#08
夢小説設定
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ここからノナタワーまでは急いで20分ほど。
各地で暴動が起きていることを考慮しても、正味30分ほどで着けるだろう。
朱達はもうすでにノナタワーに向かっているようだから、もしかしたら大幅に遅れてしまうかもしれない。
Uターンして、来た道を制限速度の倍の速さで戻る。
――プルルップルルッ
みょーじおなまーえのデバイスが鳴った。
表示された顔は、ここ数日会話を交わしていなかった彼だった。
「……」
おなまーえは運転をオートパイロットに切り替えて電話に出た。
『お前はこっちくんな』
開口一番に言われたのがそれだった。
縢も薄々感じていたのだろう。
チェ・グソンがおなまーえに協力を要請し、それを断ったから今回の暴動が起きてしまったということを。
(知らんぷりできるわけないって、アンタはよく知ってるじゃん…)
己の選択のせいで起きた暴動を見て、無神経でいられるほど、みょーじおなまーえは図太くはない。
幼馴染の彼はそれをわかっていながらも、敢えて忠告の連絡をよこした。
彼女は小さく首を振った。
「行く」
『お前がきたときても何もかわらねぇ』
「だとしても、刑事としてやれることはまだあるって信じてる」
『なら刑事として暴動の鎮圧に精を出してろ』
「ならあの男の共謀者として、私はアイツを止めに行く」
シビュラに対抗しようとした時点で、みょーじおなまーえはもう既に犯罪者のようなものだ。
加えてチェ・グソンを捕まえないという選択肢を選び続けてきた彼女は、もはや立派な共犯者である。
「アンタにどう言われようと私は行くから」
『あのなぁ…』
「私のこと大嫌いなんでしょ。嫌いな奴がどこで何してようがあなたには知ったこっちゃないじゃない。ほっといてよ。」
――ブチッ
縢の返答を聞かずにおなまーえは通信を切断した。
きっとノナタワーでは槙島達との戦闘になる。
彼はそれを案じて「来るな」と言ってくれたのだ。
心配してくれているということはわかっている。
だが、嫌いだと言ったならば、気遣いなどしないでくれ。
また惨めな思いを味わいたくはない。
「……バ縢」
1人の車内には、小さな呟きが案外大きく響いた。
少々感情的になりすぎた。
捜査に私情は禁物だ。
「……しっかりしなきゃ」
悩んだり、悲しんだり、傷ついたりするのは今やることではない。
彼女は頬を2回叩いて気を引き締め直した。
この通信が彼との最後の会話になるとはつゆほども思わず、みょーじおなまーえはハンドルを握りなおし、アクセルに力を込めた。
【続】