#04
夢小説設定
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「なんでお前らは無傷なんだ?」
宜野座が恨めしそうに三人を睨みつけた。
「いや、そんなに睨まれても」
「宜野座さん、爆弾から一番遠い位置にいたんですよね…?」
「日頃の行いのじゃないですか?」
三者三様、言いたい放題。
一番逃げ足の遅かったおなまーえは、縢が覆いかぶさってくれたことによりなんとか怪我なく済んだ。
その庇ってくれた縢が無傷なのは少々複雑な気持ちになるが。
(次会ったらタダじゃおかないんだから、チェ・グソン…)
密かに怒りを抱きつつ、それでも彼のことは宜野座には報告しなかった。
彼を信用するわけではない。
ただ、シビュラシステムの正体を突き止めると言った彼を捕まえる気にはなれなかっただけだ。
手足の縄の鬱血跡はしばらく消えなさそうだ。
ひとまず駆けつけてくれた救急隊に処置を施してもらい、エネルギー飲料で一日分の栄養を補給する。
「みょーじ、お前の処罰は後だ」
「はーい」
毛布に包まり、おなまーえは間の抜けた返事をする。
――プルルルッ
宜野座のデバイスに電話がかかってきた。
発信主は狡噛だ。
「……どうした?」
『みょーじは無事保護できたか?』
「ああ」
「私は大丈夫ですよー。ご心配おかけしました。」
横からおなまーえが無事アピールをする。
『それなら良かった。あとで縢に謝っとけ、監視官。あんたがいなくなって、そいつが一番ヤバかったからな。』
「コウちゃん、それ反則」
縢は頬を膨らませて抗議した。
誰よりも心配してくれていたという事実に、少しだけ胸が熱を持った。
「で、何の用だ?」
『またひとり、ガイ者が出た。例のスプーキーブーギーだ。』
次の被害者は常守朱の同期生だったらしい。
菅原昭子、ニ十歳。
自宅の下水管から遺体の断片が発見された。
だがやはり、葉山の時と同様にアバターだけがネット上をうろつきまわってる。
『死亡推定時刻は今日未明。昨日のエグゾゼの出入りのあとやられたな。』
「……戻って唐之杜と捜査の方針を立て直す。このままじゃ奴の手のひらの上で踊らされるだけだ。」
「私も報告事項がいくつか」
『アンタは休んでた方がいいんじゃないか?』
「多分、私を誘拐した犯人と葉山・菅原殺害の犯人は同一です。情報は多ければ多いほどいいでしょ?」
チェ・グソンのことだけは話せないけれど、中背の男のことは口止めされていない。
せっかく大変な思いをして手に入れた情報だ。
捜査の役に立つのならいくらでも提供する。
おなまーえは先程チェ・グソンに付け直されたデバイスをさすった。
****
分析室にはおなまーえも含め、一係の全員が集結していた。
配慮として、おなまーえはソファに座って会議に参加する。
「メランコリー・レイニーブルー。元々はお爺さんのものだったんですけど、孫に頼み込まれて名義だけ貸してたんです。なんですけど、この孫が半年前に事故死していて…」
画面が切り替わり、少年の顔写真が映る。
「時任雄一くん、14歳」
「!?」
「時任っていやぁ、随分前に世話になった国土交通省のやつか」
「はい。雄一くんはその人の弟です。」
縢はバツの悪そうな顔をした。
「……続けろ」
「はい。このレイニーブルーなんですけど、雄一くんの死後も活動を続けてるって相談を受けたのが先日です。お爺さんはソーシャルネットのアクセス方法すらわからず、アフィリエイトの入金も年金と勘違いしていたくらいなので、誰かに乗っ取られたのではないかと思われていました。」
「葉山の事件記録を見てそれを思い出し、一か八かで事情聴取に行ったというわけか」
「はい。成果としてはこのくらいかと。」
時任智也から聞いた情報は以上だ。
だがもちろん、ここで終われるはずもなく。
「おい、お前が誘拐されていた理由をまだ話してないぞ」
「あ、それもここで報告するんですか」
「単独行動の果てにあのザマだったんだ。何があったかきっちり話してもらうぞ。」
全員の視線が集まり、おなまーえは居心地の悪そうに苦笑いをした。
唐之杜が心配そうに眉をひそめる。
「酷いこととかされてなぁーい?おなまーえちゃんの負担になるなら無理して言わなくてもいいんだけど。」
「大丈夫、志恩さん」
嫌なことはされていない。
ただうまく誤魔化せるか心配だっただけだ。
おなまーえは順を追って続きを話す。
縢を本部に送り届けたあと、単独でレイニーブルーの操作をしている人に会いに行ったこと。
廃棄区画で襲われて、拘束された状態であの部屋に連れていかれたこと。
エグゾゼで行われるオフ会の準備のため、殺す手間が惜しいと放置されたこと。
チェ・グソンのことは口にはしなかった。
嘘は言っていない。
ただ、重要なファクターを告げていないだけ。
「犯人の顔は見たのか?」
「少しだけ」
「少しか…」
「写真かなにかがあれば、確実にこの人って言えるんですけど…」
特段これといった特徴もなかったため、あの男の顔を絵で描いてみろと言われても難しい。
モンタージュやメモリースクープをしたとしても、思い出されるのはきっとチェ・グソンの顔だろう。
顔さえわかれば確実に犯人だと太鼓判は押せるが、今のところ捜査は手詰まりのままである。