漆
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その後、善逸と伊之助はやる気満々といった顔で戻ってきた。
善逸は体を揉みほぐされている中、激痛が走っても笑い続けた。
只者ではなかった。
あの伊之助ですら涙が出ていたというのに。
薬湯ぶっかけ反射訓練ではアオイに悠々と勝ち、女の子にお茶をぶっかけたりなどしないとカッコつけてはみたものの、先の発言は道場中に筒抜けで、女性陣からはかなり白い目で見られていた。
鬼ごっこでも勝ち星を挙げていたが、捕まえる際にアオイに抱きつくため、全身フルボッコに殴られていた。
それでもやっぱり彼は笑顔であった。
伊之助も元来の負けず嫌いを発揮し、二人は着実に体力を回復していった。
炭治郎は真面目な性格だから、どんなに辛くとも根を上げずにコツコツと努力していた。
おなまーえは痛みというリミットがないのをいいことに、毎日他の人の倍の訓練をこなしていた。
たまにしのぶさんストップがかかるものの、伊之助・善逸に引けを取らない回復ぶりであった。
だが四人が順調だったのはここまでだった。
どんなに頑張ってもカナヲには勝てない。
誰も彼女の湯飲みを抑えることはできないし、捕まえることができない。
二人が復帰してから一週間経ったものの、相変わらず四人ともカナヲに負け続けていた。
「紋逸と骨女が来ても、結局俺たちはずぶ濡れで一日を終えたな」
「骨女って私のこと?」
「もう改名しようかな、紋逸にさ」
「ねぇ無視しないで。怒らないからもう一回言ってみ?」
薬湯で全身ずぶ濡れ、異臭を放つ四人。
汗もかいていて全身が気持ち悪い。
いや、確かに触覚はほぼないけれども、でもさすがにこれは気持ち悪い。
おなまーえは耐えきれず、風呂場にむかって駆け出す。
「じゃ、私先に風呂もらうから」
「俺も一緒に入るー!!」
「バカ言ってんじゃないわよ」
こちらに駆け寄ろうとする善逸に向かっておなまーえは草履をぶん投げる。
――スコーン
「へぐっ!」
倒れた善逸をそのままに、おなまーえは風呂に飛び込む。
彼女はどうしても一人になりたかった。
「……」
ここならば人が来ることはないだろう。
シャワーを全開にして、おなまーえは壁にダンっと拳をぶつけた。
本日の反省会、スタートである。
「…悔しい」
悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい。
悔しい。
カナヲに敵わないことがとてつもなく悔しい。
同じ時に隊員になったはずなのに、この差は何なのだろう。
強くなりたい。
カナヲにできて、自分にできないはずがないんだ。
女でも絶対に強くなれることを、私が証明しなくてはならない。
『女だからなぁ…』
これが自分を育ててくれた祖父の口癖だった。
女だから、力がない。
女だから、体力がない。
女だから、スピードがない。
女だから、センスがない。
だめなんだ。
女だからと言われても、私は甲の位に行かなくちゃ。
――だって私は、鬼殺隊だった父を殺してしまっているのだから。
【続】