霧雨が降る森
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須賀がこちらに体を向けた。
「あのさ、もしかしてなんだけど……」
震える声を悟らせないようにおなまーえは気丈に話しかける。
「シオリさんと幼い頃から知り合いだった?」
瞬間、弾けたように須賀がこちらを見る。そして少し考え込むとメモにボールペンを走らせた。
[しぃちゃんはことりおばけと約束してる。]
"しぃちゃん"という単語と"ことりおばけ"という単語に怪訝な顔をした。
やはり彼らは幼馴染なのだろう。ハッキリとは答えなかったが、おなまーえにはお見通しだった。
加えて、ことりおばけと約束していていながらも記憶がないという一連のことから、夜光石の忘却効果を利用したのだとすぐにわかった。
そして彼がなぜこの屋敷を離れないのか、シオリが来た時どうして執拗に帰らせたがったのか、全てが繋がった。
須賀は続けてメモを見せてくる。
[オレは守るって約束した。]
その瞬間、どうしようもなく悲しい気持ちになった。
(あぁ、コウはあの子のことが、好きなんだ。)
広がる胸のモヤモヤをぐっと押し込んだ。今は佐久間を探さなくては。
「……わかったよ。私は森には行かないから、コウは気をつけてね。」
精一杯の笑顔を浮かべ、手に持っていた刀をぐっと彼の胸に押し付けると、逃げるように屋敷を出て行った。
彼がそれを追いかけようとして思わず手を伸ばし、しかし踏みとどまったことなんておなまーえは気づかなかった。
(私、今笑えてたかな。)
頬に伝う水を雨だと誤魔化しながら、おなまーえは1人屋敷の横で静かに泣いた。
彼のことを、理解しているつもりだった。小さい頃から共に育ち、姉弟のように親しく接してきた。
管理人になって間もなく、色々と試行錯誤を重ねている須賀を陰ながら支えてきた。生活費、食事、家事。もちろん自分が生きるために必要だったというのもあるが、それらは全部須賀を思っての行動だった。彼が少しでも楽になれるように。少しでも幸せになってもらえるように。
見返りを求めていたわけではない。いつかこの生活が続けられなくなることもわかっていた。でも心のどこかでは、こんな満ち足りた日々をずっと過ごしていたいとも考えていた。
(あの子さえ、来なければ……)
シオリがこの家に来なければ、その日々はもう少し続いていただろう。彼女が来てから須賀はどこか落ち着かなさそうであった。
(そりゃ、好きな人がいたら側にいたらソワソワもするわよね。)
自嘲気味に笑い、俯いた。冷たい雨が容赦なくおなまーえに降り注ぐ。
「失恋って、つらいなぁ」
しばらく泣き、着ているパーカーもびっしょり濡れてきた頃、そろそろ村の家を回らなくてはとおなまーえは目を擦る。
村はさして広くもないが、一軒一軒が離れた場所にあるのだ。
(さて、バイクで行くか否か……)
→バイクでまわる
→徒歩でまわる
※一度少しだけ分岐しますが、途中までのストーリーは全く変わりませんので、次の1ページに納めさせていただきます。スクロールすると徒歩ルートがございます。最後の方はきちんとページごとに分岐させますのでご容赦ください。
※ネタバレしますと、バイクルートがハッピーエン、徒歩ルートがバットエンドです。ご覚悟を。