#04
夢小説設定
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「……どういうつもり?」
車らしきものに載せられると、おなまーえは目隠しと拘束はそのままに、口枷だけを外せられた。
奥歯が痛むのを物ともせず、彼女はすぐさま問いかける。
「私を捉えてどうするつもり?味見って何?あの男はなんなの?そもそもあなたがレイニーブルーを操ってる人なの?」
「質問が多いなぁ」
電気自動車のエンジン音がした。
音もなくタイヤが回り始める。
目隠しをされているため、車が今どこを走っているかわからない。
(ってかここ助手席よね?目隠しした怪しい人間が乗ってるのに誰も騒がないってことは、人通りのないところか、それともホログラムで隠してるのか…)
襲撃された時より随分と頭が回るようになった。
『落ち着いて』と、六合塚がいつも言ってるじゃないか(この言葉は縢とおなまーえの喧嘩を収めるためによく使っている言葉なのだがこの際なんでもいい)。
感情的になるな。
冷静に状況分析をしろ、みょーじおなまーえ。
同僚のことを思い出すと、さらに思考がクリアになってきた。
そうだ、今は少しでも情報が欲しい。
「一つ一つ答えるのは面倒ですが、私も聞きたいことがありましてね。こちらの質問に答えるというのでしたらお答えしましょう。」
「……善処する」
「良いでしょう」
外から喧騒が聞こえてきた。
市街地を走っているのだろうか。
「ではまずあなたのことをどうするつもりかという問い。別にどうもしません。味見も結構です。女には困ってないので。このまま生かす理由も特にないので殺しても構わないのですが、生憎直接手を下すのは趣味じゃないので。」
「…そ。あなたの趣味がなんなのかは知らないし興味もないけど、ひとまず助かったわ。」
ほっと胸をなでおろす。
今すぐ殺される心配はなさそうだ。
「で、私がレイニーブルーを弄ってるか、でしたっけ」
「その前にあの男はなんなのって質問」
「ああ……どちらも同じ解答なので纏めて答えますね。あの男がレイニーブルーを弄ってる本人ですよ。ついでに葉山公彦を殺した真犯人。」
「っ!?……随分とたくさん教えてくれるのね」
「別に口止めはされてませんから」
この男の意図が掴めない。
おなまーえをはめたかと思えば、手助けするような真似をする。
今だって口封じは容易いだろうに、わざわざ要らぬ情報まで与えてくる。
先ほどの中背の男と共犯なのだろうか?
それにしては随分とよそよそしかった。
まるでビジネスをしているかのような口ぶりだった。
「……じゃあこれで最後の質問」
「どうぞ」
「あなた、何者なの?」
おなまーえは核心に迫った。
「……その質問はナンセンスですね」
「センスなんて生まれた時からキランキランに煌めいてるわよ」
「なるほど、それがあなたの本性ですか」
「話を逸らさないで。あなた、一体なんなの?」
二度目の問いかけに、とうとう男は折れた。
「私の名前はチェ・グソン。しがないエンジニアですよ。」
「チェ・グソン…」
「あの男とは仕事上協力関係にありました。けど、そろそろ潮時ですねぇ。公安に目をつけられてしまいましたし、彼からは手を引きますよ。」
「あなた、逃げられると思ってんの?」
車が停止した。
先ほどのところからそんなに走っていないはず。
とするとまだ廃棄区画の中か。
「ええ、思ってますよ。アンタが私の名前を職場で言いふらさなければいいだけのこと。これがあなたを殺さない条件。」
「……刑事に犯罪者を見逃せって?」
「別に珍しい事じゃないと思いますけど。刑事と犯罪者の協力関係なんて。」
男は一度車を降りると、助手席側に回っておなまーえのことを引っ張り下ろした。
ここで騒いでもきっと誰も来ないのだろう。
「さて、次はこちらの番です」
「ちょっと私の質問は…」
「何者かは名乗ったじゃないですか」
「……」
拘束された上に目隠しをされている今、主導権はあちらにある。
おなまーえは黙って彼の言葉を聞く。
「あなたの公安への志望動機を読ませて頂きました」
「…どっからそんな情報を?」
「内緒」
エレベーターらしきものに乗った。
男は続ける。
「随分と稀有な経験をしてらっしゃる。まさか人生で二度も誘拐されるとは。」
「あんたが今すぐ解放してくれれば一度で済むんだけどね」
「しませんよ。で、その時に幼馴染の少年がみょーじおなまーえさんを発見した。その時に彼、怒りのあまり犯罪係数をぶっちぎっちゃったんですね。その少年は残念なことに潜在犯認定されて、このシビュラシステムの支配する社会から隔離されてしまったと。」
「……ほんと、どこからそんな情報拾ってくるんだか」
「半分推測も混じってますけど、どうやら当たりのようですね」