#02
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「死体は既に初動でドローンが処理したあとでして。こちらが記録だそうです。」
記録を渡され、早速ホログラムを投影する。
(うわぁ…)
おなまーえは思わず顔をそらした。
被害者ははドローンに生きたまま解体された状態だった。
誰かに恨まれることもなく、サイコパスも至って良好。
やはり事故だと主張する主任に、征陸が切り込む。
「しかしこれで3人目となると、流石に多すぎやしませんかね?」
「…先ほども申し上げた通り、危険の多い現場なのです。管理体制についての批判であれば承りますが、そちらは然るべき筋を通してお願いしたいですね。」
危険危険危険。
彼の口からはそればっかり。
職員が亡くなったというのに、悲しむそぶりすら見せない。
何かある。
ここにいる全員がそれを感じ取っていた。
****
ホログラムによる現場検証の結果データを本部に送るため、おなまーえと朱、そして征陸と縢は一度車に戻っていた。
「今頃伸元はここの主任を相手に腹芸の真っ最中だろうさ。難儀なこった。」
「ほんとは私も行くべきなんですけどね…」
「腹芸って、どういうことですか?」
「朱ちゃんも資料みたっしょ」
おなまーえは先ほど車の中で見せた資料をもう一度常守に見せる。
「ここってば経済省管轄の官営なんよ」
「ただ犯罪者を追いかけるのが監視官の仕事じゃない。むしろこういう交渉とか面倒なことやるのが私達の仕事なんだよ。」
狩場を整えて、そこまで猟犬を連れてくるのが監視官。
犯罪者を追いかけて仕留めるのが執行官。
「ここが国土交通省の管轄だったら、みょーじももコネを使ってもう少しうまく立ち回れるだろうがな」
「国土交通省?」
「あはは、今その話はいいじゃないですか、征陸さん」
婚約者の話だ。
彼は国土交通省に勤めるそれなりに上位の人間なので、一度捜査に協力してもらったことがある。
よって面識はなくとも、"そういう恋人がいる"ということは周知の事実になっている。
だが隠しているわけではないが、年が近い常守に知られるのは、なんとなくまだ先にしておきたかった。
「今は他の省庁の管轄のお話でしょ」
おなまーえは苦笑いして話を転換させた。
ちらりと縢を確認すると、案外大したことのない顔で大欠伸をしていた。
それはそれで少し悲しかったりするのは、おなまーえの自業自得だ。
「特にお役所は縄張りの利益を守ろうとするからね。余計なちょっかい出されて工場の生産効率を落としたくはないよね。」
「人の命が失われたのに?」
「だからこそ向こうは一刻も早く事故死で決着をつけたいんだ」
「でも実際ここのスキャナーは危険人物を検知してないんですよね?」
「ま、でも所詮据え置きタイプだし…」
「そうだな。据え置きのスキャナーで計測できるのは、せいぜいが色相判定によるストレス傾向ぐらいなもんだ。」
サイマスティックスキャンのデータをもとに精神構造を割り出し、職業適性や犯罪係数まで診断するためには、シビュラシステムによる解析が必要になる。
そしてドミネーターは、シビュラが常時抱えている演算待ちのタスク全てに優先して、割り込み処理を要請できる。
「だから銃口を向けた途端タイムラグなしで相手の心を丸裸にできるのさ」
征陸の無駄のない解説に、おなまーえもうんうんと頷く。
「ところが…」
――ドンッ
ドミネーターを運ばせていたドローンを征陸が強く殴った。
「抜いてみな」
「……」
常守朱は恐る恐るドミネーターを引っこ抜いた。
「……あっ」
通信エラーが出たのだろう。
そう、ここはあらゆる電波が遮断されている陸の孤島。
オフラインの要塞。
故に、以下に優れた機能であろうと電波である限り、この施設の中ではシビュラシステムの支援が受けられない。
「そうなるとドミネーターは鉄くずも同然だ。文鎮のかわりにしかならん。」
「殴るにしても、ちょっと大きすぎますしねぇ」
おなまーえも無駄だとはわかっていてもドミネーターを掴む。
「本当のところ、どうなんでしょう?」
「事故死の可能性ってか?ハッ、笑わないようにするのが大変だった。」
「ですよね~」
「え?」
「あの現場みて直感できなきゃデカじゃねえよ。執行官なら全員ピンときたはずだ。殺しだよ、殺し。」
さすが執行官。
おなまーえですら半信半疑だったところをはっきりと殺人と断定した。
「動機はなんでしょうね~?」
「結構張り切って解体してましたけど」
「仏のあり様から直感で言わせてもらえば怨恨だな」
「なるほど…」
「人様に対する恨みつらみってのは時に大きな原動力になるからな」
「瞬発性がある分、何しでかすかわかったもんじゃないしね。勉強になった?みょーじ監視官様。」
縢が頭の上で手を組んでニマニマと笑う。
「それくらいわかるわよ、バ縢」
いじわる。
私だって、かつてそういう勉強をしていたんだから。