8戦目
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「佳主馬!!」
「!」
解体作業に没頭していた侘助が声を張った。
「奴の守備力を0にした!奴を叩け!!」
「!」
佳主馬はパソコンをすぐに起動する。
おなまーえもコントローラーを手に取った。
ボロボロになった佳主馬は、頼彦達によって手当をされていた。
包帯を巻かれ、あちこちには切り傷が残っている。
「そら、行ってこい!」
躊躇していたカズマを、万助のアバターが引き上げ、上空で待機している彼女へとバトンタッチした。
シルエットだけでわかる。
カズマと揃いの、ちょっと小柄な白いウサギのアバター。
淡い色のパーカーが風に吹かれて揺れている。
「随分と男前な顔になったね」
キングカズマは顔面に大きな傷を負っていた。
それさえも、おなまーえにとってはかっこよく見えてしまう。
カズマの腕を握り、おなまーえはそれを力一杯空に向かって放つ。
「おなまーえ!」
「世界を救って、カズマ。だって――」
幼い頃の会話が蘇る。
初めて一緒にお揃いのアバターを作った日のことを。
『作るならかわいいのがいい』
『可愛さは求めてないんだけど…』
『佳主馬、ウサギにしよう、ウサギ』
『僕の話聞いてる…?』
『服の色は赤がいいかな』
『なんで赤?』
『だってさ、赤い色っていうのは――』
幼いおなまーえと、14歳のおなまーえが被る。
彼女は昔と変わらない笑顔で、カズマを送り出す。
「『だってさ、赤い色っていうのは、ヒーローの色なんだから』」
「!」
戦隊モノも、少年漫画の主人公も、昔からイメージカラーは赤だった。
赤は情熱の証。
赤は正義の色。
託されたのだ。
世界を救えと。
任されたのだ。
ラブマシーンを倒せと。
『残り1分!!』
極限の状態の中で、健二が3度目の解錠を行なった。
カズマの燃えるように紅い目が、セキュリティルームにいるラブマシーンの姿を捉えた。
「邪魔するなーー!!!」
「よろしくお願いしまあああああす!!!」
カズマがラブマシーンを破壊すると同時に、健二がエンターキーを力一杯に押した。
「「「「っ!」」」」
あたり一帯に凄まじい轟音が迫る。まるで大地を抉り取る巨人のような重さ。
大気が震え、隕石とほぼ同じものが大気圏を突き抜ける。
(しまった)
気を取られていて自分の身を守ることを忘れていた。
今から伏せたって、おなまーえの細い体では吹き飛ばされてしまうだろう。
やがて音が聞こえなくなる。
その瞬間、彼女は死を覚悟した。
「おなまーえ!!」
地面に伏せるのが遅れたおなまーえの体が、浅黒く細い腕に包まれた。
――ヒュッ
――ドォォオオォン
鼓膜をつんざかんばかりの爆発音が響く。
爆風が建物の屋根をかっさらい、窓を吹き壊す。
植木は根っこからさらわれ、池の水は全て飛ばされた。
「「「……」」」
生きているのか。
この柔らかい感触は、生きていることの証なのか。
おなまーえはゆっくりと、自分の上に乗りかかる佳主馬を退かした。
状況理解が追いつかない大人と違って、子供達は無邪気に庭に飛び出す。
「温泉だ」
「温泉だ」
「温泉出たー!」
あらわしのGPS補正は成功した。
ほんの僅かな軌道の差で、全員は一命をとりとめた。
あらわしの墜落した場所からは、なんと不思議なことに温泉が湧き出てきた。