#05
夢小説設定
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――ジュゥ
お肉と醤油の焼ける香ばしい匂いが食欲をそそる。
広いアイランドキッチンで、縢がつまみを作っているのである。
――カタカタカタ
その隣で、画面と睨めっこしているみょーじおなまーえ、22歳。
彼女は縢の部屋に来てもなお、簡易デスクトップで仕事をしていた。
「あんまりコン詰めてやると体壊すよ?」
「あと少し…だから…」
そう言う彼女の目の下にはくっきりとクマが現れている。
アバターの事件が終わってからというものの、おなまーえは少々頑張り過ぎだ。
朱が何事もそつなくこなすので敵対心を抱いているのか、当直勤務を全部外されたことに焦っているのか(宜野座が気を利かせた)、それとも別の理由があるのか。
「……」
「……え、これ全部書式違うじゃん。嘘でしょ…」
ブツブツと小言を言いながら、おなまーえは仕事をこなしていく。
だが明らかに仕事効率は落ちていた。
「……はぁ」
見ていられない。
縢は空いたフライパンを水で冷やし、濡れた手を拭いた。
「みょーじ監視官、ちょっと頑張り過ぎ」
「えー?そんなことないよー」
縢に声をかけられてもおなまーえはデスクトップから目を離さない。
(ここはコピー&ペーストっと……ったく、誰が書いたのよこれ……って、私じゃん。過去の私どんだけ書類作成スキル低いのよ…)
ふっと影が降りた。
ちょうど部屋の電気に被るように、縢が隣に立ったのだ。
「さっきから全然進んでないじゃん。ずっとこのページなのオレ知ってるよ?」
「うるさいなぁ。文句言う暇あったらエナジードリンクでも買ってきてよ。」
「はぁ…」
縢はため息を吐くと、おなまーえの隣にしゃがみこみ、首の後ろに手を回してきた。
……手を回してきた?
「ちょっと、何、よ――」
次の瞬間、体に妙な浮遊感が走った。
マウスを持っていた手が宙を掴む。
上体を横にされて、天井が見える。
天井だけ…?
縢がにゅっと顔を覗かせる。
「なんだよ反応無しかよ。つまんねぇ。」
そこでようやく、彼女は自身が横抱きにされていることに気がついた。
「おおおおおおろして!!!」
「お、いい反応」
「おろして!アンタのことだから絶対重いって言うに決まってる」
「別にこんぐらい平気っしょ。オレも鍛えてんだから、舐めんなよ?」
「なっ…!」
ニカッと屈託のない顔で縢は笑う。
そう、マンガやゲームでしか見たことのない、いわゆるお姫様抱っこをされたのである。
加えてウインクなんてされてしまえば、おなまーえの思考回路は完全にショートした。
(な、なんでなん、え、なんでなんで、ええええ!?)
すっかり大人しくなったおなまーえを抱えたまま、縢は足で寝室のドアを開ける。
そして今朝メイキングしたばかりのベットにおなまーえを放り投げた。
「おら」
「ひっ」
――ボフンッ
おなまーえは柔らかい羽毛布団に包まれる。
「ちょっと何す――」
すかさず抗議しようと体を起こしたが、すぐに押し倒されてしまった。
肩を押さえつけられ、あれよあれよと言う間に布団をかけられる。
「寝ろ」
「はい??いや、寝ろって言われても人間そう簡単に…」
ふと視界が暗くなった。
縢が額を指で覆うように、目隠しをしたのである。
縢は空いている方の手を口元に持っていき、人差し指でシィーと合図する。
「飯できたら起こしてやっから」
「……でも…」
「明日もまた手伝ってやっから、な?」
「…ん…」
柔らかくて暖かい毛布に包まれて、体力を消耗していたおなまーえが抗えるはずもなく。
(…秀星の……にお…い…)
洗いたてのシーツから仄かに香る、縢の甘い匂い。
落ち着くような、ドキドキするような、でもやっぱり安心する心地よさ。
だんだんと心拍数が安定していき、彼女は真っ逆さまに意識を落としていく。
「……スゥ…」
ほんのわずか数秒で、おなまーえは寝落ちてしまった。