#06
夢小説設定
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暖かいコーヒーとお茶受けのクッキーを交互に食べる。
たまにはこんなまったりとした時間も悪くはない。
ここ数週間、おなまーえの悩み事は尽きなかった。
事件はどんどん悲惨さを増していくし、宜野座は不機嫌だし、朱は狡噛に幻想を抱いてるし、自分はシビュラを裏切ろうとしているし。
「らしくねぇじゃん」
広いソファで、縢が隣に座った。
「そう見えた?」
「お前が怒鳴ってるとこ、初めて見た」
「あんたとの口喧嘩じゃ、ああはならないしね」
感情的になったことは反省してる。
結局、宜野座と朱の仲裁どころか、狡噛に文句を言うだけ言って逃げてきてしまった。
ミイラ取りがミイラになってどうする。
コーヒーを飲む手をとめて水面をじっと見つめるおなまーえを、縢は横目でチラリと覗く。
「……でもありゃ言い過ぎだったよ」
「『あんたが死のうがどうだっていい』のとこ?」
「違う。失うものが何もないって言い方。俺らにだってまだ大切なものの一つや二つあるっつーの。」
「例えば?」
「わかりやすい例で言えば、とっつぁんはギノさんのこと、自分の命より大切に思ってる」
「……まぁ、親子だしね…」
たしかに、あの場でのおなまーえの発言は執行官たちを傷つけたかもしれない。
居合わせていた六合塚にはあとで謝っておこう。
多分これっぽっちも気にしてないと思うけど。
ふと、疑問に思う。
自分にとって失いたくないものはただ一つ、縢秀星との関係性。
本人には絶対教えないが、幼い頃からそれはずっと変わらない。
では縢秀星にとって失いたくないものとは、一体何なのだろうか。
こういったことは構わず尋ねてしまうのが、監視官・みょーじおなまーえの性質だ。
「ねぇ…」
「ん?」
「縢の大切なものって何?」
「……お前にはぜってぇ教えねー」
「えー、ケチー」
かかとで縢のふくらはぎを蹴る。
「誰誰?好きな人?」
「るせぇな。言わねーつってんだろ。」
図星みたいだ。
どうせ好きな女の子の1人や2人いるのだろう。
3係には可愛い子がいると聞いたことがある。
以前、唐之杜からその可愛い子と縢が付き合ってるかもしれないという噂を聞いたことがある。
真偽のほどはわからないが、火のないところに煙は立たないという。
つまり、まぁそういうことなのだろう。
「つぅか、お前もいんだろ。大切な婚約者。」
「え?」
「『え』じゃねぇよ。ほら時任ってやつ。」
「…あぁ」
正直に告白しよう。
すっかり忘れていた。
もともと連絡もあまりせず、会うのも月に1回程度。
大切なものと言われて一番はじめに時任のことを浮かべない辺り、ちょっと女として致命的なんじゃないだろうか。
(……というか、そもそも時任さんのこと、私恋愛対象としてみてないのかもしれない)
友人としての相性は良いと思う。
彼の冷静沈着で誰にでも優しいところは人として尊敬もしている。
けれど、やっぱり何か違う。
彼と添い遂げて家庭を持つビジョンが、今のおなまーえには全く見えない。
そもそも縢に負い目を感じている自分は、一般的な幸せでは絶対に納得いかないだろう。
(……いい機会かな)
――時任と別れよう。
シビュラシステムの正体を暴こうとすれば、周りに被害が及ばない保証はない。
万が一のためにも、時任のことは巻き込みたくはないし、その程度には彼に対しての気持ちはある。
狡噛にも周りを巻き込むなと言った手前、みょーじおなまーえは時任智也と別れることを決心した。