#03
夢小説設定
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「いい?『はい、誓います』って言ってればいいんだからね」
「はいはい、誓います誓います」
「もっと誠意を込めて!!」
「へいへい」
結局少女の希望が通り、2人はオママゴトをするということで落ち着いた。
今日は『結婚生活3年目でようやく資金を見繕うことができた夫婦の結婚式』という設定でミニ劇場か開幕する。
「けふん、けふん」
少女はわざとらしく咳払いをした。
「縢秀星さん。あなたはみょーじおなまーえを妻とし、神のみちじ…みじび…」
「導き」
「み、導きによって夫婦になろうとしています」
「いや、この場合もう夫婦なんじゃねぇの?」
先ほど、おなまーえが高らかに宣言していた設定を思い出し、縢秀星は横やりを入れる。
「たしかに……って、別にそんな細かいことはいいの!」
「細かいって…おなまーえが言い出したことじゃん」
「えー、けふんけふん、静粛に。えー、汝健やかなる時も病める時も、共に助け合い、その命ある限りまこころ…」
「真心」
「えっと…その命ある限り真心を尽くすと、誓いますか?」
「……はい、誓います」
「……えへへ、じゃあこれで夫婦だね」
少女は先ほどまで膨らませていた頬が嘘のようにほころぶ。
それを見た少年の頬が、心なしか赤く染まる。
口上1つも言えない少女をからかおうとした唇は、一度開いて、そのままゆっくりと閉じた。
一言で言い表すのであれば、すっかり毒気を抜かれてしまったのである。
「はい、指輪交換!」
少女は、母親に2つ買ってもらった指輪を差し出す。
小さいハート型のプラスチックが埋められた、価値なんてこれっぽっちもないおもちゃの指輪だ。
だが、今この瞬間、その指輪はどんな宝石よりも価値のあるものに見えた。
以前テレビで見たのだ。
夫婦になるときは、こうやって神様の前で誓いを立てて指輪を交換するのだと。
5歳児の結婚に対する認識など、その程度のものだった。
おなまーえのふっくらとした手が、縢のささくれだらけの手を取る。
「あ、おい!」
「ちょっとじっとしてて!」
左手の薬指に輪っかをはめる。
おもちゃなのでサイズも簡単に変えられるやつである。
きっちり根元まではめて、今度は少女が左手を差し出す。
「ほら、はめて」
「……」
事前に渡されていた指輪を、少年は困ったようにポケットから取り出す。
ここで彼女の指にはめてしまうのは簡単だ。
だが、本当にこれでいいのだろうか。
指輪の交換なんて、人生で1.2を争うくらいの重大イベントなのではないのか(少なくとも弱冠5歳の彼にはそう思えた)。
そう躊躇する間も、目を瞑って期待するように口角を上げている彼女を裏切るわけにもいかず。
「……」
「……まだ?」
まだまだ芽生えたばかりの恋心。
少年は、少女よりやや成熟していて、それ故に自身の感情もすでに自覚していた。
「……」
少年は、覚悟を決めた。
夫婦になる時は、誓いのキスをするものだろう。
「……怒んなよ」
少年は、少女の唇にそっと口を近づけた。