#02
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「被害者は塩山大輔、29歳。八王子のドローン工場勤務。午前四時ちょうどに死体が発見された。」
「テスト中のドローンによって体をバラバラにされたみたい。生きたまま、ね。」
宜野座の運転する車の中で、簡単に情報共有を行う。
高速道路を規定通り時速70キロ。
優等生の安全運転だ。
おなまーえは後部座席から身を乗り出す形で話に参加していた。
「…事故でしょうか」
「問題の工場で死傷者が出るのはこの1年間で既に3回目だそうだ」
「流石にちょーっと頻度高いですよね」
執行官でないおなまーえと宜野座も胡散臭さを感じる。
現場はドローン工場唯一の有人区画で、最終点検を行なっているエリア。
たった50人で毎月1000台以上のドローンを検査するためには、寮体制でフルタイムシフトを組む必要がある。
「その検査前のドローンに誤作動を誘発するプログラムを仕込めば、事故を装った犯行は十分に可能だ」
「ということは…」
「殺人の可能性もある」
そろそろ目的地が近い。
都心から離れた八王子の工場で働く人々は、一体どんな気持ちを抱いているのだろうか。
シュビラのご託宣を受け入れ、24時間体制の工場に勤務する心意気やいかに。
「あ、でもたった50人しかいない施設なら、全員の犯罪係数をチェックすれば…」
「…事はそう簡単な話じゃなくてな」
「…ま、そうですよねぇ」
「…え?」
おなまーえは施設紹介の『経済省管轄』という小さい文字を見て、やれやれと首を振った。
****
電気自動車が音もなく停止する。
かつてはガソリンという化石燃料を使って車を走らせていたらしいが、昨今ではそんな不便なもの、マニアくらいしか持っていない。
今はほとんど、オートパイロット機能を兼ね備えた電気自動車が主流だ。
「宜野座監視官、みょーじ監視官」
護送車から執行官が降りてくるのを横目に見て、常守が頬をあげて呼びかけてきた。
「ん?」
「なんだ」
「私、執行官のみんなとうまくやっていけそうな気がします!」
「お、いいね。狡噛さんに何かいいことでも言われた?」
「あ、わかりますか?」
狡噛に影響されすぎている節があるが、彼もかつては監視官。
先人の言葉は彼女の励みになるだろう。
第一印象の時とは打って変わって、前向きに業務に当たってくれるのであれば文句はない。
だがそれに水を差すのが我らがリーダー、宜野座伸元監視官である。
「……うまくやっていけそうというのは、同僚としてか?それとも調教師としてか?」
「え…」
「……宜野座さん」
「…愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶという。君が愚者でないことを願う。」
物騒な言葉を残して、彼は車から降りていった。
一応彼なりに、狡噛の二の舞にさせたくなくて親切のつもりだろうが、態度がよろしくないのも事実。
あの男に期待をかけるのもお門違いだが、まだ出会って数日しか経っていない唐変木を理解しろという方が無理なのだろう。
常守は自信に満ちた顔から一転、むくれた表情を浮かべた。
「……むぅ」
「あはは、ごめんねー。今日宜野座さん不機嫌みたい。」
精一杯のフォローは引きつった笑みだった。
****
「ようこそ、刑事さん」
出迎えてくれたのはこの工場管理主任。
でっぷりと太った腹には一物も二物も抱えてそうなほど、胡散臭い笑顔だ。
おなまーえと常守が小さく会釈する。
「現場を見せていただきます」
「もちろん。案内しましょう」
振り返った男から笑顔が消えたのをおなまーえは見過ごさなかった。
場所は変わって工場見学。
唯一の有人区画の最終検査の工程を見させてもらう。
ここは繊細な機械を取り扱う場だということを強調した上で、実はここはオフラインなのだと主任は説明した。
「動画もチャットも、何もできないってことですか?」
「ええ。ハッキング対策としては効率の高い保安体制です。」
攻撃を受けないようにするためには、周りの道や橋を全て落としてしまえば良い。
確かに外部からの攻撃は受け付けなくなるが、随分と極端なやり方だ。
「……ゾッとするね。陸の孤島かよ。」
縢の言葉は的を得ていると思った。