#05
夢小説設定
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「……お、わ、ら、なぁーーーい!!」
「うるせぇ!さっさと手動かせ!」
数日前に解決したアバター乗っ取り事件。
事件は無事に解決したものの、みょーじおなまーえと縢秀星は絶賛戦場のど真ん中に立っていた。
「だいたいセラピー治療中の人にこんなストレスのかかることやらせるか?普通!」
つい先日の宜野座の言葉。
『お前らには罰として過去3年分の事件のファイル整理をしてもらう。なに?1年の間違いじゃないかだと?たわけ。俺も大概忙しくてな。悪いが、ここに配属されてから一度たりとも整理できていない。せめてもの情けで期限は設けんが、毎週進捗報告はしてもらうぞ。』
一係は基本的に事件があればすぐに駆けつけなければならない。
報告書の作成はするものの、データはあっちこっちに保存してあったり、担当監視官によって形式が微妙に異なっていたり、タイトルが違ったりと、とにかくバラバラなのだ。
宜野座もいつか統一しなければと思って3年間過ごしていたのだろう。
そこに処罰待ちのおなまーえと縢が現れたというわけだ。
まさに鴨ネギ。
「うう、ギノさんの鬼!悪魔!」
「巻き込まれたオレの身にもなってみろ!」
「なによ!この前は『ここはオレに任せろ、キラーン』とか言ってたくせに!」
「言ってねぇし!!」
本来ならばみょーじおなまーえは自宅謹慎(自宅療養)しなければならない身分なのだが、生憎一係は常に人手不足だ。
常守朱が来たからといってそれがすぐに解決されるわけもなく、おなまーえは処罰という名の雑用を押し付けられた。
実際、縢がいるだけマシだと思うべきなのだろう。
ファイル名変更、書式の変更、それによってズレた部分の修正、ファイルの統一。
小さな事件でも、端から端まですべてチェックしなければならない。
とてもじゃないが、この量を1人でやるとなれば終わりが見えない。
いつか絶対昇進して宜野座をこき使ってやると心の中で決心しつつ、おなまーえは画面に目を走らせた。
夕方。
「……あ、そろそろオレ上がる」
おなまーえとともに雑用をこなしていた縢が就業報告をしてきた。
「え?未だに頑張ってる私のこと置いて、アンタもう帰んの?」
「んだよ。もう上がり時間はとっくに過ぎてんだろ?」
「もっとこう、上司の顔色を伺うとか…」
「ブラック企業かよ」
おなまーえの許可が下りていないというのに、縢は帰り支度を始める。
ちょっと待て、この進捗じゃ週末宜野座に小言を言われてしまうではないか。
「えー、縢どうせ帰ってもゲームしかやることないでしょ?残って私と残業デートしようよー」
「残念、先約がいるんだなー」
「え、先約?」
「そ。このあとオレの部屋で朱ちゃんとデートなの。」
「…え!?」
ガタッと音を立てて立ち上がった。
疲れも眠気も一気に吹っ飛んだ。
思わぬ刺客。
朱ちゃんが純真で真面目な性格だから、縢の理想の『年上のエロいお姉ちゃん』からはかけ離れていて、つい油断していた。
(縢が?朱ちゃんとデート…?)
だめだ。
気になって仕事が身に入らない。
そもそもデートってなんだ?
時任とはいつもご飯を食べて、近況報告して、たまに手を繋ぐ仲。
恋人とのお出かけをデートというのなら、これがおなまーえの定義するデートである。
(縢と朱ちゃんが、手を繋ぐ…?)
脳内に2人が仲睦まじく歩いている映像が映る。
やがて2人は見つめ合い、目を閉じて唇を寄せて――
「っ!?ダメダメダメダメ!そんな風紀乱れるようなことしちゃダメ!!」
「はぁ?」
「だ、だいたい年頃の男女が部屋で2人っきりって、絶対ダメでしょ!」
これには同室にいた狡噛と征陸も吹き出した。
お前が言えたことかと。
果敢せずを貫いてはいるが、それでも2人の会話は気になるのだ。
身支度を終えた縢はめんどくさそうに頭をかく。
そろそろ下ごしらえをしないと、朱の来る時間に間に合わない。
(どうせこいつのことだから、このままオレがいなくなったら仕事できねぇんだろうな)
縢はため息をついた。
「じゃあお前も来りゃいいじゃん」
「え?」
「ほら早くしろ。飯作ってやっからよ。」