#05
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「んっ、んっ、ぷはぁ!」
「朱ちゃんいい飲みっぷりだねー」
ワインの一気飲みなんて、征陸に言ったら勿体無いと言われそうだ。
朱はどうやらザルのようで、頬は紅潮しているもののまだまだ意識ははっきりとしていた。
対しての成人組。
おなまーえはほろ酔い気味で、縢は泥酔しきっていた。
情けない。
「縢飲み過ぎ。水飲みな、水。」
「だってよ~、俺が採用されたときには、もうコウちゃん監視官おろされてたからさー、詳しいことはよくわっかんねえしー」
「ダメだこりゃ。話通じない。」
おなまーえは諦めてつまみを頬張る。
全く、男のくせに料理はプロ級なんだから。
程よい塩加減にワインがよく進む。
「おなまーえちゃんは何かしらない?」
「私?んー、なんとも。私が配属されたのって縢が執行官になった後だから、それこそ全く知らないよ。」
「そっかぁ…」
「縢、勿体ぶらないで話してあげなよ。志恩さんからなんか聞いてんじゃないの?」
縢はソファの背もたれに首を乗っけて大の字になっている。
だらしがないと小突けば、さらに脱力してしまった。
「いーやぁ?なんかそのときコウちゃんの部下だった執行官が殺されちまったってのは聞いたけどー」
「殺された?」
「そう。犯人追っかけてたはずが逆に犠牲者になっちゃったの。」
「えっと、佐々山さんだったっけ?」
「そーそー」
事件ファイルの整理で目を通したばかりだったので少しは覚えている。
確か3年前で、標本事件と呼ばれるものだった。
(何があったか知らないけど、佐々山執行官、この時期に命令違反結構繰り返してるんだよね…)
朱にファイルを見せようかとデバイスに触れて、食事中だったことを思い出してそのまま手を下ろす。
おなまーえでもちょっと引くくらい、かなりグロテスクなご遺体だった。
多分、この前のドローンでバラバラにされたものよりも精神的にクる。
「他の被害者と同じ手口で殺されたらしくて、ちょっと今は見せられないくらい酷い有様だったよ」
結局、おなまーえはオブラートに包んで自身の知り得る情報を伝えた。
「で、コウちゃんそれでおかしくなっちゃって犯罪係数ぶっちぎっちゃって。この事件迷宮入りって話だけど、未だにコウちゃん調べ続けてるらしいよ。」
「そうなんだ…」
「宜野座さんが報告書読んでるの見たことあるわ」
彼は妄想の羅列だとロクに取り合わなかったが。
たしかに狡噛の執念にはある種の異常さを感じる。
まるで何かに取り憑かれたかのようにさえ見えた。
『深淵を覗く時、深淵もまたこちらを見ている』。
狡噛はまさに、その深淵に捕らえられてしまったのだろう。
縢がガクンと首を元に戻した。
「つかさ、朱ちゃんなんでそんな酒強いわけ?」
「……」
朱は自分でワインを注ぎ、再び一気飲みをする。
まるでミネラルウォーターでも飲んでいるような飲みっぷり。
「いや、縢くんが弱すぎ」
ケロリとした顔で朱はそう言い放った。
****
「朱ちゃ〜ん」
「朱ちゃんもう帰ったから。さっさと寝ろ、この酔っ払い。」
「ん〜〜」
1時間後。
ほぼ朱1人で酒ビンを開け、彼女はしっかりとした足取りで帰宅していった。
彼女に酒を勧めた張本人はというと、顔を真っ赤にしてソファで崩れていた。
「うげ…」
「ほら、肩貸すから」
肩に腕を回させて、自分より7センチほど高い男を背負う。
素直に重い。
とても重い。
「もー、歩いてってば」
「んー…」
自分で歩く気力は無いようで、ほぼ引きずった状態で寝室まで連れて行く。
「よい、しょっと」
肩に回された手を解けば、縢は重力に逆らうことなくベットに落ちた。
ボフンといい音がしたが、抗議する元気もなさそうだ。
心なしか規則正しい呼吸音も聞こえる。
縢は明日非番だったはず。
このまま放置しても大丈夫だろう。
すっかり遅くなってしまったがおなまーえも帰宅しようと縢に背を向ける。
――クンッ
「!!」
だが足を動かそうとした瞬間、服の裾を引かれた。
上半身だけ振り向くと、目を瞑っている縢が掴んでいる。
「……起きてんの?」
「………」
返事はない。
どうやら無意識のようだ。
ほどくことは造作もないのに、なぜか振り払う気になれなくて、おなまーえはそのままゆっくり後ずさりしてベットに腰をかける。