第8夜 呵々大笑
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「ほらほらどうした!さっきまでの威勢はよぉ!!」
「くっ」
かれこれ2時間程回避し続けているが、いい加減に彼女にも表情にも疲労の色が見えてきた。
足も覚束なくなり、時折ビームが肌をかすっている。
(隠れてもあのアクマ、建物突き抜けてくるし……)
地面や建物はモグラのようなアクマのせいでボロボロになっていた。
――ぐらり
「っ!?」
疲労のため思考能力が低下していたおなまーえは、建物が倒壊してくることを想定していなかった。
こちらに向かって落ちてくるレンガを彼女は間一髪で避けるとバランスを崩す。
これ幸いと遠くにいるアクマもビームを放ち、地中にいたアクマもこちらに向かって突進してきた。
(っ、まずい!)
建物とビームはなんとか回避できるが、突進してくるアクマはどこからくるかわからないため避けられない。
受け身をとって全ての攻撃を食らうか、避けて生身で体当たりを食らうか。
(……後者だね!)
おなまーえはくるっと体を回転させ、崩れる壁を盾にビームを避けた。
(くるっ!)
衝撃に備えて目を瞑った瞬間。
「シュート!!」
――ズキュン
見たことのある球が突進してきたアクマの額を貫通した。
「ハッ、そんな小せぇ弾丸じゃ壊れねェよ」
アクマがそう言った次の瞬間、リンゴーンという荘厳な音が鳴る。
「な、なんだ!?」
「音波による内部破壊じゃん。小せぇからってバカにすんなよ。」
リンゴーンリンゴーンと音は鳴り続ける。
「鐘になっちまえ」
ゴォーンと凄まじい音を立てて、目の前のアクマは弾け飛んだ。
あのイノセンスを、あの特徴的な団服をおなまーえは知っている。
こちらを振り返ってニィッと笑った彼におなまーえは笑顔を向けた。
「デイシャ!」
「よ!おなまーえだけじゃキチィと思ってきてやったじゃん!」
目の下に逆三角形のペイントをし、特徴的な口癖の彼と会うのは一年ぶりだった。
「あとはあの1匹だけか?」
「うん、大丈夫。あれだけならやれる」
おなまーえは弓を絞った。
「このヤロー!!バカにしやがって!!」
アクマがビームを放つと同時におなまーえも矢を放つ。
だがその矢はアクマの横を通り過ぎて遠くに行ってしまった。
「狙い悪りぃな!貰ったぜ!!」
迫りくる光におなまーえは足を動かさなかった。
持っていた弓を自身の前でクルンと一回転させる。
「
これだけ攻撃を受けていれば、粒子の波動くらい嫌でも読み取れるようになる。
それを1つ1つ弾き返す要領で打ち返す、新技である。
「なっ!!」
――ドォン
アクマは打ち返された自身のビームに攻撃される。
「この女ァ!!次はそうはいかせねェぞ!」
「残念。次はないよ!」
「え」
――ズドン
アクマの背中に黒い矢が突き刺さった。
「カハッ、なん、で……」
アクマは何が起きたのかわからないと言う顔をしていた。
「さっきあなたが狙い悪いって言った矢だよ。追尾機能付き。」
「クッソォォォ〜〜!!」
――ドォーン
ボディが弾け飛んだ。
辺りに静寂が戻る。
長時間の戦いだったためおなまーえは疲弊して膝をつく。
「はぁ〜〜」
重いため息がこぼれた。
「ヒュー、えっぐい!いつのまに追尾機能なんてつけたじゃん?」
「ちょっと前にコントロール出来ることに気づいて。実践したのは今日が初めて。」
「やるねぇ」
ここに着くまで何回かアクマに襲われた。
その際に考案した技だ。
自分の努力が認められるのは素直に嬉しい。
デイシャが手を差し出した。おなまーえは小さく感謝の言葉を述べ、それにつかまって立ち上がる。
「夜明けまであとどのくらい?」
「んー、30分くらいじゃん?」
「結構戦ってたなぁ」
崩れた建物、でこぼこの石畳。
この辺りの復興はそこそこ時間がかかるだろう。
心の中でコムイに謝って、おなまーえとデイシャは歩き始める。
「もう神田はついてっかな。おなまーえ居ないとアイツ不機嫌で困る。」
「えー、私居ても変わらないと思うけど」
意外に思われるがティエドール部隊は比較的仲が良い。
例えるならば神田は長男。
マリが母で、ティエドールが父。
おなまーえとデイシャは末の弟と妹のよう。
趣味人の父親に振り回され、周りが勝手に結託していったと言うほうが正しいかもしれないが。
「にしても久しぶりじゃん。髪結構伸びたな。」
「あー、最近忙しくて切ってなかったから」
おなまーえは毛先を少しいじる。
言われてみればアレンが来た頃から一切切っていない。
肩ほどだった髪は胸辺りまで伸びていた。
「せっかくだし伸ばせばいいじゃん。オレ長いほうが好きだぞ。」
「デイシャがそう言うなら伸ばしてみようかな」
本当の兄妹のように2人は足を揃えて歩く。
そしてこのまま神田とマリと合流して、それからティエドール元帥を見つけ出して教団に戻る。
はずだったのに。
「おいアレ!」
「アクマの大群だね……」
北東の方角から大量のアクマの大群がこちらに押し寄せてきた。
おそらくティエドール部隊を足止めするための増援。
このままだとマリのいる方向に行ってしまう。
ただでさえあちらはアクマが多いと言っていたため、ここで食い止めた方が彼らのためにも良いだろう。
「オレ狭い方が得意だけど、おなまーえは広い方がいいよな?」
「そうだね」
見たところLv.1ばかりだが、数だけは多い。
共に戦ってもよいのだが、おなまーえは広いエリアを得意としていて、デイシャは狭いエリアを得意としているため、各々二手に分かれて分散させると言う作戦を選んだ。
だが、それが間違いだった。
「じゃ、またあとでな!」
「あんまり建物壊しすぎないでよー」
「それオレには無理じゃん!」
これが彼との最後の会話だった。