#06
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午後になり、捜査は特に進展もなく、相変わらずアナログな聞き込み調査しか行えていなかった。
そこに、事態を一気に好転させる情報を持って、"彼"が捜査の前線に帰ってきた。
「こ、コウ!?」
「え?」
中庭で聞き込みしている最中に、征陸が突然大声をあげた。
本当に驚いたのだろう、彼のホロコスが解けてしまった。
「キャーーッ!」
「ま、征陸さん!」
「え…おぉ!?」
聴取に協力してくれていた女学生たちが声をあげる。
そりゃ可愛いマスコットの中身が60過ぎの男性だったら悲鳴もあげたくなるだろう。
「ここはいいから、狡噛さんを追ってください」
「了解」
宿舎待機のはずの狡噛が出てきているということは、犯人に辿り着いた可能性が高い。
狡噛の向かって行った先には宜野座がいる。
自分が行くより執行官に行かせた方が良いと判断したおなまーえは、女学生たちを宥める方をとった。
****
結果的に、狡噛が目をつけた容疑者・王陵璃華子は犯罪係数オーバー400という数値を叩き出した。
だが様々な障害が入り、不甲斐ないことに、公安は彼女のことを取り逃がしてしまった。
「小娘一人も探し出すことができないってのはどういうことだ!」
苛立った宜野座が地団駄を踏む。
セキュリティルームの監視カメラで王陵璃華子の足取りを探すが、彼女の姿はどこにも見当たらない。
「ここ、出入りに対するセキュリティばっかり厳重で、いざ中でかくれんぼとなるとザルもいいとこなんすよ」
「それにホログラムの壁とかもあったんで、多分カメラじゃ見れないと思いますよ」
「何!?」
宜野座の鋭い眼光がおなまーえに向く。
壁を壁と思うことなかれ。
ずさんな図面から抜け落ちた通路や部屋が、この学園にはいくつも存在するのだ。
「なんでそれを報告しなかった!?」
「え、いや、この学校では当たり前のことなのかなって…」
「そんなわけあるか!」
「ホロ壁で立ち入り禁止区域を仕切ってるのだって今時別に珍しくないじゃないですか」
見兼ねた縢が警備員の肩をチョンチョンと叩く。
「警備員さん、この学校そういうのある?」
「い、いえ……立ち入り禁止区域は物理的にきちんと閉鎖しています。うちではホロ壁は使ってませんよ。」
「クソッ…!」
少女が見当たらない焦り。
おなまーえが報告を怠っていたことへの怒り(正確には隠していたのだが)。
宜野座の苛立ちはピークに達する。
おなまーえは反省の意を示すために一歩下がる。
必然的に縢の隣に立つことになった。
「……『まことのメガネ』でもあればなぁ」
頭の上で腕を組んでいる縢が呟く。
「……ああゼルダね。あの井戸、トラウマものだから、私未だに行けてないんだよね」
「あそこ行けなくてよくこの仕事就いていられるな」
「ほら、だってあそこボンゴボンゴの首が巡回してるじゃん?生きてるのはともかく、首が動いてるとかもう無理。」
「……みょーじ、縢」
「あ、すんません」
「黙ります」
貧乏ゆすりをする宜野座を見て、征陸が軽く注意をする。
実際、見えない壁があるのであれば監視カメラでは探しようがない。
己の足で探すにしても、流石にこの広大な敷地の端から端までとなると、その間に裏道から外に逃げられる可能性だってある。
だがそこで諦めないのが狡噛慎也という男だ。
「……過去数日分の監視カメラの録画か王陵璃華子の姿だけをピックアップできるか?」
彼はこの中で一番機械に強い六合塚に尋ねる。
「本部のラボに支援させればその程度の画像検索はすぐにでも」
「やってくれ」
警備員と交代して六合塚が席に着く。
事態が好転しそうで、宜野座も少し平静を取り戻したようだ。
「しかし…王陵牢一だと?そんな絵描きがいたとどうしてわかった?」
「オリジナリティーですよね、狡噛さん」
朱が嬉々として答える。
「なんだって?」
「いや、だからその……犯人のメッセージ性に芸がないから、その…プロファイリングによって…ですね…」
「要は3年前とは趣味趣向が異なってるって言いたいんだよね、朱ちゃん?」
「そう!それ!」
しどろもどろに答える朱に、おなまーえが助け舟を出す。
隣の縢が肘で小突いてきた。
「お前も確かそんなこと言ってたよな」
「うーん、私のは直感みたいなものだから…」
結局そこを突き詰めていった狡噛が真犯人に辿り着いたのだ。
今更おなまーえが何を言ったところで後出しだ。
余計な先入観に囚われていたのは自分だったと宜野座は自覚する。
「……狡噛、今回の2件は藤間幸三郎の犯行でないと、お前は最初から見抜いていたのか?」
「……今回の犯人は、ただ目に着けばいいというだけで遺体の陳列場所を決めていた。2回続けて公園を選ぶだなんて、藤間幸三郎だったらありえない。」
確か藤間は公園のホログラムイルミネーションの裏側にも遺体を置いたことはあるが、他にも様々な場所をセレクトしている。
かつて似たような場所を利用していたことは一度もなかった。
「だからといって、まだ全てが王陵璃華子の仕業だとは…」
「どうであれ、あんな犯罪係数をマークした娘を放っておくわけにはいかない。そうだろ?」
「……」
狡噛の言う通りだ。
オーバー400。
一体どんな残忍な殺し方をすればこんな数値を叩き出せるのか。