霧雨が降る森
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【ハッピーエンドコース】
バイクはガソリンがないため動かない。
(なんでこんな時に限って使えないんだろう……)
自分の不甲斐なさ、そしてシオリになにもかも取られる恐怖に、おなまーえは涙を流して走った。
(バカだな、私。逃げてもどこにも行く当てなんてないのに。)
幼い頃からこの屋敷で育った彼女に、逃げれる場所などなかった。おなまーえの足は通い慣れた街へと続く道を下っていく。
グイッ
「きゃ!」
不意に腕を掴まれた。
慌てて振り返ると須賀がおなまーえの腕をしっかりと捉えていた。
足の速い彼から逃げられるはずがないのだ。
「は、離して!!」
「…………おなまーえ……!!」
ビクッ
好きな人に、初めて名前を呼ばれた。それは甘美な響きではなく、縋るような叫び。思わず身体が硬直した。
ゆっくりと須賀の表情を伺うと、今にも泣き出しそうな顔をしていた。そんな顔しないで、といつものように優しく撫でそうになったが、ハタと気付いて目を伏せた。
(あぁ、そんな顔させてるのは私なのか。)
「私、もうあの屋敷から出るよ。」
「!!」
「もともと1人で生きなきゃいけないところを、敬一郎さんに拾ってもらってそのまま居座っちゃって………。コウにも迷惑かけたし、私、もう出て行くよ。」
「……そんなこと、言わないで………」
うまく声が出せず掠れたような音だった。でも彼の低いボイスはたしかに心地が良い。
「私なんかより、シオリちゃん大切にしなよ。……ずっとずっと、好きだったんでしょ。」
さっき泣き切ったと思ったのに、再び目に涙が浮かぶ。それを悟らせまいとして須賀とは反対の方向を向いた。
「……違う。オレは、おなまーえ、のことが好き……」
「!!………またそうやって私を喜ばせて、なにが目的?家政婦?稼ぎ頭?」
「そんなんじゃない!」
掴まれていた腕をぐいっと引かれた。
一瞬なにが起きたのかわからなかった。
「ずっとずっと、おなまーえに助けられて生きてた。」
状況を理解したのは自らの体に巻きつく腕にそっと触れた時。おなまーえは背中から抱きつかれていた。
「迷惑、かけてたのは、オレの方。オレは、おなまーえを、大切にしたい。」
「…………」
「おなまーえのことが………ずっとずっと、好き。」
おなまーえの目が大きく開かれた。
「いま、なんて……」
腕をそっとほどき、須賀と向き合うと耳まで真っ赤にした、愛しい彼の姿がそこにあった。
「ほんとに?……ほんとう?」
「…………うん」
彼は短く答えると顔をうつむかせてしまった。
おなまーえはたまらず須賀に抱きついた。彼は一歩下がってそれを受け止める。
「私も……私も!あなたのことが、好き!!」
happy end fin...