2戦目
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夏希に呼ばれて、お風呂に入る。
おなまーえが、恋心を自覚したあのお風呂。
面倒見の良い姉とは違い、おなまーえはテキパキと体を洗い、サクサクと上がった。
寝てる時に足を冷やしたくないから丈の長いパジャマを履いて、その分上半身はキャミソール一枚というアンバランスな格好。
「寒くないの?」
「平気。むしろこれでちょうどいい」
おなまーえは飲み物と、アイスキャンディーを二本持って佳主馬の元に向かった。
髪くらいは乾かせばよかったかもしれないと思いながら、納屋に足を踏み入れる。
「もう上がったの?」
「ちびっ子がいたから落ち着かなくて」
嘘。
早く帰って来たかったから。
「ふーん」
「はい、アイス」
「さんきゅ」
パリッと袋を開けてミルクアイスを口に咥える。
風呂上がりの火照った体にはこれが一番だ。
「ひもちー(気持ちー)」
「食べながら喋るなよ」
「ひーじゃん、ふぇつにふぁれもみれないし」
「なに言ってるかわかんない」
先端が丸くなったアイスをおなまーえは一旦口から外す。
「いーじゃん、別に誰も見てないしって言ったの」
「…はぁ」
再びアイスを咥え、丹念になめとる。
ひんやりするそれと、おなまーえの熱い舌が絡み、時折ポタポタとミルクアイスの雫が垂れそうになる。
その度に奥にアイスを突っ込み、おなまーえはほんの少し苦しそうな顔をしてまたそれを小さな口で咥える。
ちゅぱちゅぱとお行儀の悪い水音が納屋に響く。
「……」
「……」
「…ん…」
「………やっぱダメ」
「なにが?」
「お願いだから普通に食べて」
「はい?」
佳主馬はおなまーえ側の膝を立てるようにして、座り直した。
「普通にって言われても…普通に食べてるじゃん」
「もっと行儀良くして。アイスの食べ方知ってる?」
「お母さんか。いや、お母さんにもアイスの食べ方なんて教えられたことないぞ」
「天然でやってるとしたら、なおタチが悪い」
「はい?」
「そんな風にしなくても食えるだろ」
「だからさっきから何言ってるの?」
「ああ、もう!」
パッとおなまーえの持っていたアイスを奪われた。
まだ半分以上残ってるのに。
「あ、返してよ」
「ダメ。もうおなまーえは棒状のアイスは食べちゃダメ!」
「なんでさ!」
「なんでも!」
「理不尽!」
おなまーえは膝立ちになり、佳主馬にのしかかる。
上に取り上げられたアイスに思い切り手を伸ばすも、ほんの少し向こうの方がリーチが長く届かない。
「か!え!し!て!」
「だめ!」
「食べ方が汚いなら向こうで食べてくるから!」
「もっとだめ!」
「何がしたいのよ!」
あと少しでアイスの持ち手の部分に手が届く。
おなまーえは重心をさらに前に移動させた。
「うわ!」
「ひゃっ」
だがとうとう踏み台にされていた佳主馬がバランスを崩した。
――ドサッ
佳主馬は背中から、おなまーえはそれに覆いかぶさるようにして埃っぽい床に倒れこむ。
「イッ」
「ヒッ、つめた」
「え?」
佳主馬は後頭部を打ったようで痛みに顔を歪めていた。
対しておなまーえは別の理由から顔を歪めている。
先ほどまで自分が食べていたアイス。
佳主馬に取り上げられていたそれが、おなまーえの首から胸元にかけてべっとりとついてしまっていた。
かろうじて服の襟にはまだついていないものの、ドロドロに溶けたそれは棒からずり落ち、おなまーえの肌に完全に付着している。
「あちゃー」
「ごめん」
「いや、いいよ、私が倒しちゃったんだし」
元はと言えば佳主馬がアイスを取り上げたのが発端だったが、押し倒してしまったのはおなまーえだ。
そそくさと佳主馬の上から退いて、溶けたアイスがキャミソールにつかないように胸元を引っ張る。
「もう一度お風呂入んなきゃな…」
「でも今誰か入ってるんじゃない?」
「あ、健二さん入ってるかも」
しまった。
実家とは違い、そうやすやすとお風呂に入れないのがこの陣内家のデメリットだ。
そう言っている間にも、アイスはドロドロに溶けておなまーえの肌を侵していく。
ここにはティッシュもタオルもない。
キャミソールが汚れたら、明日の分の寝間着がなくなる。
「どうしよ」
「……ちょっと貸して」
起き上がった佳主馬はぐいっとおなまーえの肩を押した。
何をするのかと思いきや、彼は納屋の扉を片手で閉めて、そこにおなまーえを押し付ける。
ガタンと、扉が声をあげた。
「何を…」
「黙ってて」
そして彼はおなまーえの胸の間に顔を近づけると、一番下まで垂れている白い液体をペロリとなめとった。
「ひっ…」
「すぐ終わらせるから、静かに」
そう言うと彼は再びアイスの液体を舐め上げる。
おなまーえのキャミソールの襟を少し下げて、丁寧に。
「ん…」
「っ…」
「……」
「ふっ…あ…」
舐められた箇所が熱い。
全身がぞわぞわとして震える。
性的快感ってこう言うことを言うのだろうか。
(っ、ダメ。佳主馬は私のピンチを助けてくれてるだけ。他意はない…他意はない…!)
鎖骨から首の筋にかけて、小刻みに舌を動かして佳主馬は掃除していく。
それに快感を得てはいけないと理性は言っているのに、どうにも体が言うことを聞かない。
「ん、くっ…」
ざらついた舌がおなまーえの日焼けしていない肌をなぞっていく。
「あっ…」
「声出さないで」
慌てて口下を手で押さえる。
「っ…っ…」
あげたくもない変な声が出てくる。
知らない。
こんな感覚、知らない。
はやく終わって欲しいと思う反面、快楽にこのまま溺れてしまいたいとも思う。
いつのまにかおなまーえの肌についていたアイスは全て舐め取られ、冷たさはなくなっていた。
チュウというリップ音を立てて、佳主馬の唇はようやくおなまーえの首筋から離れる。
「…ハッ」
「っ…」
互いに息が上がり、頬が紅潮している。
これはあれだ。
夕食のとき万作叔父さんが言っていた、よろしくやることの前段とほぼ変わらないのではないか?
保健体育の授業で少しだけやった赤ちゃんの作り方が脳裏に蘇る。
「ねぇ、おなまーえ」
「ん…」
はやくも息を整えた佳主馬が、じぃっとこちらを見つめてくる。
「嫌だったら嫌って言って」
「え…」
そう言ってだんだんと顔が近づいてくる。
おなまーえの視界には彼の顔がいっぱいに映る。
佳主馬はまだお風呂に入っていない。
1日分の汗と彼自身の香りがおなまーえの鼻をくすぐり、理性という脆い鎖を溶かしていく。
何が起きているかなんて今の頭じゃ何も考えられない。
でも拒否するつもりは一切ない。
ムードなんてものはない。
おなまーえも佳主馬も目を見開いている。
――夏のせいだ。
その柔らかい唇がおなまーえのそれと重なるまでは、実際のところは数秒だったものの、まるで何年も経ったかのように長く感じられた。
ふわりと唇に柔らかいものが押し当てられる。
何度でも。
角度を変えて。
思い出したかのように目を瞑り、時折薄目を開ければ、夢中な佳主馬の顔が見えた。
(あ…)
どぷりと体の奥から何かが出てくる。
――好きだ。
佳主馬のことが好き。
向こうはどんな気持ちでこの行為に及んでいるのかはわからないけれど、少なくともおなまーえは胸にいっぱいの幸せを感じていた。
「っ」
「はぁ」
二人の唇がようやく離れる。
唾液でてらてらと濡れた唇はひどく官能的だった。
視線と視線が絡み合う。
先ほどいくらでも見ていいと言われた幼い顔が、大人の表情をしていた。
「……」
「……」
なんで声をかけたらいいかわからない。
無言の空間に思わず視線を逸らした。
「佳主馬ー!お風呂空いたわよー!」
「「!!!」」
――ビクッ
これからどうなるんだろう、どうされるんだろうと期待していたところに、聖美が佳主馬を呼ぶ声が聞こえてきた。
二人は我に帰ったように大きく肩をビクつかせ、慌てて離れる。
「……」
「……」
「……行ってくる」
「行ってらっしゃい」
ガラッと軽い音を立てて納屋の扉を開ける。
「……」
「……」
「……」
「あのさ」
沈黙を破ったのはおなまーえの方だった。
「夜。みんなが寝た頃。もう一回ここにきてもいい?」
「!」
それが何を意味するのか。
中学一年生でわからない年齢ではなかった。
「……勝手にすれば」
目を見開いた佳主馬はツンとした態度を見せて、スタスタと納屋を去っていく。
「……」
彼に舐められた首と唇をそっと指でなぞる。
下半身が湿っぽくて仕方ない。
「……あぁ」
おなまーえはバフンと座布団に頭を埋めて、火照った体をゆっくりと冷ました。
佳主馬用に持ってきたアイスは、袋の中でドロドロに溶けてしまった。