第5章 ジェイド国
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風呂からあがり、新しく用意してくれたドレスを着てサクラの部屋に行くと、みんなが集まっていた。黒鋼にも小狼にもさっき説教されたから、もう何も言われることはない。
「そういえば、サクラちゃん一体誰と話してたんだろー?先生サクラちゃんにも催眠術かけてた?」
「いいえ…」
「じゃあ羽根の力ー?」
「ソレだったらモコナ分かったはずだよ」
モコナも分からないと首を傾げた。
「サクラ姫が見たのはエメロード姫の霊のようなものかもしれません」
「霊?」
「はい」
「お、おばけ!?」
「あははー、おなまーえちゃん怖がりさんだもんね」
怯えた顔をしたおなまーえの頭をファイが撫でる。
「サクラ姫は小さい頃から、死んだ筈の人や生き物を視たり話す事が出来たそうです」
「玖楼国の人ってみんなそうなのー?」
「いいえ。おれが知る限り今は神官様とサクラ姫だけです」
「小狼君はー?」
彼はふるるると首を横に振った。
「黒るーは?」
「んなもん視えねぇ」
「おなまーえちゃんはこんな感じだし、オレもそっちの力はないなぁ」
「幽霊だったら、モコナ視えないし感じない。幽霊とか視えるのは、黒くて青いお耳飾りのモコナなの」
「なんかいたな、黒い饅頭みたいなのが。役に立たねぇな、白饅頭は」
「モコナ頑張ったもん!」
「そうですよ。聞けば大活躍だったそうじゃないですか!」
モコナとおなまーえは黒鋼をぽかぽかと叩いた。すっかり元気になったおなまーえにファイは安堵した表情をした。
「叩くんじゃねぇ!」
「わー!黒鋼さんが乱暴するー!」
「るせぇ!だれがてめぇみたいな小娘襲うか!」
「黒ぷー、デリカシーないー」
堪忍袋の尾が切れた黒鋼はうらぁ!と枕を投げつけてきた。おなまーえはすかさず避けて、近くにあった枕をひっつかみ投げ返す。
――ボフン
枕は黒鋼の顔に命中した。
「あ。当たった」
「なんでこんな時だけ動き早えんだよ!」
「きゃー!黒鋼怒ったー!」
モコナと黒鋼とおなまーえ、時々ファイによる枕投げ合戦が始まった。羽毛が舞い、賑やかな声が窓の外にも漏れる。まるで修学旅行のようで、先ほどまで悩んでいたことも忘れて笑った。
「サクラが起きたー!」
枕投げに終止符を打つように、モコナが口を開いた。
「大丈夫ですか!?」
小狼が駆け寄る。
「ずっと、誰かが視てる…って、どういう事…?」
「姫?」
「もう一度、エメロード姫に会わなきゃ…!」
サクラの切羽詰まった顔を見て、一行はもう一度城の周りに行くことになった。病み上がったばかりのおなまーえも、非常に不本意ながらそれに付き合う。
「だめ、エメロード姫どこにもいない…」
真っ白な新雪と不気味な木々が生茂る中を散策する。サクラは一生懸命に走り回ってエメロード姫の霊を探しているが、どうやら見つからないようだ。
「前に侑子言ってた」
モコナが眉間にしわを寄せながら話し出した。
「心配なことがなくなったら霊はどこかへ行くんだって」
「成仏するってことか」
「よっぽど子供達の事が心配だったんだねぇ。金の髪のお姫様」
「優しい人だったんですね」
ファイが胸に手を当てて黙祷をする。おなまーえもそれに倣い、両手を合わせて静かにエメロード姫を追悼した。
「けど、エメロード姫がサクラちゃんに教えてくれた『誰かがずっと視ている』っていうのはどういう意味なんだろー」
「もう一つ、分からなかった事があるんです。カイル先生はどうしてあの城の地下に羽根があると知ったんでしょう」
「本にあったとかじゃねぇのか」
「グロサムさんに聞きました。羽根がエメロード姫の亡くなった後、どこにあるか書かれた本はないようです。それにそんな伝承もないと」
「この旅にちょっかいかけてるのがいるって事かー」
「『誰か』が」
小狼が睨み付けるように空を見上げた。
「じゃあカイルはそのちょっかい出している人の手下だったってこと?」
「そういうことだな」
もしそうだとするならば、今後旅をしていく中でまた今回のように危険な目に遭う可能性がある。決して安全な旅ではないことは今更だ。
――バサァッ
モコナが羽を広げた。移動の時間だ。
足元に風が舞う。
「あ…」
遠くの方にグロサムたちの姿が見えた気がした。
《第5章 終》
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