#04
夢小説設定
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おなまーえに要らないと言われた縢は憤慨していた。
どうせあいつは一人では何もできっこない。
昔からそうだ。
なにかと「秀星、秀星」と自分の後ろを歩く、金魚の糞だった。
エグゾゼに出入りする時間になれば尻尾を巻いて帰ってくるだろう。
今回はあいつが悪い。
職務中に婚約者に会いにいくなど、職務怠慢もいいところ。
言語道断である。
自身の発言を肯定したくて、縢秀星はそう自己暗示していた。
だから、18時になっても帰ってこないおなまーえのことを聞いたときは、誰よりも衝撃を受けた。
「みょーじと連絡が取れない。縢、何か知らないか?」
「いや…オレは何も…」
みょーじおなまーえは時間にルーズではない。
むしろ約束や時間に関しては敏感な方だ。
その彼女が、帰ってきていない。
宜野座の判断で、おなまーえなしでの作戦が組まれる。
結局その日みょーじおなまーえは現れず、連絡も取れないまま、彼女は行方不明となった。
****
「……」
あれからどのくらい経っただろうか。
正確な時間はわからないが、一晩は超えた。
(……宜野座さんに、18時には帰ってこいって言われてたのになぁ…)
業務責任放棄に当たるのだろうか。
怒られたくないな、なんでぼやいて目を閉じる。
時折ウトウトすることはあれど、おなまーえは寝付けずにいた。
手足は縛られ、椅子に固定されている。
一晩中同じ体勢なものだから、足が痺れて感覚が麻痺してしまった。
(チェ・グソンのやつ、これで迎えが来なかったらどうするつもりよ…)
昨晩からデバイスはしつこいくらい鳴っている。
どうにかして縛られている手で腕時計型のそれに触れようと試みたが、おなまーえの指先はギリギリ画面に届かなかった。
(宜野座さんに朱ちゃんに縢……唐之杜さんからも来てたな……)
喧嘩別れしつつも縢から連絡のあったことに、不謹慎ながら嬉しかったりする自分は単純だ。
昔から喧嘩ばかりしていたが、だからといって縢のことが嫌いなわけではない。
むしろ、友以上の好意を抱いている。
(じゃなかったらいつまでも指輪なんて持ってないのに…)
わざわざネックレスに通してまでいつも首につけている指輪は、幼い頃にオママゴトで縢と交換したもの。
(思えばあの頃から、私は縢のことが好きだったのかもしれない)
好き。
だけど彼は潜在犯で、私はそうじゃない。
『秀星くんが社会復帰できるまで会えなくなるのよ』
これは母の言葉。
いつ縢が社会復帰できるかなんてわからなかったから、彼に会うために、おなまーえは臨床心理士を目指した。
そのうち縢が執行官になったという噂を聞き、おなまーえは急いで志望を変え、執行官を目指した。
再会しても相変わらず口が減らない縢に、どれほどの喜びが込み上げてきたことか。
『秀ちゃん?確か3係の子とデキてたような…』
これは唐之杜の言葉。
ああ、縢秀星は私の知らないうちに大人になっていたんだと。
告白せずして、おなまーえの恋心は儚く散った。
「……そうだよね……昔と違うよね……」
このまま誰も来なかったらどうしよう。
視界が潤む。
無意識のうちに、縢が助けに来てくれることを期待していた。
昔誘拐されたときと同じように。
あのとき誘拐犯に襲いかかった彼は潜在犯になってしまったけれど、おなまーえの目には紛れもなく騎士のように見えた。
囚われの姫なんてガラじゃないけれど、でも――
「もう一度…助けて……」
――ドガァッ
「おなまーえ!!」
施錠されていたドアが勢いよく押し倒された。
日の眩しさに目を細める。
微かに見えるシルエットは3つ。
そのうちの1つが勢いよくこちらに駆け寄ってきた。
「無事か!?」
「しゅう…せ…?」
ああ、なんということだろう。
また、彼が来てくれた。
神様は見捨ててなどいなかった。
縢の焦りようから、相当心配をかけていたことがわかる。
「縢!みょーじ無事か!」
続いて宜野座と六合塚が駆け寄る。
「大丈夫そうっす!」
おなまーえの無事を確認するも、2人はは奥へと足を進めた。
全身に傷がないことを確認して、縢は縄を解いてくれる。
「……縢…」
「あとで聞くから今は黙ってろ」
事件はどうなったのか。
なんでここがわかったのか。
『要らない』と言ったことを怒ってはいないのか。
聞きたいことはたくさんあるけれど、今は安全確保が先だ。
手の拘束がとれ、2人がかりで足の縄をほどきにかかる。
あと少しで解ける。
そのときだった。
「っ!伏せろ!縢!!」
奥から切羽詰まった六合塚の声が聞こえた。
「っ!!」
おなまーえのいた部屋の奥にはチェ・グソンの言った通り、逆探知機器用のダミーがあった。
ご丁寧に爆弾付きで。
(うっそでしょ、あの男!!)
縄は解けたものの、丸一日固定されていた足は思うように動かない。
縢に腕を引っ張られ、おなまーえはそのまま地面に倒れこむ。
――ドォーーン
部屋が丸ごと吹き飛ぶほどの爆発が起きた。