漆
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
入院生活はまぁまぁ楽しくやっていけた。
各々入院理由は様々だった。
竈門炭治郎は顔面及び腕足に切創、擦過傷多数、および全身筋肉痛。
重ねて肉離れ、下顎打撲。
我妻善逸は右腕右足、蜘蛛化による縮み痺れ、左腕の痙攣。
猪頭の嘴平伊之助は、喉頭及び声帯の圧挫傷。
鬼の禰豆子は寝不足。
そしてみょーじおなまーえは最も重要で、蜘蛛化による全手足の縮み及び麻痺。
禰豆子は寝まくり。
「Zzz…」
「禰豆子はよく寝るなぁ」
炭治郎は痛みに耐えまくり。
「痛いいい…痛いいいい…」
「ムー…」
善逸は1人騒ぎまくった。
「ねぇ俺薬飲んだっけ!?ねぇ誰か見てた!?ねぇねぇねぇ!?」
「うるさい。心配なら私の分も飲んでくれてもいいよ。」
痛みを感じないからとベットを抜け出そうとするおなまーえを引き止めまくり。
「放してってば!もう痛くないって言ってるでしょ!」
「いや絶対一番重症だからね!?ってかおなまーえの場合痛み感じてないだけで筋肉めっちゃキリキリ言ってるからね!?」
落ち込みまくる伊之助をベットの両サイドから励ましまくる。
「ヨワクッテ、ゴメンネ…」
「そんなことないぞ伊之助!頑張れ伊之助!」
「かっこいいぞ伊之助!!」
「やかましい…」
そんな騒がしい毎日だった。
ある日のこと。
とうとう4人に、この屋敷の主人・胡蝶しのぶから直々に、次なる訓練を言い渡された。
機能回復訓練。
体力を戻すために、この家の人々が色々と稽古をつけてくれるらしい。
機能回復訓練というものはやったことがないので、おなまーえは興味津々で二つ返事で了承した。
だが訓練に参加できるようになったのはひと月後であった。
縮んだ手足がほとんど元の大きさに戻るまでは絶対安静。
安静って嫌なんだよな。
暇だし、退屈だし。
痛みなんてないから普通に動けるのに。
その退屈な日々も今日でおさらば。
本日からみょーじおなまーえと我妻善逸もこの機能回復訓練に参加するのである。
先に参加していた炭治郎と伊之助はいつもぐったりとした様子で病室に戻ってきた。
果たしてどんな厳しい訓練を課せられるのか、おなまーえは楽しみにしていたし、善逸は憂鬱な気持ちでこの日を迎えたのである。
訓練場は立派な道場であった。
「善逸さんとおなまーえさんは今日から訓練参加ですので、ご説明させていただきますね」
初対面以来、少し苦手意識を抱いているアオイから訓練についての説明を受ける。
「まずあちら。寝たきりで硬くなった体をあの子たちがほぐします。」
彼女の紹介に視線を動かすと、3人の女の子たちがキリッとした顔でこちらを見ていた。
布団が3枚敷かれていて、あそこで柔軟体操を行うらしい。
「それから反射訓練。湯飲みの中には薬湯が入っています。」
続いて視線を動かすと、最終選別にいた少女がニコニコとして座っていた。
彼女の正面にあるのはたくさんの湯飲み茶わん。
簡単に言えば、お互いに薬湯をかけあうゲームである。
湯飲みを持ち上げる前に、相手からその湯飲みを抑えられた場合は動かすことはできないというルールで、反射神経を鍛えるものらしい。
「最後は全身訓練です。端的に言えば鬼ごっこですね。私アオイとあちらのカナヲがお相手です。」
安全で、なおかつよく計算された訓練だ。
やることもシンプルでわかりやすい。
だが善逸は不服そうにスッと手を挙げた。
「すみません、ちょっといいですか?」
「何かわからないことでも?」
「いやちょっと。来い、野郎二人。」
「?」
「行かねーヨ」
おなまーえはキョロキョロと周りを見回す。
来いと言われたのは野郎二人だから、自分は関係ないのだろうか。
「いいから来いって言ってんだろうがァァァ!!来いコラァ!クソどもが!!ゴミどもが!!」
善逸は炭治郎と伊之助の首根っこを掴み、ずるずると引きずって道場を出て行った。
おなまーえは善逸の不審な行動を横目に、早速解しの訓練をお願いする。
「…なんなんでしょうか?」
「放っておいていいと思います。あ、なほちゃんもっとそこ強くしても大丈夫です。」
「はい!じゃあ遠慮なく行きますね!」
痛覚を感じないおなまーえは一切容赦なく体をほぐしてもらう。
入院生活で完全に鈍ってしまっているせいで、体の可動域が随分と狭くなってしまっている。
一刻でも早く元に戻さなければ。
「天国にいたのに地獄にいたような顔してんじゃねぇぇぇぇ!!!」
外からは善逸の叫び声が聞こえる。
「女の子と毎日キャッキャキャッキャしてただけのくせに何をやつれた顔してみせたんだよ。土下座して謝れよ!切腹しろ!!」
「何てこと言うんだ!」
「だまれこの堅物デコ真面目が!黙って聞け!!女の子に触れるんだぞ!体揉んでもらえて!湯飲みで遊んでいるときは手を!鬼ごっこの時は体触れるだろうがぁぁ!!」
「……はぁ」
ここ一ヶ月でわかったことがある。
善逸はどうしようもない女好きだ。
おなまーえだけではなく、他の女の子にも結婚してくれと頼み込んでいたらしい。
また炭治郎の妹の禰豆子にゾッコンで、なにかとあの桐の箱から離れない。
(……)
おなまーえは体をほぐしてもらいながら考え事をする。
「女の子1人につきおっぱい二つ、お尻二つ、太もも二つついてんだよ!すれ違えばいい匂いがするし、見てるだけでも楽しいじゃろがい!!」
「わけわかんねぇコト言ってんじゃネーヨ!自分より体小さいやつに負けると心折れるんダヨ!」
「やだ可哀想!伊之助女の子と仲良くしたコトないんだろ!山育ちだもんね!遅れてるはずだわ!あー可哀想!!」
相変わらず外は騒がしい。
伊之助と善逸が言い争いをしているようだ。
別に彼はみょーじおなまーえのことを好きになったわけじゃなくて、女の子だから声をかけたし結婚を申し込んできた。
いわゆる条件反射だったのだろう。
そりゃそうだ。
こんな痛みも快楽も感じないような体の女のことなんて、好きになるはずもないもの。
胸もないし、尻は柔らかくないし、太ももは筋肉質だし。
いい匂いもしないし、可愛さのかけらもないし。
全く、何を自惚れていたのか。
(………自惚れってなによ)
これじゃあまるで私が善逸のことを好きみたいに聞こえるじゃないか。
そんなことは一切ない。
断じてない。
むしろ余計なちょっかいを出されずに良かったと思うべきだ。
「すみちゃん、そこ容赦なく押して」
「え、でもこれ以上は…」
「大丈夫、痛くないから。もう余計なこと考えられないくらいにしっかり、念入りに、親の仇かってくらい強く押して。」
おなまーえはただでさえきつい解しをさらに強くするように要求する。
余計なことを考えないように。
体力の回復に専念するように。