第8夜 呵々大笑
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スペインにたどり着く頃には夜になっていた。
気は進まないがゴーレムで神田やマリと合流した方が良いだろう。
ふわふわ飛ぶコウモリ型のゴーレムから付近の教団のゴーレムに繋げた。
ザザーッとノイズが入るが、注意深くすれば聞き取れないこともない。
『…はら…たな……』
『あ?何言ってやがる』
神田の不機嫌そうな声が鮮明に聞こえた。
思わず心臓がドキッと跳ねる。
『音悪いな、デイシャ』
『ったくもー、最近調子悪ィじゃん、オレの無線ゴーレム』
そう言っている間にも時折雑音が入る。
この砂音はデイシャのゴーレムが原因だったようだ。
『お前ら今どこにいる?』
『デケェ変な塔から東に3キロくらい?』
『私は西に5キロと言ったところだろう』
「……私、北に2キロくらいだよー」
『『!?』』
突然おなまーえが会話に入ったことで、一同は驚きを隠せなかった。
『おなまーえ!もう着いたのか!』
「
『ひぇー、もう追いつかれちまったじゃん!』
「デイシャ、あの塔はサグラダファミリアって言うんだよ。世界的にも有名なんだから覚えてて損はないよ。」
『興味ねェし!』
「常識だってばー」
『オイ、軽口叩いてる暇あったら動け』
『へいへい』
どうやら彼らは今散らばっていて、各々アクマに囲まれているらしい。
『長い夜になりそうじゃん、こりゃ』
「どこか助太刀行こうか?」
『いや、必要ない。北側にもアクマはいるだろう。用心してくれ。』
「……みたいね」
おなまーえの目の前にLv.2の敵が3体、Lv.1が30体ほど現れた。
この辺りもアクマの密集区だったようだ。
彼女はイノセンスを構える。
『一旦集まる。10キロ圏内ならゴーレム同士で居場所が辿れる。』
「一番アクマが多いところは?」
『おそらく私のところだ』
『じゃあオイラと神田とおなまーえで、マリのおっさんのとこ集合ってことで』
「デイシャ遠いんだから気をつけてね」
『わぁーってるよ。おなまーえも無理すんじゃねぇぞ。』
「わかってますよーだ」
『時間は?』
『夜明けまでだ』
神田の言葉を最後にゴーレムは途絶えた。
やはりこのメンバーは動きやすい。
ティエドール部隊はこの4人でなくては。
懐かしい声に胸がホッと温まった。
神田にフラれたことなど今はどうでもいい。
この場を殲滅きて、早くみんなと再会しよう。
アクマがこちらに襲いかかってくる。
おなまーえはそれを難なく躱し、空にむかって黒い矢を3本射った。
「
空からだけでなく、横方向からも矢の雨が降る。
逃げようとするアクマを一網打尽にする。
「新生・おなまーえちゃんの覚悟、喰らいなさい!!」
断末魔すら上げずにアクマが破壊されていく。
とはいえこれで破壊できるのはLv.1くらいまで。
Lv.2は未だ3体残っている。
どれも頑丈そうな見た目だ。
冷や汗が彼女の額を流れ落ちた。
「あなたたちの目的は足止めってところかな?」
「ギャハハハ!」
「足止めぇ?そんな生半可なもんじゃねぇよ!」
「オレらはエクソシストを間引きしてんのさ!」
「間引き…?」
おなまーえは違和感に首を傾げた。
「おい、間引きだと強いやつだけ残っちまうぞ。そこは駆逐とかそういうのでいいんじゃないか?」
「あ、確かに」
思いのほかコミカルなアクマに、少々拍子抜けする。
「……なんかあなたたちおもしろいね」
「ヒハハハ!これから殺されるっていうのにこいつ余裕だぜ!」
「それこっちのセリフ」
次の瞬間、一体のアクマの身体が吹き飛んだ。
「「え?」」
生き残っているアクマが慌てておなまーえを見ると、
硬い鎧で覆われていたボディだが、関節を狙えば問題なく破壊できるようだ。
「……あと2体」
「卑怯だぞ!!」
「戦に卑怯も何もないでしょ。てかそれ言うなら、そっちは多勢に無勢だし。」
「確かに?」
「流されてんじゃねーぞ!」
「……こんな賑やかならアクマライフも悪くはなさそうだね」
もう不意打ちは通用しない。
おなまーえは後ろに飛んで距離をとった。
どんなにふざけていても彼らはアクマだ。
知性が身につき、各々の能力が備わっている。
「くらえ!!」
1匹が身体中からビームを放った。
おなまーえは軽く地面を蹴って避ける。
こんなの神田の攻撃に比べたら止まっているのと大差ないくらいだ。
それをビームを放ってくるやつに射ちこみ、もう1匹も倒しておしまい。
「させるかー!」
――ドゴォン
とはいかないのが戦争の辛いところ。
地面を突き抜けて出てきたのはもう一体のLv.2。
それのせいでおなまーえの矢の軌道がズラされ、目的のアクマに当たらなかった。
ビームに気を取られていて、もう一体が消えたことに気づかなかった。
ビーム系の長射程の能力と体当たり系の近距離の能力。
とてもバランスのとれた良いコンビだ。
「いってぇ!ヒリヒリする!これ!」
「そりゃイノセンスに体当たりなんてしたら当たり前だろ!?」
「だ、だってよぉ、他に攻撃方法ないし…」
「あの女にやれよ!!」
「それもそうか」
アクマは合点がいったと頷くと、モグラのように地面に潜っていく。
ちょっとした車並みな早いアイツが、いつどこから飛び出してくるかわからない。
かと言って下手に動けばビームに当たる。
「ほんっと、長い夜になりそう」
おなまーえは苦しげに笑った。