#08
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「目下首都圏は未曾有の危機に直面している」
禾生局長により、公安局に緊急招集がかけられた。
非番の人員も含め、刑事課に総動員指令が出されたのである。
「シビュラシステムの導入以来、市民の暴動は可能性として廃絶されたものと判断されたため、現在の公安には暴徒の鎮圧に備えた人員も装備もない。」
ここにいるのはせいぜい20人程度の刑事のみ。
とてもではないが数千もの事件に当たることはできない。
「あまりにも平和が長すぎた。本格的な鎮圧部隊の編成が整うまでの間、諸君ら刑事課のメンバーに、市民の安全を守る最後の盾となってもらうしかない。」
局長は一係から報告された書類を手にとった。
サイマティックスキャン妨害のヘルメットはドミネーターの機能を阻害する。
これに対してはスタンバトンで対抗すること。
ただし相手が大人数の場合は、緊急用の電磁パルスグレネードの使用を許可された。
「3人ないしは4人で1チーム作ってもらう。エリアを分担して、あとはしらみ潰しで鎮圧だ。」
一係は宜野座・みょーじ・征陸・六合塚のチームと、常守・狡噛・縢のチームに分けられた。
「時間がかかるし危険も伴うが、他に方法はない。この街の未来がかかっている。よろしく頼む。」
「「はっ!」」
局長の言葉に、一同は迅速に動き出した。
****
執行官の迅速な対応により、各エリアの大きな暴動はある程度収束しつつあった。
監視官はせいぜい警告をする程度しか出来ず、己の行動力のなさに、みょーじおなまーえは唇を噛んだ。
(私のせいだ…)
みょーじおなまーえであれば、この事態を未然に防ぐことは可能だった。
たとえ彼女自身にどんなに重い罰を課せられようとも、善良な一般市民が暴徒に成り果てることはなかっただろう。
それはまぎれもない事実であり、取り返せない選択。
故に、彼女は自分自身を責めずにはいられなかった。
彼女の元に報告が入ったのはそんなときだった。
『宜野座さん!首謀者の目的は厚生省ノナタワーの襲撃です!暴動はすべて囮なんです!』
緊迫した常守の声がデバイスの奥から響いた。
「バカな!そんな根拠のない憶測で持ち場を離れるな!こっちは人命がかかってるんだぞ!」
「…続けて、朱ちゃん」
「みょーじ!?」
宜野座の言葉はもっとも。
人出が少ない今、目の前の事件に対処するのが最善の策だとは思う。
だが、それ以上におなまーえは彼らの推理を聞きたかった。
『監視官も執行官も全て出払った中央区の官庁街は、もぬけの殻なんです!』
「…あいつらの手にかかれば警備ドローンもカカシ同然だもんね」
チェ・グソンはおなまーえに協力を要請してきた。
可能性として考えられるのは、公安の権限が必要な区域、すなわちノナタワーへの引き入れ。
『このまま後手にまわっていたら、今度こそ取り返しのつかない事態になります!せめて私たちだけでも!』
「……分かった!まずは君たちが先行して 状況を確認しろ」
「宜野座さん、私も行きます」
「みょーじ…」
「詳しいことは後で話しますが、この事件の一端は私に責任があります。行かせてください。」
決意と覚悟に満ちた目で、みょーじおなまーえは訴えた。
(もう迷わない…)
今度こそ、あの男を捕まえてみせる。
シビュラにどれほど恨みを抱いていたとしても、チェ・グソンを捕まえないことには、この暴動を収めることはできないだろう。
刑事としての意地をかけて。
ただならぬ様子を感じ取った、宜野座は渋々と頷いた。
「…そうだな。オレは引き続き鎮圧を続行する。くれぐれも無茶はするなよ。」
「はい」
おなまーえは暴動を背に、走って車に乗り込む。