2月12日
夢小説設定
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「俺を殺すよう指示したのもあの女の子なのか?」
「まぁな。だがあれはマスターの本意ではなかった。ずっとお前に詫びをしてぇって言ってたんだぞ。」
「…………」
物静かで、儚げな少女。
一度目に出会った時は自分を庇おうとしてくれた。
二度目に出会った時は共に食事をした。
ランサーのマスターが彼女だと知ったときから常々疑問に思っていたことだが、本心ではなかったと知りどこかホッとするところがあった。
「……マスターの意向はわかったわ。私も、彼女からは敵意は一切感じられなかったし。それであなたはどうなの、ランサー。」
「俺か?そうさな…マスターの指示抜きにしてもお前たちのことは嫌いじゃあない。なんたってサッパリとしたいい女と、物好きなお人好し。共闘するにはこれ以上ない人材だ。」
衛宮士郎と遠坂凛は困惑した顔を合わせた。
ランサーに争う気がないことはこれまでの言動から十分にわかった。
こたらが戦力不足に陥って困っていたのも事実だ。
一度は争った者を信用しろというのも難しい話だが、このままでは打てる手がない。
「……」
遠坂凛は腕を下ろした。
あともうひと押しだろう。ランサーは凛の方に涼しい流し目をおくる。
「俺も初見からあんたのことは気に入っていたんだぜ?美人で強情で、肝が据わっているときてる。俺のマスターも、ちったぁ見習ってもらいたいもんだね。」
「む…」
士郎は眉をひそめた。
「……いいわ。私は賛成。けど衛宮くんが信用できないって言うんなら、この話はなかったことにするけど。」
「だそうだ。どうする小僧、お前器を試されてるぞ。」
状況的に見て、ランサーの申し出を受けない理由はない。
だが衛宮士郎には思うところが一つあった。
「……わかった。けど条件付きだ。手を貸してもらえるなら、俺たちもお前を信用する。その代わり――」
「…その代わり、なんだ?俺のマスターの居場所を教えろってか?」
「違う」
士郎はゆっくりと歩いて凛とランサーの間に割って入った。
「仲間だからって、気安く遠坂には近寄るな」
「あ?」
「な…!」
思わぬ条件に、ランサーも遠坂凛も固まる。
まるで独占欲の強い子供のようだ。
男として、決定的にどこか欠けていた彼だが、ここに来て守りたい女ができたとあればこうも逞しくなるものか。
「…フッ、ハハッ!なるほどなるほど。そりゃあそうだ。俺のマスターなんぞより、そっちの方が何倍も重要だよなぁ、坊主。」
「む。なんだよ、悪いか。言っとくけど遠坂はやらないからな。」
「まさか!むしろ見直したところだ。」
ランサーは腹を抱えて笑う。
この2人の会話を是非ともおなまーえに見せてやりたかった。
「いいねぇ、お嬢ちゃん。坊主あんたにゾッコンじゃないか!」
「な、何言ってんのよあんた!わ、私と士郎はその――そう!私たちはただの協力関係なんだから!」
「えぇ?そうかぁ?」
「なによ、その見透かしたような顔は!」
「…………」
「ちょ、士郎も何か言いなさいよ!これじゃあ、本当に私たちが好き合ってるって――」
凛はへなへなとしゃがみこんだ。
彼女の赤い顔は、夕陽のせいにもできないくらい染め上がっている。
「本当も何もとっくに出来上がってんだよ、お前たち。ったく、これじゃあこの先大変だぞ坊主。」
「まぁ、遠坂が大変なのはもうわかってるから」
バカにされたような物言いに凛の堪忍袋の尾が切れた。
「そ、そう言うランサーだって、あの子のこと随分と気にかけてたじゃない!えっと…」
「おなまーえ、だろ」
「そう!」
いくらマスター思いとはいえ、あんなに気にかけるということはそういう疚しい気持ちが少なからずあるだろうと、凛は指摘した。
「ああ……あの嬢ちゃんとは――そうさな」
ランサーは勿体ぶったように考え込むと、ニヒルな笑みを浮かべた。
「――恋仲以上の大人の関係だ」
「「っ!」」
「これ以上聞くってのも野暮ってもんだぜ、嬢ちゃん」
これで確信した。
ランサーの魔力が一段と大きくなっていることは、遠坂凛も薄々と感じていた。
その魔力の残滓がおなまーえのものに近いことも。
「言っとくが、俺が無理やり襲ったわけじゃない。そこんところ、勘違いすんなよ。互いに同意の上だ。お前らもヤるってんなら、避妊はちゃんとしろよ?」
「「なっ!!」」
そこまであからさまな言い方をされれば、魔術の素養が薄い衛宮士郎も察した。
これはとんでもない輩を仲間にしてしまったと、2人は顔を赤らめた。
《2月12日 終》