#03
夢小説設定
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再開発された街並みは整頓されていて、不気味さを感じさせるほどに美しい。
一定の速度で走る車の助手席には、縢が座っている。
「……んでぇ?これどこに向かってんの」
彼はゲーム機から目を離さずに欠伸をした。
「えっと、ちょっと会いたい人がいて」
「……ふぅーん」
いつもより念入りに化粧直しをしたおなまーえは、歯切れの悪い返事をした。
車の中でもどこか落ち着きがなかった。
それもそのはず、これから縢と時任が顔を合わせるのだ。
別にまずいことなんて一つもないのに、なぜか胸騒ぎが収まらなかった。
国道から少し外れたタワーマンションの地下駐車場に入る。
「縢はここで待ってて」
「何かあった時の護衛のためにオレがいるんじゃないの?」
「ここでは何にも起きないから。ね?待ってて。」
まるで都合の悪いことがあるとでもいうように、おなまーえは繰り返し縢に待機を命じた。
小走りでエレベーターホールに向かう彼女を見て、縢は直感する。
国土交通省勤めの理想的な男性、もしかしたら彼に会いに行くのではないかと。
「……"待て"ができる番犬じゃないの知ってるっしょ」
縢は躊躇することなく、助手席のドアを開けた。
エレベーターホールまで一直線で行く。
徐々に上昇するランプは、ある階で停止した。
(2階か…)
ここは地下1階。
2階までなら階段でも行けるだろう。
念のため足音を立てないように、一段飛ばしで非常階段を登っていく。
重たい扉を数センチ開けて中を確認する。
30メートルほどの廊下に、6つ程のドアがあるった。
おなまーえはそのうちの一つの扉の前で立ち止まっていた。
――ガチャ
部屋の主人が顔を出した。
優しそうで、善良そうな顔の男だ。
「ごめんなさい、せっかく休日なのに急に押しかけちゃって…」
「大丈夫。おなまーえさんの頼みたらいくらだって引き受けるよ。」
「ありがとう」
「とりあえず入って」
言われるがまま、おなまーえは慣れた様子で部屋の中に入る。
縢は非常扉を開けて、彼女が入っていった部屋の前に立つ。
「……なーんでこういう時の予感って当たるんだろうねぇ」
売り言葉に買い言葉。
自分が焚き付けて、おなまーえがやけになって見つけてきた理想的な結婚相手。
直接見かけるのは初めてで、話で聞いていた以上に優男で、良いとこの育ちのおぼっちゃまだった。
(潜在犯のオレとは正反対だな)
表札には『時任』とプリントされていた。
****
「この前話した、雄一くんのアバターについて、もう少し聞きたくて」
「捜査?」
「うん。一応機密事項だから詳しくは言えないんだけど、雄一くんのと似たようなアバターを見つけて、今詳しく調査してるの。」
「大変だね。僕でよければいくらでも協力するよ。」
「ありがとう」
全く、縢とは違ってとんだ好青年だ。
時任の爪の垢を煎じて飲ませたいくらいだと頭の片隅で思い、おなまーえは事情聴取を始めた。