#06
夢小説設定
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「画像検索完了。ブラウザするわね。」
そう言っている間に六合塚による画像検索が完了した。
パッと映し出された映像では、どれも王陵璃華子は複数人と共に行動している。
「ああ…社交的な子だったんだな。常に取り巻きがついてる。」
「女子校だと、本来男子に向くはずの恋愛感情が、カリスマ性のある女の子に向く傾向があるですよ」
「多感な時期だしねぇ」
全員で目を皿のようにして怪しいところがないか探す。
おなまーえの目があるモニターでとまった。
(うわ、超イケメンの先生いる…)
美術室だろうか。
王陵璃華子が絵を描いていて、その後ろで本を読んでいる男がいた。
白髪で、ぱっと見は高齢な様子だったが、よく見るとまだ若く、顔立ちも整っている。
「おい」
狡噛の言葉でおなまーえは我に帰る。
彼は一つのモニターを指差した。
珍しく、王陵璃華子が一人で写っているシーンだ。
辺りにも人気は無く、どこかに入っていこうとしている。
「どこのカメラだ?」
「寮の裏手にあるゴミ処理施設ね」
「こんなところになんの用が――」
縢が言い終えるより先に狡噛は動き出した。
華の女子高生が、ゴミ処理施設に自ら足を運ぶ理由があるとすれば、そこに何か隠しているものがあるから。
狡噛に遅れをとり、残りの面々もセキュリティルームを飛び出した。
ゴミ処理施設はもうすでに機能していないようで、明かりもなく薄暗い。
ジメジメとしていて居心地も良くない上、薬品のようなツンとした臭いが鼻につく。
ドミネーターを片手に慎重に進んでいた一行は、ホログラムの壁を通り抜けて奥へと足を進める。
――バチンッ
すると突然明転し、まるで舞台か何かのように辺りが明るくなる。
そして、その舞台の中心に設置されたオブジェを見て、おなまーえは頬をひくつかせる。
「……縢、行方不明になった女の子は何人だったっけ」
「2人だね」
良い知らせだ。
少なくとも、王陵璃華子の毒牙にかかった被害者はこれ以上いない。
悪い点といえば、先程電話で話をした親御さんたちにどう連絡すればダメージが最小限で済むか考えなくてはならないということ。
「ほんっと、同じ人間がやったとは考えられないわ…」
「そりゃ健常なみょーじ監視官には、潜在犯のしでかすことなんて思いもよらないだろうさ」
「いや、あんた達と王陵璃華子が、よ」
舞台上には、2人の少女の体を絡み合わせた作品――否、遺体が飾られていた。
****
『槙島』。
公安が手に入れられた敵の情報はただそれだけだった。
王陵璃華子が行方をくらますと同時に、桜霜学園から1人の教師が姿を消した。
「美術教師・柴田幸盛、ということになっているが、実際は介護施設に収容された全く無関係な老人だった。
「この人の経歴が改ざんされて、教員に成りすます上で利用されたみたいですね」
「完全な偽造経歴じゃないところが悪質かつ巧妙っすね」
征陸とおなまーえの報告と同時に、全員のデバイスに柴田幸盛の顔写真が送られる。
どこからどう見ても普通のおじいさんだ。
「みょーじの報告だと、若い男性だったとなっているな。聞き取り調査の時にでも出会ったりしたのか?」
「いえ、王陵璃華子の画像をピックアップした時に、美術室の映像にちらっと映ったくらいで」
「そのデータは?」
「映像データは全てクラッシュ。かろうじて残っていたのは、ほんの短い音声ファイルのみです。」
六合塚の淡々とした報告に、宜野座は頭を抱える。
「ならば顔は?見たのか?」
「見ましたけど、イケメンだなーって思ってスルーしちゃったのでそんなに覚えているわけではないですよ」
「学園にも協力してもらって、昔ながらのモンタージュ写真と似顔絵作成もやってみましたが…」
「その口ぶりからすると外れか?」
「ええ」
どれもピンとくる顔写真は作れなかった。
「結局、佐々山が撮ったピンボケの写真しか手掛かりはないってか」
「雰囲気はこんな感じってわかるんですけどね…」
「お前はいつも肝心なところで犯人の顔を見逃すな」
「若い男ってのがわかっただけでも褒めてくださいよ、宜野座さん」
「それはお前からの報告でなくともわかることだ」
アバター事件の時から、宜野座の中でのおなまーえの評価がガタ落ちしていることは重々承知している。
今ここでチェ・グソンの名前を出せば一気に信用を取り戻せるが、それはおなまーえの望むところではない。
(チェ・グソンと槙島は多分共犯なんだろうな…)
それもかなり密な関係だと推測できる。
チェ・グソンと御堂の仕事上の関係性とは明らかに違う。
今回の件で、おなまーえのシビュラシステムに対する不信感はより一層募ることになった。
あんな犯罪をしでかした王陵璃華子と、おなまーえの下で働いている縢秀星が同じ潜在犯だとは思えなかった。
人の感情を数値化するなんて、やっぱり人類にはまだ早い。
そう改めて認識させられた。
「そういえば、狡噛はどうした。あいつならこの会議には喜んで参加しそうなものだが。」
「狡噛さんなら、朱ちゃんと雑賀教授のとこに行ってますよ」
「なに!?」
宜野座が眉間にしわを寄せて目を見開いた。
明らかに地雷を踏んだ感覚を得る。
(あ、これ言っちゃいけなかったやつだな)
おなまーえは己の失態を反省し、遠い目をした。