霧雨が降る森
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「事情があるって言ってましたよね。どうされたんですか。」
須賀がこのように愛想がないため、おなまーえはなるべく穏やかに質問した。
「はい、両親が交通事故で他界してしまって何もなくて……。せめて関わりのあるこの場所のことを知りたいんです!」
彼女は必死に須賀に訴えた。
(距離、近い)
須賀に詰め寄る彼女に対して、おなまーえの中で少し嫉妬の感情が湧いた。
「何を揉めてるんだ?」
望月巡査が2人の間に割って入り、佐久間がシオリの握っているメモを取る。
「うわ、意地くそ悪い。『帰れ』だって!なんで?もともとお姉さんの家の人の建物でしょ?ちょっとくらいいーじゃん。」
佐久間のはっきりとした性格は好きだが、今回はあまりありがたくない。
須賀は心なしか不機嫌だし、おなまーえの心もモヤモヤするため、彼女にはできれば引き下がってもらいたい。しかし彼女を1人外にほっぽり出すのはもっと危険だ。
複雑な感情を抱え、おなまーえは不安げに須賀を見上げた。
「まぁとりあえず落ち着こう。」
年長の望月巡査が、ピリピリした空気を緩和させてくれた。
「あと、泊まるところはここら辺にはないぞ。」
「えっ?」
「本当に何にもない村ですからね。」
「バスもなければコンビニも民宿もないんだよ。」
「じゃあここの人たちは一体どうやって生活を……」
「そのために車があるのよ。私はバイクだけど。麓の町に行けばスーパーくらいはあるからね。」
「それなら車で町まで送ってくだされば明日また……あっ」
何かに気づいた彼女は残念そうな顔で望月巡査を見つめている。
「うん、気づいてくれたみたいね。送るぶんには望月巡査に頼めばやってくれると思うけど、明日お迎えしに行かなきゃ行けないとなるとこれ以上迷惑はかけられないもんね。」
望月巡査のパトカーをタクシー代わりにはできないし、おなまーえのバイクも1人乗りだ。麓の町まで連れて行くこともできない。
あまり歓迎したくはないが、状況的にみて彼女をここに泊めるのはほぼ確定事項となった。
須賀が厳しい目でおなまーえを見る。
「そんな顔しないでよ。彼女を外に放り出すわけには行かないでしょう。」
「そうだよ、おなまーえさんの言う通りだよ。ここって緊急時の宿泊施設なんでしょ。こういう時に働かないでどーすんの。」
「まぁ2人の言う通りだ、須賀君。村でも決まってることだし、問題ないだろう。」
4対1で圧倒的に不利であることを察した彼は、嫌々な顔をしながらもこくりと頷いた。
シオリの方も申し訳なさそうに首を下に向けていた。