7戦目
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OZの画面には、カズマに対する助けを乞うコメントが、収まりきらないほどに溢れている。
『助けて!キングカズマ!』
その一言がどれだけ彼を窮地に追いやっているだろうか。
たかだか14歳の少年に、どうして世界を救うことができよう。
「佳主馬…?」
「っ!」
佳主馬は母に名を呼ばれ、勢いよく振り返る。
聖美だけではない。
一家の全員が、この場に集結していた。
「何が、起こっているの…?それってゲームの中のことでしょ…?ねっ、そうよね?」
怯えた目でそう問いかけてくる母。
「そうだよ」と返せれば、どれだけ良かったことだろうか。
「っっ!!!」
守らなくては。
母と妹を。
自分の大切な人たちを。
佳主馬はおなまーえの腕を払い、弾かれたようにキーボードにしがみついた。
作戦や戦略なんてものはない。
がむしゃらに、ただなんとかしなければという気持ちだけで、彼はキングカズマを動かす。
もうHPなんてほとんど残っていないだろうに。
『無茶だキング!敵いっこない!』
「うるさい!!」
佐久間の制止も耳に貸さず、カズマは一直線にラブマシーンに向かって飛んでいく。
その姿は、生身で何千という兵力に立ち向かうことと同義だった。
巨大なラブマシーンが片手を差し出す。
そこから溢れ出る無数のアバターたちが、カズマに向かって飛び出していった。
「っっ!!」
みるみるうちに、カズマはアバターたちに揉まれて見えなくなっていく。
数が多すぎる。
最早黒い点と化したアバターたちは、カズマを蹂躙すると元いた場所へと帰っていく。
指先一つで、カズマは敗北した。
「ぅ…うぅ…!!」
キングカズマは動かない。
ただただ力なく浮遊していた。
どんなに佳主馬が必死にキーボードを叩いても、ピクリとも動かない。
「ああ…ああっ…!!」
動けとどんなに命令しても、アバターは一切動くことがなかった。
――バンッ
佳主馬はキーボードに手を叩きつける。
どう操作しても、カズマが再び立ち上がることはなかった。
無気力に垂れ下がったウサギは、ラブマシーンによって取り込まれる。
二人の思い出のウサギはラブマシーンによって奪われた。
もうなすすべはなかった。
「う…うぅ…」
ポタリと雫が畳に溢れる。
「おばあちゃん、ごめん。母さんを…妹を…守れなかった…」
何がキングだ。
何が王者だ。
誰も守れていない。
何も守っていない。
母も、これから生まれる妹も、共に歩んでいきたいと願ったおなまーえも。
誰も守れなかった。
「っ…」
「うぅ…あぁ…」
子どものように泣きじゃくる佳主馬に、おなまーえはかける言葉が見当たらなかった。
もっと気が効く女だったら、彼を励ます良い言葉が思いついたのだろうか。
おなまーえはそっと彼の右手に両の手を添える。
佳主馬の師匠である万助も、ただ黙って彼の頭を撫でた。
「あと何か出来るとすれば…」
「侘助だけだ。だが…」
「…帰ってくるわけない、か」
ラブマシーンの生みの親であれば、その解体方法も思いついたかもしれない。
だが、あんな喧嘩別れのように追い出した侘助が、陣内家に帰ってくるとは思えなかった。
皆うつむき、諦めたように目を伏せる。
それは、完全なる敗北だった。
【続】