7戦目
夢小説設定
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カズマは指定されたポイント、まるで陣内家の門構のようなエリアに入り込む。
おなまーえのアバターを吸収したラブマシーンもそれに続く。
待っていましたとばかりにカズマは門の扉を締め切った。
この門こそが、陣内家に今あるスーパーコンピューターである。
「かかった」
「佐久間!」
『予定通り!』
東京にいる佐久間がプログラムを動かす。
背後にあるスーパーコンピューターが音を立てて起動したのを、みな感じた。
――バタン!
――バタン!
――バタン!
ラブマシーンが出れないように、次々に門の扉が閉まっていく。
スーパーコンピューターのありとあらゆる外部接続をクローズしているのだ。
みるみるうちに、OZの一角が城下の門のように変わっていく。
その様子はさながら九龍城の如し。
「これで最後…!」
カズマは最後の扉を締め切る。
ようやく、一同はラブマシーンを閉じ込めることに成功した。
「頼彦さんたち、出番です!」
次の作戦は町内会と商工会に栄の訃報を知らせに行っていた頼彦、克彦、邦彦の出番だ。
彼らは消防用のポンプをはめ、池から水を組み上げる。
――ドドドドドッ
水が注ぎ込まれる音が響く。
これでラブマシーンも身動きができなくなるはずだ。
事実、抵抗していた奴は、水が注ぎ込まれた瞬間大人しくなった。
作戦が上手くいき、全員の顔が晴れやかになった。
「よかった…」
「おなまーえ」
「なに、佳主馬」
「っ…」
佳主馬は、コントローラーを手放さないおなまーえを見て、唇を噛みしめる。
「……」
「気にしないで。私が勝手にやったことだから。アカウントなんて、また一から作ればいいもの」
もう一度ランキング入りするのは大変かもしれないけど。
けれど、アカウント一つの犠牲で奴を閉じ込められたのであれば十分な成果だろう。
「……ごめん」
「謝らないで。ほら、今は喜ぶときでしょう?」
いつのまにか皆の視線がこちらに集まっていた。
注目されていることを察知し、おなまーえは周りにもっと喜ぶように呼びかける。
「そうだね」
「よくやった、二人とも」
みな手を叩いて喜び、祝福の言葉かけてくる。
カズマの役に立てた。
それだけで、おなまーえは満足だった。
『これで奴も袋のネズミだ。後は煮ようが焼こうが…』
だが喜ぶのも束の間。
――プーップーップーッ
「え?」
次から次へと警告のサインが鳴り響く。
止まらぬエラーランプに、一同は困惑する。
「なんで?ステージが変だよ?」
健二の言葉に、画面を覗き込む。
「どうなってんだこれ!?」
城が崩れ始めていた。
瓦が剥げて、扉が軋む。
どう見たって異常事態だ。
『っ!太助さん、後ろ!!』
何かを感じ取った佐久間が、太助に後方を確認するように指示した。
「え?後ろ?」
一同の背後にあるものはスーパーコンピューターだ。
太助は訝しげに背後の襖を開けた。
その瞬間、灼けつくような熱風が一同に襲いかかった。
「うわあああああ!!あちっ!!」
「叔父さん、まさか熱暴走!?」
「どっちかっていうとオーバーヒートの方が正しい!!」
パソコン等のコンピュータにおいて、相応の冷却ができていなかった場合、内部の温度が高まり、ソフトウェアの異常動作や異常終了、最悪の場合OSのハングアップ(フリーズ)や再起動を引き起こす場合がある。
今回のケースは異常動作。
数時間前、熱暴走なんてされたらたまらないと言ったのはおなまーえだった。
なんでこういう時に限って嫌な予感というものは的中するのだろうか。
「ここにあった氷は!?あんなに沢山あったのに…!?」
同じく数時間前、万助の船から下ろした大量の氷をタライに入れて、このコンピューターの周りに配置したはずだ。
15個近く配置していた氷は、たらいのみが2.3個ほどしか残っていなかった。
「それ、翔太兄が持ってったよ」
「何!?」
真緒の告発により、皆が焦りの表情を浮かべる。
一度オーバーヒートしたものはそう簡単には戻せない。
画面に目を移すと、城が崩れ落ちる。
内側から巨大な黒い影が姿を現した。
逃げ惑うアバターたち。
カズマはただ一人立ち尽くして、奴の姿に目が釘付けにされていた。
「まさか、これ全部アバター!?」
『ああ。その数…4億以上!?』
「バカなの!?」
規格外の数字に思わずおなまーえも取り乱す。
巨大化したラブマシーンの体は、よく見ると一つ一つが奪われたアバターだった。
きっとおなまーえのアバターもこの中に紛れている。
OZいちを誇る中央のタワーを優に超えるほどの大きさ。
圧倒的な力を前に、佳主馬は指を動かすことができなかった。
ラブマシーンの邪悪な手が、ゆっくりとカズマに向かって迫ってくる。
「佳主馬くん逃げて!佳主馬くん!」
「佳主馬!!」
「っ…」
普段の彼ならそんな単調な攻撃、簡単に避けられたはずだ。
だがカズマは動けなかった。
動かない的を捉えるのは簡単だ。
ラブマシーンは大きな手でカズマを掴むと、そのまま勢いに任せて壁に叩きつけた。
「っ!」
逃げられなかった。
逃げたところで、こいつを倒す算段が何一つ思い浮かばなかった。
佳主馬は悔しさに肩を震わす。