第7夜 旅立ち
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「コムイさん!私もう行きます!」
「え、もうかい?」
「やらなきゃいけないことを見つけたんです」
執務室に飛び込んだおなまーえの顔は、先ほどとは打って変わって明るいものになっていた。
それが取り繕ったものではないことは目を見ればわかる。
「神田くんも向かってるみたいだから、ちょっと待ってもらってから合流して一緒に行けば――」
「あんなやつさっさと先に行かせてください!」
「あ、あんなやつ…」
「とにかく!夕方の便でスペインに向かいます!」
吹っ切れたにしてもテンションのおかしいおなまーえに、コムイもたじたじになる。
彼女はぐいっとコムイに詰め寄る。
「わ、わかったよ。でもその前にミランダに会ってやってくれないか?」
「え?ミランダならさっき会いましたけど…」
「いや、その、君に何かしてしまったんじゃないかと気に病んでたから」
「あ」
そういえば、さっきはミランダから逃げるように指導を放棄してしまった。
彼女のことだから自分が何かしたのかと思い悩んでいることだろう。
「わかりました」
「夕方の電車はこっちで手配しておくから、それまでに支度しておいて」
「ありがとうございます」
****
ミランダはまだ科学班の部屋にいた。
だが彼女が泣きわめくばかりに、他のスタッフも困惑している。
おなまーえが顔を覗かせれば、天の救いが来たかのような眼差しを受けた。
「ヒィィ!!おなまーえぢゃん!!」
「あー…ごめんね?ミランダ」
「私何かしてしまったのかしら!?!?」
「そういうわけじゃなくて……」
「ごめんなざいぃぃいい!!」
泣きつく彼女におなまーえは苦笑する。
いっそ指導を放棄したことを責めればいいのにとも思う。
おなまーえはしゃがみこみ、先ほどジェリーにしてもらった時と同じように、ミランダの頭をポンポンと撫でた。
「謝るのは私の方。ごめんなさい、ちょっと心がブレてた。今はもう大丈夫だから。」
「……ほんと?」
「うん。私今日の夕方また任務に行っちゃうから、ミランダは私がさっき教えたやつできるようになっててね。」
ミランダもそろそろ任務に出せる程にはイノセンスを扱えるようになってきた。
次会うときは戦場かもしれない。
「私も強くなって帰ってくるから」
「ぁ……」
ミランダにとってはおなまーえの笑顔が眩しかった。
覚悟を決めた人とは、こうも美しい顔をするのかと感じる。
「頑張る、わ」
「うん!じゃあ、行ってきます」
「い、いってらっしゃい」
決して広くはない肩幅なのに、ミランダには彼女の後ろ姿が大きなものに見えた。
《第7夜 終》