Heaven’s Feel
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「っ…ランサー……わたしのことっ、忘れた、の…?」
「あ?」
最後の賭けだ。
彼が私のことを思い出してくれれば、もしかしたらこの状況を打開できるかもしれない。
彼の赤い目は隠されていて、表情からは何も読み取れない。
おなまーえは祈るような気持ちで彼を見つめた。
ランサーは小さく口を開くと、やがて口角を上げ、ニィッと笑った。
「……しらねぇな。どっかで会ったか?」
「っ――」
パキッと心が折れた音がした。
――ああ、届かない
おなまーえの願いを叶えると、おなまーえの槍になってくれると、おなまーえことを好きだと言ってくれた彼には、もう彼女の言葉は届かない。
がくりとうなだれる。
自分のせいだ。
私が、判断を見誤ったからこんなことになったのだ。
言われるがままにあの少年を殺した罰が降ったのだ。
自業自得。
私は、選択肢を間違えた。
触手はおなまーえの体をほとんど包み込んだ。皮膚神経から魔力を吸い取られる。
頭が熱っぽい。
彼女の体はその理性とともに、文字通り少しずつ溶かされていく。
もはや彼女に正常な判断はできない。
「……あなたは…私をどうするつもりなの」
自身の足元を見ながら、彼女は声をしぼりだした。
「ん?食うに決まってんだろ。狩った獲物は責任持って最後まで食べるさ。」
「………」
食われる。
そうか、ランサーに食べられるのか。
彼の血となり肉となる。
彼にとっては、私はただのご馳走。
もうマスターですらない。
「今の俺には霊核がない。こいつらからの供給はあるが、それじゃあ自由がきかねぇ。魔術師の心臓であれば、その場凌ぎくらいにはなる。」
「……そう」
恐怖は湧かなかった。
もうそんな感覚はとっくに麻痺してしまっているのかもしれない。
それ以上に不思議なことに、おなまーえは密かに期待感を抱いた。
「……心臓だけ?食いでがないから体は食べてくれないの?」
そう言って目を細めたおなまーえに、ランサーは眉をひそめた。
「……怖がらないのか?お前。」
「あなたに食べられるなら、それはそれで構わない」
どんな姿になっても、やはりクー・フーリンのことが好きだ。
「それにほら、これで本当に一蓮托生だよ、ランサー」
彼女の瞳からは光が消えていた。
「………」
ランサーはゆっくりと近づいた。
彼の顔に高さを合わせるように、触手が彼女の体を持ち上げる。
長い爪で胸元の服を引き裂かれる。
むき出しになった胸部にランサーは舌を這わせた。
「……お前、見た目はタイプだったぜ」
――ガリッ
しんしんと悲しみだけが降り積もる。
願望も悔恨もただ埋め尽くされる。
絆を結んだ遠いあの日を思い出して、おなまーえの目尻からはホロリと涙がこぼれ落ちた。
痛みも苦しみもない。
この身を捧げたところで、その赤い瞳が見えないことが心残りだった。
薄れゆく意識。
おなまーえは最後の最期まで彼の頭を撫で続けた。
――狗さんこちら、手のなる方へ。
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