霧雨が降る森
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プロロー
「すっかり夜になっちゃったな……。コウが心配してるかも。」
雨宮おなまーえ、21歳。
只今、小さいバイクを運転して帰路についている。
中古で買ったものとはいえ、水色の可愛らしいボディはなかなか気に入っている。
今日はお仕事の日。
週に4日程度、こうして近くの街のスーパーでアルバイトをしているのだ。近くとは言っても車で片道30分ほどの距離があり、とてもではないが徒歩では行けない。
しかし生活費を稼げる上、処分する商品を安く譲ってもらえることもあるため、この仕事もなかなか気に入っている。
幼い頃からこの村で育ったおなまーえは、両親が他界してしまっていることを考慮しても、特に不自由ない生活をしていた。
(それに、好きな人と同じ家に住めてるなんて、この上ない幸せだもんね。)
なぜか真っ黒の洋服しか好まない彼、鉱石の加工ばかりに熱中している彼、料理が下手なのに自覚のない彼。
家でおなまーえの帰宅を待っている彼を思うと、自然と頬が緩んだ。
「早く帰らなきゃ」
もうすぐ駅に差し掛かるというとき、正面から見知った車が走ってきた。向こうも気づいたらしくノロノロとスピードを緩める。
運転席の窓を開けて明るい顔がこちらを覗かせる。
「お疲れ様です、望月巡査」
「おお、おなまーえちゃん!今日も仕事だったんだな」
話しかけられた彼は人好きする笑顔で答えてくれる。
「はい、早く帰って夕飯作らないと、また炭を食べる羽目になるので」
「ははは、そうだな」
「望月巡査もお仕事終わりですか?」
「おお、そうだった。資料館に用があるっていうお嬢さんが駅にいたから送ってたんだよ。」
「あら?珍しい、観光客ですか?」
「それが少し違うみたいなんだよ。ろくに荷物も持ってなかったし。」
「うーん、閉館時間ももう過ぎてますし……。とりあえず急いで帰って見てみますね。」
彼の姿を見てその少女がびっくりして逃げてしまうかもしれない。おなまーえはアクセルをふかした後ゆっくりと発進させる。
「そうしてくれ。すまなかったな、時間取らせて。」
「いえいえ、教えてくれてありがとうございます。」
プォンという軽快な音を立てて、水色の車は自宅である資料館に、急ぎ気味で帰っていった。