどうやらあながち間違えていないようで、アクマは東へ東へと進む。
マリが弦で遠ざかるアクマを捉えたが、一体を掴み損ねてしまった。
「待て!」
木々の間を走り抜ける。
やがて一行はアクマの案内で一つの屋敷にたどり着いた。
アクマは屋敷の中に吸い込まれていく。
壁は石でできていて、屋根はオレンジ色のちょっとしたお城のような外装。
まさに先ほどクラウスが見せてくれた絵本の表紙と同じ建物がそこに建っていた。
少し遅れて来たクラウスは息を整え、顔を上げる。
「はっ!これこそがヤーンの屋敷!!」
手作業で作られたとは思えないほどの立派な屋敷。
クラウスが憧れたのも頷ける。
「やぁっと来たか、エクソシスト」
「!!」
上空から声が降って来た。
しゃべるということは、Lv.2のアクマの可能性が高い。
顔を上げると予想は的中し、ヒョロッとしたアクマが三体こちらを見下ろしていた。
わざやざこの屋敷に誘導したことといい、一筋縄ではいかなさそうだ。
「あんまり待たせるものだから村人みんな殺しちゃったじゃないか」
「さぁ入ってこい。楽しもうぜ。」
彼らはくるりと一回転すると城の入り口に吸い込まれていく。
マリが弦で捕らえる間もなかった。
「俺たちを誘っているつもりか。ふざけやがって!」
神田は苛立ち、入り口へと続く階段を駆け上がる。
「待て!罠の可能性も…」
「関係ない!アクマは破壊する!」
マリの冷静な判断も一蹴し、彼は屋敷を睨みつける。
おなまーえとの不仲といい、ティエドールに反撃できないことといい、アクマにおちょくられたことといい、神田はストレスが最高潮に達していた。
アクマでもなんでも、斬り伏せられるのならなんだってよかった。
「……実際野放しにはできませんよ、元帥」
「やれやれ。仕方ないねぇ。」
血気盛んな弟子たちに彼は重い腰を上げた。
クラウスと向かい合い、互いの目を合わせる。
「ちょっと行ってくるよ」
「で、でも…」
あんな危険な目にあったというのに、クラウスは素直に引き下がらない。
「私達なら大丈夫。だから君は帰りなさい。見ただろう?この先は君のくるところじゃない。」
「…わかりました」
しぶしぶといった様子で彼は頷いた。
それはこの場にいる全員の総意だった。
「あの」
「ん?」
「屋敷を、よろしくお願いします」
階段を上る一向にクラウスは自身の望みを託す。
「わかってるよ」
ティエドールはにっこり笑ってそれに答えた。